お医者さんごっこ
7話目です!よろしくおねがいします!!
ルビの部分が見づらいかもしれません、「追跡魔法」と書いております。
「なんです?人の顔を見るなり大声出して…」
口を尖らせるセリカに少年は腰を抜かしたまま問う。
「な、ななな、なんでここに…っ!?」
「なんでって、あなたの後を付いて来たからですよ?」
セリカが少年を指差すと、少年の身体から一筋の光が伸びセリカの指先へ差した。
「これを使って♪」
「そ、そんな……」
「あ、あの、ひょっとして息子が何かしでかしたのでは…」
顔色がどんどん悪くなっていく少年を見て母親が何か感づいたのかセリカに問いかける。
さて、どうしましょうかね……
営業用の笑顔を絶やさずに頭の中でそろばんを弾く事2秒。
「い~え、お母様。お子さんは何もしていないですよ」
「…そうでしたか、私はてっきり……」
ホッと胸を撫で下ろす母親に見られぬよう、腰を抜かしたまま目を見開いている少年にとびっきりの笑顔を見せる。少年はぶるっと身体を震わせた。
「…それで、お母様はご病気なのですか?」
「えぇ、少し前から頭痛がして、身体もなんだか痺れてしまっていて…お医者様が言うには特級ポーションで治るものらしいですが、うちにはとても…」
「特級ポーション…ですか…?」
ほとんどの病気や怪我が治るとされている特級ポーションは金貨5枚もする高額商品だ。「特級ポーションで治らないなら打つ手なし」とまで言われてるポーションが一般家庭の人が手にするのはかなり苦労する。
「ちょっと失礼しますね」
違和感を覚えたセリカは少年の母親の瞳孔を見て、喉を見たりと医者の真似事をし始めた。少年は母親に何かされるんじゃないかと身構えること数分。
「この程度の症状なら私の作る薬で治りますよ。そうですねぇ…銀貨3枚でどうでしょう?」
「「え?」」
セリカの発言に親子揃って口をあんぐりとしている。
「セ、セリカ様は薬師なのですか?それに銀貨3枚って…」
「薬師とはちょっと違いますね、薬師の技術を使える事は確かですけど。…確かに、特級ポーションを使えば治せます、でもそれ、ほとんどのモノに当てはまりますよ?厄介な症状ではありますけど特級ポーションを使うほどではありません。診察したお医者様は無能だったってことです♪」
「まあ…っ!」
「本当に!?本当にお母さん治るの!?」
銀貨3枚という一般家庭でも払える金額で治せると分かると親子は泣き出しそうなくらい喜んでいる。けど…
今、あなた方の目の前にいるのは医者でも聖人もなく『商人』ですよ~
「…薬草とか必要なのでその採取に行かないと……お子さんをお借りしても?」
「僕に出来る事なら何でもする!!お母さん!僕たくさん取ってくるから待っててね!」
「セリカ様、どうかよろしくお願いいたします」
深々と礼をする母親を背に少年の家を出て数分、セリカは後ろを付いてくる少年に振り返った。
「そういえばお名前を聞いていませんでしたね?」
「カイル!僕はカイルって言うんだ!」
「では、カイルさん、何か忘れていませんか?」
終始笑顔のセリカの問いにカイルは一瞬キョトンとした後すぐに慌ててポーチをセリカに渡す。
「ごめんなさい、セリカさん。僕、お母さんの病気を治したくて…」
「だからと言って盗みをするのはダメでしょう。お金がないのなら自分で稼ぐしかないんです。中身は……無事なようですね」
中身に何も変化がないことを確認するとセリカはポーチを今度は盗られないようにと腰にしっっかりと付ける。その様子をバツが悪そうに見ているカイルにセリカは
「では、次からは問答無用で騎士団に送りつけるので盗みは働かないように。お疲れ様でした♪」
と言い放つと宿屋に向かって歩き始めた。