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2, ゴブリン

4人のあとについて歩き街の外に出る。衛門でカードを見せた時に一悶着あったが、このチームのリーダーが説明して納得してもらった。


しばらくは街道、と言っても馬車の轍でデコボコになっている道を進み左手に見える森へとそれて行く。森の入り口付近の木にはキズがついており、目印になっているようだ。


4人は会話を弾ませながら森の中を進む。その後ろを袋を担いでついていく。突然、空気が変わって前を行く4人の雰囲気が変わる。


「いるぞ!」


リーダーが小声で注意を促して、他も武器を構える。


木々の隙間に生き物が見えた。体長1mちょっとのゴブリンが2匹、右前方10m先にたむろしている。まだこちらには気づいていないようだ。


リーダーが右側へ他の男2人が左側のゴブリン目掛けて走る。女は俺の前で武器を構えて様子を見ていた。


勝負はあっけなくついた。リーダーは一刀で首を落とし、他2人も一太刀づつでゴブリンをたおす。


リーダー達はゴブリンの右耳を切り取り、女は俺が抱えている袋の中から別の袋を取り出し男達の元へ駆けていく。俺も女のあとに続き駆けた。


「もう3匹だね。」


女の声にリーダーも


「もう少し奥に入るか。」


ゴブリンの耳の入った袋を渡され、森の奥へと進んで行く4人のあとを俺は追いかけた。小一時間ほどでゴブリンを3匹倒して街へと戻った。


ギルドの作業場でゴブリンの耳を渡し、受け付けで銀貨5枚を渡され、リーダーから銀貨1枚を貰った。


「今日は終わりだ。」


リーダーが言いながら、ギルドが管理する安宿、狭い部屋にベットがあるところに案内される。値段は銅貨3枚で寝るだけだが、牢屋以外で寝るのは何年ぶりだろうか。食事もせずにそのまま眠りについた。


それから10日ほどゴブリンやイノシシなんかを狩って小金を稼ぎ、取り敢えず小剣と袋など必要な物を揃えた頃


「まあ元気でやれよ。」


と言われてチームと別れた。


最初は柄が悪そうで胡散臭いと思ったが、思い違いのようで、正直、申し訳ない気持ちになった。見た目で判断してはダメだ、と反省する。


ちなみに、買った小剣は俺が持った時に鈍らになった。仕方なく武器が欲しいと念じると、丸一日掛けて承認されてBoxの中にある。名は治元刀。とても見せられる代物ではないのでBoxに入れたままだ。見せかけの小剣を腰にさし、必要な時にBoxから出して使う事にする。


今は1人で行動しているので街中の雑用をしている。ゴミの回収や荷物運び、壁の補修にと。一度ゴブリンを倒しに行った時に治元刀を使ったが、剣術の才能に関係なくスパスパ切れた。あまりの切れ味でケガをしそうだったので、使っていない。


まあ一日中働くので疲れるが、宿代と食べるのに不自由はない。


とにかく、目立たない事に注意する。ただBoxから缶コーヒーとタバコだけの贅沢をしている。誰にも見つからないように、細心の注意を払って。ーーーちなみに、タバコの承認は3日かかった。


それから1ヶ月くらいは過ぎたか。街の住人ともそれなりに接して雑用をしながら生活している。


ただ、お金がない。小剣でもそうだが身につける物の劣化が激しくて、服や靴の傷みでお金がかかる。しかも食べ物にも味がしない。不思議なことに他人の物には影響しない。まあそうだろう、触る物全てが劣化してたら大変困る。多分Boxから出せば使用出来ると思うが、物の質が違い過ぎてとても使えない。


だから食べ物だけはBox内の弁当などを食べている。食費の分、服や靴に回せるようになったが、それでもお金は貯まらない。


いつものようにギルドに顔を出し仕事を探していたそんな時、ギルドでへんな奴らに絡まれた。


「おい、マナ無し。」


振り向くと子供が3人、男1人と女2人のグループが俺に声をかけてくる。


「チームに入れてやるよ。ありがたく思え。」


「しっかり働いてね。」


俺と同じくらいの背丈しかない男にさらに小さい女。ちなみにこの世界の奴らはデカイ。俺は165㎝しかないが、女でも180㎝を超えるのがザラにいる。ギルドの受け付けの女でも俺より背が高い。


そんなガキが偉そうに言ってくるが、反抗しても得にはならない。俺は半分奴隷だから。今の様子をギルドの職員は見ているが何も言わない。だから反発するだけ無駄なことだ。


それと、マナ無しはこの街でもだいぶ知られている。マナが無くて何も出来ないクズ、それが俺の事のようだ。


荷物を持たされ仕方なく付いて行く。


子供でも冒険者だ。身分証を衛兵に見せて街から離れる。そしてゴブリンがいる森へと入って行く。森を歩くのに遠足気分で、とにかく騒がしい。それにいつもより深く森へ入って行くが、大丈夫かこいつら?


