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17, 共和国

どうも最近、すっきりしない事件が続いている。


洗脳少女の刑が確定した。やっぱり目は封印と言うより潰す事になった。……俺もお人好しだと思うよ?のじゃに頼んで少女を引き取る事になる。連れて歩く訳にもいかないし、どうせ終わった人生ならと思い世捨人になってもらう。目を潰され野垂れ死ぬより良いだろう?


ポチに頼んで彼女たち、元エルフや元魔王の居る所に預ける事にした。今の少女には理解出来ないだろう。将来、俺を怨む事になるかも知れない。隔絶された世界で二度と出る事は出来ない、そんな所で死ぬまで生きていく。……それでも、俺の気分が落ち着く方を選ぶ事にした。


少女のあどけない姿を見ていると、理不尽さに腹が立って仕方なかった。のじゃの計らいで少女は目を潰され追放された事になる。


少女からは意外に話しが聞けた。


お姉様は共和国に居るらしい。で、のじゃは渋い顔をしていて現在、共和国との連絡が取れていない、共和国の内情が不明など聞きたくない事をペラペラと喋っている。そんなに俺に喋って……またなんかさせる気だよね?ね?


案の定、共和国に潜入する依頼を受けた。まあ気にはなっていた。お姉様とか言う存在に。


「仕方ない。引き受けます。」


「お?どうしたのじゃ!其方が素直に受けるとは……」


「何ですか?失礼なっ!」


「いや、ま、渋ると思っておったからのぉ。」


だって、今まで無理難題しか言って来なかったですよね。初めてじゃないかな、俺の意向と一致した依頼は。


「見るだけでいいですよね。」


「構わん。冒険者として行動すればよい。」


俺はギルドにも共和国に行く事を告げて出発した。


人形だったタマは残って仕事をする事になった。と言うか菓子を食うなら働け!ポチもタマと一緒にいるみたい。まあ、今回は見に行ってくるだけだからな。


ちょっとだけ共和国についておさらいをしておく。共和国は良く言えば中立を保つ、悪く言えばどっち付かずの国だ。共和国としての価値は沢山魔導師を輩出している、魔導師の国家だった。今までは……現在は誰でも魔法が使えるし、杖に使う触媒も必要としていない。


触媒はエルフや魔族の心臓を加工していた話しは有名だった。その為、エルフも魔族も絶滅したんだけど。共和国は触媒の加工技術に特化する、そんな秘密の多い国でもある。


俺は共和国との国境まで来たんだけど、見ただけで気持ち悪い。何?あれ……みんなの意識が統一されたような、まるでアリの軍隊だよ。うわー、行く気失くすー。


入国審査よろしく根掘り葉掘り聞かれてうんざりした。冒険者なんだから目的は仕事でしょ、普通は。共和国にはギルドがないのか?まったく……


やっと共和国に入れる事になったら変な物を渡された。


「何?これ。」


安っすい腕輪を受け取った。


「身分証の代わりですね。他国のヒトには付けてもらってますよ。」


「ふーん。」


他の者も付けていくので俺も腕につけた。あー?なんだ、これ。俺は腕輪を見つめる。そして腕輪をつけた連中を見た。みんな呆けた表情をしている。


かなり強力なものが施されているが、何をされているのか分からない。こう言うのに詳しくないし俺には効かない。なんかイライラするだけだ。


みんな当たり前のように行動するんで俺も普通に振る舞った。


さて、ギルドには顔を出しておくか。国を跨いでいる事だし。


ギルドでも街中でも思ったが、普通なんだよね。みんな普通に生活している。普通なんだよ。おかしいだろ?普通……普通、普通って言うけど、どこを見ても普通なんだよ!あー、語彙がないのが恨めしいぃぃ。


なんだろ……そうだ!不満がまったくない。だってギルドと言えばバカの溜まり場だよ?なのにみんなお行儀が良くて、違うなー、バカなんだけど自分からは騒動を起こさない、違う違う、起こせないように抑制されているみたい。


街中でもチラホラと争いに発展しそうな場面なのに、途中でお互いが引いていく。見ていて気持ちの良いもんじゃない。人としての行動原理をまったく無視した行いって、人として見たら違和感しかなくなる。どうして?なんで?ってずっと感じていると頭が疲れて気持ち悪くなるって感じかな。


