11, 再びのじゃ
再び再び軽く領主に挨拶をして俺たちは部屋へと移動した。正式な会談は翌日行う。
部屋に入るなり俺は周りをチェックして回る。一通り確認が終わって、ポチたちを見れば、ポチにのじゃに影のお姉さんの3人はお菓子を食べていた。なんなの?ポチはともかくお姉さんは仕事しなよ。
お菓子禁止だったのに、ポチめ、のじゃを引き入れて反故にしやがった。その分、のじゃがお金を出してくれるから見逃したが。
あー、あー、そんなにお菓子を食べて……ご飯が食べられなくなっても知らないよ。
俺は部屋の確認が終わったので、外で待機している警護の3人に報告する。外の3人は交代で扉の前に立つ。部屋付きの侍女がお茶を淹れてくれるが、コイツらは、もうそんな物には手を出さない。勝手にジュースを飲んでいる。ーーー侍女を見るが、可哀そうになってくる。
そして夜。領主との会食の場。ーーー案の定、ご飯が食べられなくなっていた。領主を見ると、オロオロしてる。ほんと迷惑な王女だよ。
翌日の会談も恙無く終わり、3日の休息が決まる。
俺たちはのじゃを囲んで街の散策に出てきた。本当は出歩かないのが一番だが、囮も兼ねているので大々的に宣伝してまわる。
お姉さんがそっと俺に近づき合図をしてくる。俺たちは道の端に寄り、警護の連中がのじゃを囲んでその前に俺が立ちはだかる。覆面に頭巾を被った10人ほどが近づいてきた。
怪しい奴ら、なんてお構いなく、俺は無造作に歩いていく。余りに自然体の俺に困惑していた怪しい奴らに、遠慮なく刀を振るい膝から下を、どんどん、バッサバッサと斬っていく。奴らは構えるどころか、気づいたら地面に倒れてる状況に陥る。
うめき声が聞こえる中、俺は手近な奴の頭巾と覆面を剥がす。俺が良く見知っている頭に耳がある獣人がそこにいた。耳の形から狼種だろうね。
狼種は好戦的で群れの結束が堅い。逆を言えば、群れ以外は排除していく気質がある。なので、獣人たちからも煙たがれていた。
おおお、さすが影。もう連絡済みらしく兵士たちが走って来るのが見えた。
「で?どうだった。」
「其れらしい者は居なかったでござる。」
お姉さん、ござるはやめてよ。雰囲気ぶち壊しだから。
それにしても、やっと出てきたと思ったんだが、雑魚だけかー。尋問も、やっぱ無理か。捕まえた奴らは既に自害していた。狼種ってわかった時点でダメなのはわかっていた。奴らは異様にプライドが高い。
今回はやり方を間違えている。こんなに宣伝して歩いたら、本命かそうでないかまで分からなくなる。そりゃ周りから協力が得易いし、守りも硬くなる。でもなー。敵を炙り出すより出されてる。
俺だったら少数で動いてなるべく情報は隠す。俺たちが向かう前に先を固めて置いて、炙り出す。情報を流す奴、得る奴と監視出来る態勢を作らないと、多分今回は徒労に終わるんじゃないか?