森の雰囲気も何か違う気がする。とにかく濃い……囲まれたような、と思った時前方にゴブリンが3匹出てきた。


「よ~し、任せろ!」


男がゴブリンに向かって走って行く。


「頑張って~。」


黄色い声援を送る女たちだが、3対1で戦うつもりなのか?なんとか1匹倒したがまだ2匹いる。それに……どうやら囲まれたようだ。左右からワラワラとゴブリンが出てきた。


「っ!?」


その中に2mを超えるゴブリンが混じっていた。ゴブリンの上位種か?それにしても、いきなりデカくないか?


「なっ!?」


「キャーーー!」


悲鳴を上げてる前に戦えよ。未だに構えもとっていない女たちだ。俺は荷物を放り投げ小剣を握って構える。この小剣は鈍らだから切れない。なので突くか叩くしか出来ない。近づいてきたゴブリンの頭を思い切り叩き潰す。次のゴブリンの顔を水平に振り抜いて潰す。2匹のゴブリンを倒した時には男と女1人は走って逃げていた。


みんな居なくなれば治元刀を出すが、女1人が俺の足にしがみついてきた。


「た、たすけてっ!」


「なにやってんだ!」


足にしがみついていた女を無理やり振りほどく。3匹目のゴブリンの頭を叩きつけたら小剣が根本から折れてしまった。


とにかく逃げるしかない。


女を担いで走った。どこまでも走った。森を抜け街道が目の前のところでゴブリンに追いつかれてしまい、気づいたら頭を強打されて地面を転がる。意識が朦朧として状況が掴めない。


不味い、不味い、不味い!


なんとか立ち上がろうとするが、足に力が入らず、構えをとることも出来ない。ーーーそんな時


「ハッ!」


気合いと共に誰かが俺の横を駆け抜けてゴブリンに斬撃を喰らわす。別のところでもゴブリンを切り倒していた。


「大丈夫か!」


意識がはっきりしてきて周りを見ると3人の冒険者がゴブリンを倒していた。そのうちゴブリンは森へと逃げて行き、どうやら助かったようだ。ーーー良く見たら、俺を拾った3人組だった。


「ありがとう、助かった。」


その場にへたり込み安堵する。


「また奥へ行ったな~。随分と無茶をする。」


女冒険者が血糊を拭いながら近づいてくる。


「……」


俺1人で治元刀を使えばデカイ奴以外、なんとかなったと思う。それでも、今回はいい迷惑だった。


片割れの女は放心して虚ろな目だ。何を言っても反応がない。仕方なく事の顛末を俺が説明した。


「上位種が出るところまで行ったのか?全く無茶をするな。」


簡単にゴブリンの上位種とはいかない。1つランクが上がるだけで化け物になる。と説明された。


なんとか女を引っ張り起こし、街へと帰った。


街が見え門まで行くと、俺は衛兵に拘束されて、また牢屋へと入った。


俺の尋問には衛兵とギルドの職員も立ち会って始まった。容疑は、俺が危険な森の奥へと3人を誘導した、となっている。


「クックックッ」


「何が可笑しいっ!!」


棍棒で頭を殴られる。ーーーまったく容赦がない。それにしても、笑うしかもう何も出来ないな。


全てを諦めて、何も答えない。言葉も発しない。成り行きに任せて3日、俺は牢から解放された。


その足でギルドに行き、俺には賠償金を払うように命令される。1人金貨1枚で合計3枚払え、と。


「クックックッ」


もう良い、もう良いです。


なんなんだ?この世界は……俺にはマナが無い。俺はこの世界では異物。この世界は俺を否定する。


「俺を最強にしてくれ。出来ないなら殺してくれ!」


思わず叫んだ。


久しぶりに声を張り上げた。この世界にきて感情を露わにしたのは初めてかもしれない。


『承認されました。剣術スキルを習得しました。体術スキルを習得しました。耐性スキルを習得しました。強化スキルを習得しました。装備を贈与されました。』


「アハ?アハハハハッ……」


突然、俺が笑い始めた為、一瞬周りの動きが止まったが、あの女職員が指示を出したのか衛兵が駆けつけてくる。そうして俺を抑えつけようとするのを体術スキルで腕を取り捻って砕き地面に叩きつけ、もう1人は体を躱して後頭部を掴み、カウンターへと何度も叩きつけ顔面を潰す。


