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5, お仕事

壁に囲まれた街へと向かい歩いている。


充実した生活の為、ラブドールを購入する為、とにかく稼がなくてはならない。ラブドール100体、必ずや手に入れてやる!決意を胸に力強く歩く。


「ラブドールは高いから諦めた方がいいですよ~♡」


ふん!お前()たちの言う事なんか無視だ。無視。異世界でハーレムが出来ないなら、ラブドールに囲まれて引きこもる。もうこれしかないっ!!


「なあっ!」


「はい♡」


「あれもか!あれもお前()たちのしわざか!?」


目の前で、馬車がひっくり返っていて、それを囲んでいる武装した集団がいる。……なんて古典的なテンプレだ?馬車側の護衛は半分は倒れている。


俺は足を止め近づかないで様子を見る。なぜか、どうしてか、囲みを突破してこっちに走って来る。


「なんで来るんだよっ!」


結局、俺まで囲まれてしまい容赦なく火の塊、魔法が飛んでくる。次元刀を抜き振り抜くと、火の塊は横に切れてから霧散した。敵も味方も皆、一瞬動きが止まる。


もう自棄だ。


片っ端から切っていく。突いていく。ーーー数分で終わった。俺最強の能力なんだから、当たり前なんだけど、奴ら()の思惑通りに動かされるのに腹がたつ!それと、こいつらを見てるとイライラする。助けられてさも当然のような顔をしていた。


あー、イラつくー。


「助かった、感謝する。」


何が感謝だよ、とぶつくさ言いながら俺は歩き出す。あとは勝手にしろ、ってなもんだ。


「待たれよ。礼がしたい。……って、待て、待てと言うに!」


偉そうな奴がなんか言ってるし、他の奴が俺の前を塞ぐように動く。が、俺の顔を見て一歩引いていた。よっぽど不機嫌な顔をしているのだろう。


俺は立ち止まり、振り向いて偉そうな奴を睨む。


「礼だと?ふざけてんのか。礼よりまず謝罪だろうが!」


そんな事も分からんぐらいに上から語る奴に碌なのはいない。したがって関わる必要もない。


「それは失礼をし…」


「今更出てくんなっ!」


言葉を遮る。今喋った奴は火の塊が飛んできた時に守られていた、護衛対象だろう。だが今更遅い。集団の長なら真っ先に礼なりをするべきだ。守られて当然と思っているから人任せにする。犠牲になった者の事も気にしないのだろう。


あー、ヤダヤダ。身分なんて、命の前では等価値なのに己の足元を見ない。やっぱり関わるじゃなかった。


俺はさらに睨みつけて踵を返して歩き出す。もう止める者はいなかった。






イライラしながら移動したせいか、いつの間にか目の前に門がある。そこには衛兵が立っている。そして、俺は身分証を持っていない。さらに、お金も持っていない。俺のイライラは吹き飛び、代わりに衛兵がイライラしていた。


なんと間が悪い事に、さっきの奴らがやって来た。どうやら馬車は放棄して徒歩できたようだ。


俺は連中からサッと顔をそらす。


偉そうにしてた奴が衛兵に話しかけ、そのまま自分たちの主人に話している。そいつの顔をチラッと見たら……ニマー、と笑って俺を見ていた。いや、こっちこないで。


「オホン、先程は失礼した御仁よ。非礼を詫びさせてくれ、そして命を助けてもらい一同で感謝する。この気持ちを快く受け取って欲しい。……して、何やらお困りのようじゃが、礼を兼ねて手助けして進ぜようと思うのじゃが、受け取ってもらえるかの?」


