序章
相変わらずの不定期更新で申し訳ありません。50話目です。よろしくお願いします!
――誰かが歌っていたんだ。世界は星の数ほど存在するって――
――誰かが笑っていたんだ。世界はいずれ1つになるって――
『――…おしまい。それじゃそろそろ寝ましょう?』
『えー…僕まだ眠くないよ』
窓から差し込む月明かりの下、ベッドで本を読み聞かせている姉弟がいた。まだまだ元気な弟を姉はなだめる。
『だーめ。いつもそう言って朝寝坊しちゃうんだからもう寝るの』
本を閉じて布団を掛けなおす姉に促されて弟は、しぶしぶ目を瞑る。
『…ねぇ、お姉ちゃんは世界は1つじゃないって思う?』
『…昔の人は地球は平らで巨人が支えていたって考えていたらしいよ。当然だと思っていたことが実は間違いで、ありえないと思っていたことが本当のことだったりする…だからひょっとしたら世界も――』
ピピピピ ピピピピ ピピピピ
スマートフォンのアラームの音が鳴り響きムクリと身体を起こす。ずいぶんと懐かしい夢を見た気がするがどんな夢だったかは覚えていない。ただなんとなく…そう、切なく感じたのはなぜだろうか。
顔を洗い寝癖を直し、着替えをしているとカレンダーに目が移る。
「ああ、そうか。今日は姉貴の誕生日だ」
大学から帰ったら姉貴に会いに行こう。そういえばこの間、部屋の掃除をした時に、昔渡しそびれたプレゼントが見つかったからそれも渡そう。
机の引き出しから包装紙に包まれたままのバングルを取り出しショルダーバッグに入れる。
「いってきます」
誰の返事があるわけではないが今日はなんとなく、挨拶をして家を出た。
いつも通りの通学路を歩み、いつも通りの少し退屈な講義を受けた後、いつも通りに食堂で昼食を食べていると、もう何年もの付き合いになる悪友がとんで来る。
「なぁなぁケイく~ん、ノートを写させてくれよ~」
「普段から寝てるお前が悪い」
「そんな事言わずに…この後の合コン代だすからさ!な!」
「…その合コン出ないって言ったろ?大体試験前に合コンなんてやってるから単位を落とすんだろ」
ノートで悪友の頭をペシリと叩く。満面の笑みで頭に叩かれたノートを受け取る悪友。
「サンキュー!そんじゃ今度別の形でお礼するわ!っていうかこの後なんか予定あんの?」
「ああ、姉貴のな」
「…悪りぃ。ヤな事思い出させたな」
「気にすんな。もう何年も前の話だ。…あ、ノート明日返せよ!」
忘れっぽい友人に念を押して空になった食器を片付け大学を後にする。
電車とバスに揺られてしばらく、辺りが黄昏に染まりつつある頃、道すがら花屋で買った花や線香を持って少し迷路のような道を辿っていくと目的地に到着する。
佐藤圭の姉、佐藤絵里香が眠るお墓だ。
「誕生日が命日ってのはどうもな…そういや今日久しぶりに夢を見たんだ。どんな夢かは忘れちまったけど…たぶん姉貴の夢だったと思うんだ」
墓石を掃除し、花を供えながら姉と話すように独り言を呟く。周りには誰もいないので問題はないはずだ。線香に火をつけ目を瞑り手を合わせる。
ああ、そういえば姉の好きだった和菓子を買ってきたんだ。それとあの日渡しそびれた…
ケイが目を開けようとしたその時、頭に響く謎の声――
――ほら、世界が繋がった――
「おお!勇者様!よくぞ参ってくださった!!」
「え…?」
目を開けるとそこは薄暗いどこかの地下室のようで年配の小太りした司祭のような男が嬉しそうに声をあげていた。




