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テスト

作者: 匿名作者

学生時代には必ず「テスト」という物が付き物だ。

付き物であって、憑き物である。


とある1人の男子高校生がいた。彼は至って真面目な性格で、帰宅後の予習復習を欠かさなかった。おかげで勉学は順調に進んだが、いわゆるガリ勉状態になってしまい交友関係は上手くいかなかったのだ。彼の思想ではもっと勉強すれば、もっとテストで良い点が取れればきっと振り向いてくれるはずだと思い込み、さらに勉強に明け暮れるという見事な悪循環に陥ってしまうのだった。ご飯も食べず、ただただ参考書とノートを交互に睨めっこするだけなので、栄養失調を始め様々な病気にかかり始めた。入院しても未だにガリガリと机に向かうので、精神科にも通った。入院していてもテストがある日は登校しテストを受けて帰る、そんな態度にもクラスメイトは苛立ちを覚えてしまっていたのだ。


学校から病院が近いということもあって、学級委員長が配布されたプリントを彼の元に届けることになっている。だが、実は渋々引き受けたものだった。正直彼が机に向かっているその姿はまるで化物のようで、とても嫌いだったからだ。


それは、高校三年生夏の期末テストの前日の事だった。

この日もノックを3度鳴らし、個室部屋へ入っていくとそこに化物は変わらずいる。

「……プリントか」

「じゃ、俺帰るから。」

「……そ、ありがと。」



「あ……あのさぁ!」

彼が再び机に向かおうとしたときだった。委員長が数学を教えて欲しいと言ってきたのだ。かなり驚いたが、頼ってもらえたことがとても嬉しくて、どうにか平常心で「いいよ」と返すことが精一杯だった。


彼の教える数学は、学内で一番慕われている数学教師よりも分かりやすく、丁寧だった。委員長が苦手だった数学を意図も簡単に80超えさせたと噂になり、8月の病室はクラスメイトで溢れかえったのだ。

クラスメイトが病室に来たのにはもう1つ理由があって、この夏の期末テストに彼は来なかったのだ。

なんでも、委員長が帰った後に病気が悪化してテストどころじゃ無かったそうなんだが、それが返って皆を「テスト君がテストに来ない」と違う意味で心配されたのだ。



8月の一件後、彼はまた学校に通い始めた。と言っても、今までとは違う。教室に入れば「テスト君おはよー!」と挨拶が聞こえ、授業が終わると分からなかった箇所を聞きに彼の周りには人で溢れかえるのだ。

期末テストは落としたが、代わりに友達とよべる人が出来た。それはまるで憑き物が落ちたようだった。

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