ゲームだな。なんの意識もせず、勝手に身体が動く。面白い程に、ゲームや漫画のように、最強の俺、みたいな。


「ハァーー」


俺の一連の行動で周りは完全に動きを止めた。


俺はアイテムBoxから着替えを取り出し、その場で着替える。上下迷彩の戦闘服にブーツ。膝と肘にはプロテクターを装着する。腰に剣帯をつけ治元刀を装備する。


周りを見渡せば、未だに動きを止めた連中が目に入った。お構い無しにタバコをくわえ火をつけて一服する。


俺の準備が整った頃にギルドの外に集まり始めた衛兵たち。


俺は治元刀を抜き、ギルドを出て行く。


「止まれ。大人しく…」


何か言ってるが構わず刀を振り下ろす。そいつは左右に切り離される。次は首が飛ぶ。次は袈裟懸けにする。次は、次は、次は。途中から命乞いするものがいたが、何も感じない。


何故なら……


コイツら俺と同じ人間では無いからだ。ゲームで言う獣人だろう。いろんな種類が居る。猫や犬や他にも。今まで俺と同じ人間は見た事が無い。俺の家族も頭にケモミミがあったし尻尾もあった。現代の記憶が蘇った時に俺は自分の姿を確認したが、普通の人間だった。


子供のころはそれが普通だった。疑問にすら思わなかっただろう。


いくら言葉を喋っても、意思の疎通がなければインコと話してるマヌケかボッチだろうな。博愛主義とは言わないが、やっぱりイヌ畜生とは価値観が違うのだろう。


「お?」


あのガキがいる。尻餅をついて震えているガキに近づき、目ん玉から後頭部へと刀を突き刺した。刀を抜き顔面を蹴り飛ばす。ーーーなんか、ちょっとスッキリした。


2本目のタバコをくわえて火をつけ、他の2匹はどこだ?と周りを見渡すが辺りには死体しかなく、他は逃げ散ったようだ。


このまま領主館に行き殺してやろうかと思ったが、まあ良い。面倒臭くなってきた。


「さて行くか。」


俺は街を出る為歩き出す。


のんびりと街道を歩く。追っ手はこない。なんだつまらん。暇つぶしにサクサク殺してやるのに。


とりあえず、目指すは山脈越え。住民の話しだと山脈を越えた向こうにも国があるらしい。なぜか恐れている節もある。


まあ良いさ。


アイテムBoxの中にはテントや必要な物は揃っている。知識さえあればこの上なく便利だと思う。テントについては最初、毎日片付けていた。ある日面倒になってテントを張ったまま収納したら、次はそのまま使えた。ーーーとにかく、知識がないとダメだね。


それと、俺にはマナが無い。装備品にもマナは無いからか魔物や動物に襲われない、らしい。直接視認しない限りは寄って来ないから間違いないだろう。夜もテントの中に居ると素通りして行った。


15日目に街についた。街の向こう、山脈側に壁がある。あれが国境になるのかな。


街に入るのに身分証の確認はされなかった。面倒がなくてまずまずだ。街の中を進む、別に必要な物は無いしお金もない。


街を抜け壁まで来た。門を探したら……あった。人が通れるだけの小さい門があり衛兵が2人立っていた。


「通って……」


と声を掛けたが近づいただけで門を開けてくれる。拍子抜けしたが、まあ良い、黙って門を抜けた。


「……」


鬱蒼としたジャングルだ。森なんて生易しいものでは無い。道はないし人が入った痕跡もない。後ろを振り返ると、既に門は閉められている。


溜息をつき、薮やら蔦を掻い潜り、時には邪魔な物は治元刀でバッサバッサと切り倒して進む。山脈の麓でジャングルを抜けた。夜になる前に抜けて良かったと思う。今日はここで一泊だな。

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