ニタニタしながら主人である女が言ってくる。俺は目を逸らしたまま


「ありがとう、お願い、します。」


「そうかそうか。それは良い事じゃ。」


カカカ、と口元を隠しながら笑って全員に目配せをした。衛兵は道を開け集団はのじゃを囲んで進み始める。仕方なく俺はついて進んで門を潜り街へと入った。


後日、改めて礼をしたいと言う事になりのじゃ集団と別れた。


俺はその足で冒険者ギルドに向かう。まあ、のじゃ達と別れたのはギルドの建物の前だったから、迷子になる事はなかった。


ギルドの中は酒場兼役場と言う形はどこもでも一緒で代わり映えしない。ーーーいるいる、柄の悪い連中があっちにもこっちにも。俺とポチは受付の前に行く。


ちなみに、ポチは姿を見せている。本当は見えない存在なんだがマナが濃いのと魔核が体内にあるせいで姿を隠すのが大変なんだとか。だったらと言う事で宙に浮いてるのは目立つので歩いている振りをしてもらっている。


「すんません、冒険者の登録をしたいんですが。」


「いらっしゃいませ。ギルドの登録ですね、承ります。」


渡された書類に記入して返し、黒い玉に手を乗せる。以前なら反応しなかった黒い玉に文字が浮かび、無事冒険者登録が完了した。ギルドのカードを手にとっても劣化する事もなかった。


ギルドのルールなどの説明で大きく変わったのは、独立した組織になった事だった。……ゲームだと当たり前に聞こえるが、以前だと領主ごとに差配されていて管理する者の技量に左右されていた。逆に組織が大きくなった弊害もあるかも知れない。深入りはよそう、と思う。


冊子を貰いギルドを出た。冊子の中身はこの近辺での討伐対象と値段に難易度、討伐証明部位が記載されいて、悩む必要もなかった。


仕事の依頼にはランク分けされていたが、討伐はランク分けされていない。緊急討伐や氾濫討伐は指名ないしは強制されるので分ける必要がないのだろう。それでも実力が伴わないと死ぬ、がギルドに責任はない。そのための冊子、と言う訳だ。


たぶん、ギルド側は諦めたんだろう、バカの相手を。いくら言っても聞き分けのない奴は痛い目に合うしかないが、悲しいかな死ぬから次がない。ーーーヤダヤダ、バカとは関わりたくないな、迷惑だし。


「よーしっ!サクッと狩るか。どれどれ、おっ!イノシシだな、近いし高額だ。」


冊子を仕舞い意気揚々と街を出て森へと走って行く。途中ゴブリンを何匹か見たが、時間の無駄なので蹴り飛ばしてやり過ごした。


「イノシシ狩って来たけど。」


ギルドの受付の女に声をかける。


「あ、はい。では作業場に持って行ってください。」


と言って指差された方に行く。ーーーちなみに、魔核のお陰でみんな魔法が使える。大なり小なりの差はあるが、以前のようにでっかい袋を持って歩く姿は少ない。収納容量も魔核の大きさに左右されるが。


ここで、気づいただろうか、そう、みんな魔法が使えると言う事は、魔物も例外なく魔法を使う、と言う事に。ゴブリン程度だと怪我くらいで済むかも知れないが、凶暴凶悪な魔物だと存亡の危機になる。


10000年経ってもやってる事は一緒だ。ーーー待てよ?魔物のせいでこの世界は進歩していかない、とか。どう考えても真理だろう、これ。やっぱり神はヌケサクじゃねーか。


考えがまとまった事でポチを見つめる。


「な、何ですか?…ん?また変な事を考えてますね。」


お前()たちがボンクラだってしみじみ痛感しただけだよ。もう気にすんな。」


「……」


ポチはじーっと俺を見てるだけで何も言ってこなかった。


イノシシは一匹金貨1枚になった。安いか高いかで言えば、安い気がする。だって、イノシシと言っても魔物、体長5mは超える化け物だ。狩っても運搬に難儀する代物だ、こいつを収納できる奴が何人居るんだか。


それと金貨1枚は10万円に届かないぐらいかな。リスクと工賃で割りが合うのか、疑問だ。が、俺は、纏めて5匹のイノシシを出した。職員、作業員、その他雑多な連中の注目を集めるが、知らん!俺には金がいるんだ。


ウハウハ、ハーレム、ラブドール御殿の夢を叶えてみせる!!イカ臭くて何が悪い!こんなところ(異世界)に読んだ奴が悪いんだ!