「取り敢えずのじゃ、じゃなかった王女様、一旦戻りましょう。」
「ヴフっ……」
こらポチ。笑うんじゃないよ。
「……わかったのじゃ。」
俺たちのじゃ一行は領主館へと戻った。
翌日も街中をうろうろしたが、何も無かった。それで3日後、のじゃ一団は公爵領へと向かった。
道中で一度、獣人の間者が襲撃してきた。
今回は騎士や兵士が対応した。……と言うか、偉そうなオッさんの面子がどうとか、煩いから俺は手出ししていない。さすが獣人、身体能力が高い。1対1では動きについて行けて無い。力は互角かな。
それでも、此方が数で倍以上いる。それなのに……
「あー、倍の数が居るのに……そこー、騎士だからってどうして対面しちゃうの?何やってんの?囲めよー、あっ、見てないで動きなさいよ。あーあー、そんなの当たらないって。なにやってんだか……」
はっ、として周りを見ると。みんなしらけた顔をして俺を見ていた。偉そうなオッさんは苦虫を噛み潰している。
「ひょっとして、声に出てた?」
みんな同時に首を縦に振る。
捕縛するとかの問題ではなく、チャチャクチャの状況ではただの泥仕合いになっていた。騎士や兵士に死人は出なかったが、被害は甚大だった。そして捕虜になった者は居なかった。
公爵領を間近に控えて、奴らは小出しに襲撃してくる。何か別の目的があるのか?余りに情報が無さ過ぎて判断が出来ない。やっぱ失敗だよ、これ。証拠を固めるどころか、情報がバンバン出て行く。のじゃ王女、君には向いて無いよ、この仕事。
そうして公爵領に辿り着いた。ここが悪の巣窟、気合いを入れよう。
そう思って街へ入りました。街中を見ました。住民を見ました。ーーー普通に獣人が生活してましたよ。7・3の割合かな?見た感じ、問題もない様子。
のじゃ達もビックリしていた。あれ?王国の事なのに知らないの。
公爵が居る領主館につき屋敷へと入って行く。こっちは、違和感だらけで、獣人の奴隷がいた。働いているのは奴隷だけ、街中とのギャップが凄かった。
公爵と面会した。30過ぎのオバ……お姉さんです。睨まれたっ!?怖いよ、なんで睨むの。
「ようこそおいで下さいました、王女殿下。マルチナ・ライカーンと申します。どうぞ良しなに。」
「うむ。お初にお目に掛かる、フレデリカじゃ。宜しく頼む。」
「お部屋に案内致しましょう。」
ぱんぱんと手を叩くと獣人の女の子が走ってきた。そして部屋へと案内してくれた。
俺は部屋をチェックしていく。いつものように、いつものことを……いやー、真面目に仕事してて良かった。隠し部屋を見つけちゃいました。盗聴器なんて物は無いだろうから、盗み聞きする為の部屋だろうね。
ーーーあるわあるわ、壁に1つ天井に1つ、最後はクローゼットが二重箱のようになっていた。どんだけ黒いんだよここの領主は。
さすがに王女も唖然としてた。
「うちにも無いのじゃ……」
とか言ってました。
一応トラップの代わりに糸を張って鈴を引っ掛けて置きました。糸が切れたら鈴が落ちるので。
「みんな糸を踏まないようにね。」
注意しとかないと、そそっかしい奴が多いから。なぜか、興味津々に見ていた。こう言う事やらないのかな?
翌日は視察を兼ねて領地を廻った。特に何もない、普通の生活風景で、ちょっと違うのは獣人が混ざっているくらいか。こう言う風景は王国では見ていない。今はヒト種と獣人は棲み分けているから、獣人を見る事はない。
王国にも奴隷は存在している。犯罪奴隷に借款奴隷だが、獣人や弱者が奴隷になる事はない。そもそも奴隷商が存在しないから。奴隷を扱うのは国だから。
はっきり言って、公爵領は、王国として認められない。公爵は理解しているのだろうか。
取り敢えず日中は視察、夜は単独で情報を集めてまわる。
一次報告。街に奴隷は居ない。隠している訳でもない。どうやら領主館だけに奴隷が存在する。
二次報告。住民と公爵の意識や価値観の違い。亡くなった前公爵は獣人との交流を進めていた。だが、今の公爵は獣人嫌いで有名だった。と報告するが、なんか違和感を感じる。
三次報告。獣人にも派閥が存在した。奴隷解放を掲げる者。現状を維持したい者。獣人が獣人を嫌悪している者。また住民の中にも奴隷解放に賛同している者がいる。ここで更なる違和感が……極一部に獣人排斥を訴える者達が存在した。
「てな感じでした。」
「……」
そりゃ言葉が出てこないよね。複雑過ぎて、俺でも匙を投げたい気持ちになる。
「奴隷解放じゃが、誰に言っておるのかのぉ?今の王国内に獣人の奴隷は存在しとらんが。」
そうだよ、俺も見たことない。ポチの話しでは、エージが全ての獣人奴隷を連れて行ってしまった、と言う。その時に沢山ヒトが死んでいる。旧魔族領が今の獣人達の国になっていた。山脈を挟んでいるから、なかなか交流は難しいと思う。
「気になったのは、獣人排斥ですかね。それって神国の専売特許ですよね。」
「迂遠な事を申すでない。それは昔の話しじゃ。」
「失礼しました。」
「ふむ。それにしても、ぐちゃぐちゃじゃな……」
チリン。鈴が鳴る。俺は口に人差し指を当ててみんなを見る。みんなは俺を見て頷く。鈴は三番目だからクローゼットだ。小声で
「今日はお開きにしましょう。」
それからは皆、自由行動をする。