人並みを観察していてわかった。争い事を抑制されている者達は顔が歪んでいる。要するに、納得していないのだ、住民たちは。気持ち悪いと思いながら見ていたら、だんだん滑稽に思えてきた。


な~んか、もう答えが出てる気がするよねー。


転移者か、それとも転生者がいる。こーんなちぐはぐな事をするのは中途半端な知識を持ってる奴なんだろう。俺の時は直ぐに頓挫して痛い目にあったから、今では理性が働くけど。そうでなかったら、もうちょっと暮らしを良くしたい、みたいな事言ってたかも。


まあ、何をしても無理なんだけど。技術レベルを上げたいなら歴史にそっていかないと、誰もと言うより世界がついて来ない。諦めた俺だから俯瞰して見えるけど、そうでない奴は理解できなくて苦労してると思うよ。


さてさて、それでは首謀者を見つけますかね。


えーと、共和国と言っても王様が存在していて、議会もある。ローマと一緒かな?独裁政治にならないのは良いけど、この世界には合わない、と思う。


で、議会を牛耳ったのがお姉様とか言われてるサオリと言う女性だとわかった。サオリの話しをすると、民衆は二つの表情を見せた。関心がないか、眉間に皺を寄せるか。今、この国は争いが抑制されているから、批判とかしてこないが本音までは抑えきれてない。


だから中途半端なんだよ。やるなら本気で押さえつけないと、足元を掬われる事になると思うよ。


お?早速来たようです。まあ、いろいろと派手に聞いて回ったからね。お迎えが来ました。


「一緒に来てもらえますか?」


もうロボットだよね、君たち。表情も何もない男たちに囲まれている。


「はいはい。よろしいですよ。」


サオリさんは議長にまでなっている人なんで俺から会いに行っても難しいと思い、派手に動いて向こうから来てもらった。予想通りでがっかりかな。俺だったら会わないで無視する。メリットがない。


男たちに連れられて屋敷まで来た。屋敷で出迎えてくれたのは、女子高生だった。……別に驚かないよ?テンプレとか?めんどくさいから無視してるし。


「あなたは何者?」


いきなりだよね、この人は。


「俺はソウタです。Dランクの冒険者です。」


サオリと言う人は、じーっと俺を見ている。……そしてうるさいほどカネが鳴っていた。ーーーうん、わかったから。洗脳と言うか、催眠をかけるのに音と匂いがセットになってるのは知ってるから。


街ではひっきりなしに金の音が響いていた。そこまであからさまにやったら種がわかるっちゅうに。


「そんな事は聞いてないのよ!あんた何者!」


相当イラついてらっしゃる。まあ何をしても、マナが介在した瞬間、俺には効力が無くなるんだから。


「そう言われても、冒険者のソウタなんですが。」


焦れてしまったのか、サオリが合図を送るとわらわらとヒトが出て来た。まだ仕掛けてこないのは、威圧の為かな?


「心配しないで。コイツらに何を聞かれてもアホになってるから分からないわ。あなたも召喚されたのかしら?」


ん?ん?召喚?この世界の魔法に召喚ってあったの?そんな事が出来るのは神だけかと思ってた。


「言ってる意味が分かんないだけど?」


「惚けないでくれる?私は五年前に神国のボケ老人に召喚されたの。あなたはいつ?最近なんでしょ。」


「ま、いっか。俺は転生してこの世界に生まれた。それをしたのはクソ()だけど。」


「ふーん、転生ねぇ。……え、神さまって居るの?」


「見た事無いけど、居るんじゃない。あんたにも神の使徒が居るし。」


そう言って顎で指してやる。サオリはびっくりした様子で俺が示した方を見る。けど、見えてないようだ。あれ?俺と同じで干渉し辛い、とか?


「どこにいるの?神の使徒って、何?」


俺は、そこに居る神の使徒を見る。なんだろう?ポチとはなんか違う。存在感?……俺は、ポチが怖い。バカやってるけど、基本的にポチやクソ()は敵わない存在だから恐怖しか湧かない。でも目の前にいる奴にはなんとも思わない。正直、殺せんじゃね?