金貨5枚を握り締めてギルドを後にした。


予算の補填をする為金貨4枚を差し出し出納帳を渡された。37,243円が金貨4枚の値段だ。どうやら金の含有率で計算してるみたいだが、ここで気づいた。


「金貨でなくて金そのものでもいいのか?」


「えー、仕事しなさいよ。まあ金で計算しますからいいですけどー。」


出納帳を見ていたら残金が減った。29,987円になった。


「なんだ!?予算が減ったぞ?」


ポチを睨むと


「私じゃないです!……あっ!エリちゃんだ。」


元エルフや元魔王の二人が利用した、とポチが言う。Box内が共用になっていて、お菓子やジュースなんかを取り出しているみたいだ。


そうか~、彼女たちは元気かな。顔を思い出すほどの接点はなかったが、なんか嬉しい気持ちになった。ーーーって待て待て!どんだけ予算を使ってんだ!だいたい生き物の定義から外れた存在だろう。菓子ばっかり、ちょっとは遠慮しろよ。


本気で金山を見つけて拠点にするしかない、なんて事を考えながら今日の宿を決めて一日を終了した。






それからは、イノシシや魔物や魔獣なんてものも狩った。とにかく狩った、ひたすら狩って狩って狩りまくった。ギルドのランクが一つ上がりDランクになったが、なんの恩恵もない。


ギルドが言うには、「実力と信用です。」とか言ってるが、俺から言わせるとギルドに対して信用はしていない。何がって?そこは定番でしょ、指名やら強制ですよ。これね、拒否権がない。黙って死ねって言われても従わないと登録抹消されて、二度とギルドを利用出来ない。これが以前なら他領や他国に行けば良かったんだが、今のギルドは大きくなり過ぎて冒険者に自由が無さ過ぎる。


それとね、実力とか言いながら討伐ではランクは上がらない。討伐対象にランク分けしてないのもあるけど、ギルドが選定した依頼にしかランクがなく、したがってギルドと蜜月な関係を構築しないとランクは上がらない。その逆は、高ランクが実力者とは限らない。と言うテンプレですよ。


まあCランクまでは普通に上がるし、Bランクから面倒な指名依頼が来るので、その辺は気にしてない。討伐しかしないし。


お陰で予算の方は50万を超えた。彼女たち二人には手紙を書いた。「菓子ばっか食うな!」と。Box内が共用だから無事手紙が届いたのだろう、予算の減りが若干緩くなった、気がする。


今は情報集めに奔走している。金山の話しとか、金山の話しとか……。10000年も経って碌な地図が無い。それに知識がないのか金山を知らない。ギルドの職員でさえ金山の意味を理解していなかった。ーーーなんかオカシイ。インフラ関係の知識に蓋がしてある、ような気がする。


これはどっちだ?この世界の為政者か、それともクソ()か。ーーーどうする、諦めるか手を出すか。でもでも、俺には金がいる。迷う~、これ絶対、誰かの陰謀だぁー。


俺がマジで頭を悩ませているのに、こいつ(ポチ)は菓子をポリポリと食っている。


「菓子ばっか食うなよ。太るぞ!」


「いいでしょ。もっと優しくしてよっ!」


最近のポチはいじけていて、扱いに困る。原因はこの間の事で、ポチと言う名前だからと木の棒を投げて


「ほ~れポチ~、取ってこぉ~い。」


と投げた。


「ワンワン!」とか言いながら本当に走って行った。その姿を見て腹を抱えて笑ったら大声で泣き出してしまい始末に負えなかった。


後で理由を聞かせてもらい、また笑いそうになるのを必死で堪えた。


それは以前の転移者のエージがポチと名付けて、同じように木の棒を投げたそうだ。いやー、気が合うなーとか思ったが、それからポチの機嫌が悪い事。もう勘弁してよ……


そして今日ギルドへ行くと、のじゃの側近だろう偉そうな奴が来ていて、領主館に来いと言って来た。

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