「神の使徒って、なんだろ?」


何って聞かれても俺にも分からん。


「何よそれ、バカじゃないの。」


失礼な……


「本人に聞けよ。ポチはそう言ってた。」


「だから何処に居るのよっ!」


あー、うるせー。と思いながら、そいつを見る。見るけど、ほんとポチみたいな威圧感がない。


俺はそいつに近づいていく。姿はポチに似ている、がやっぱり違う。俺が手を伸ばすとそいつは身を引いた。かなり焦っている様にも見えた。


「ん?」


俺に触れられると不味いのか?俺が触れると……


「お前はなんだ?神の使徒じゃないな。」


ポチはこの世界とは別の存在。だが、コイツはこの世界のもの、マナが介在した物体になるのか?だから俺に触れられると劣化してしまう。生き物には影響はないが、作られたものでは悪影響があるだろう。


「なに?誰よあんた。」


そいつは消していた姿を晒した様でサオリも見る事が出来るようになったみたいだ。


あー、なんか話しがめんどくさくなってきた。さらに近づこうと思い一歩前に出ようとしたら


「やめた方が良いですよ♡」


ポチが止めた。


「な、に……」


「うお、急に出て来んな。びっくりしたー。」


「触っちゃうと消えちゃいますよ。」


突然背後から声をかけらてびっくりする。コイツ(ポチ)は気配がまったくわからん。見えてないと何処に居るのかわからない奴だし。


サオリは突然現れたポチに驚いている?いや、違うな。ポチの存在感にびびってる感じか。そして偽ポチは驚愕の表情だな。丁度良い、ポチが居るなら聞いてみよう。


「ポチ、あれはなんだ?」


「私の偽物ですよ。」


「んなこたぁ見れゃ分んだよっ!」


「えー、だから()の偽物ですってば。」


「おー?クソ()の偽物か。なんと恐れ多いことを、ばちとか当たんないのか?偽物の神って……」


そうだね。神さまは変化していく世界を望んでるけど課程には頓着しないんだよねー。


「サオリさん?だっけ。あんたも召喚されたんじゃないから。多分、現地のヒトだから。」


「そんなはず……ない……」


見たらわかるんだ。俺は世界に拒否された存在だから、この世界に居る生き物はみんな俺に恐怖した顔か、嫌悪した顔をするんだ。それはもう例外なく。あんたも気づいてないかも知れないけど、ずっと俺を恐れた顔をしてるから。


この世界の生き物には器の大きさがあるみたい。器の大きい奴は俺に嫌悪した表情をする。器のちっちゃい奴は恐れているか、泣きそうなぐらいにびびった顔をする。


だから言ったろう?この世界の者に感情は湧かないって。恋愛対象?欲情?ないない。


のじゃとかライオン丸に姉妹の妹は嫌悪した表情をしていた。あれらは器が大きいんだと思う。他は記憶にも残らんほどの雑魚なんだろう。俺がこの世界の奴の名前を覚えられないのは、興味が持てないからだと思うよ。


元魔王に元エルフの二人はそんな顔をしなかった。だから、あそこに残りたいと切実に願った。


「あれは、どうすんだ?」


「うーん、偽ポチは消えちゃいます。でもあの娘は記憶だけ埋め込まれた存在だから、記憶だけ消えて元の体の持ち主に戻ることになる、かも。」


自分でも言うんだね、偽ポチとか。


「それにしても、こんな事が出来る奴が居るんだ。」


「うーん、忘れてたけど、エリちゃんたちの他にもう一人居たんだよねー。4柱の精霊神だから世界の理から外れた存在も4人いるって、今思い出しました。」


ふーん、まあいいか。この世界の謎には興味ないし、関わんない方が俺としても面倒がなくて良い。それに今回の依頼は見る事だから達成した。


「俺は帰るよ。」


俺は出口に向かう。


「あ、そうそう。あんたらが何をやっても興味無いけどこの国だけにしといてね。王国に手を出すとか、俺に仕事がまわってきて面倒な事になるから本当にやめて。頼むよ、マジで。」


俺たちを囲んでいた男たちのうち二人の肩に手を乗せる。パリンと音を響かせて洗脳だか催眠の魔法が壊れた。


「見たまんま、俺には無駄だから。頼んだからねー。」


俺は屋敷を出て行った。


王国に戻りのじゃに報告を済ませた。案の定仕事が増えた。王国は共和国に対して不干渉を貫く様で、俺には定期的に国境へ行く事になった。お金をくれるなら良いさ。

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