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アンナの矜持

ずいぶんと間が空いてしまいました。申し訳ありません。暑い日が続いていますので熱中症などに気をつけましょう!

軽快な音楽と共にウエーブの掛かった真紅の髪に羽飾りを挿し、赤のドレススカートを身に纏った1人の少女が現れる。ゆったりとした動作と共にお辞儀をしたかと思うと喚声を上げハイキックでスカートを捲り上げて白いぺティーコート、黒いストッキングを覗かせながらハイテンポで踊りだす。メリハリを利かせながらもしなやかに四肢を捌き、踊りに合わせてふわりと舞うスカートは見る者を挑発する刺激的な踊りを生み出し魅了する。



「…なるほど。カンカンとは考えましたね」

アンナがなぜ大人の姿で踊っていないのか疑問に思いながらも肌の露出の少ないカンカンを選んだことに感心するセリカ。他のダンサーより貧相な身体を隠せる上に差別化にもなる。他にも露出の少ない踊りはあるが、衣装を見るに先日まで滞在していたフラワ国で購入した物を使っているためにフラワ国伝統ダンスであるカンカンにしたのだろう。

「あの子がセリカの言ってた子?なかなか上手じゃん。なんで個人で踊るのにコーラスダンスのカンカンを選んだのかは謎だけど」

ティラミスを頬張りながらダンスを眺めるドロシー。グレイとトウマはアンナの踊りに合わせて舞うスカートに合わせて揺れ動いている。

「アーニャも色々と考えがあるようですからね。彼女なりの矜持があるんでしょう……ところでお2人とも、見えてもせいぜいストッキングですよ?」




「譲ちゃんの仲間のダンス、よかったな!あの見えそうで見えないところがなんとも…」

数分のアンナのダンスが終わり次のダンサーが登場したところでグレイが満足げな顔をする。トウマも横で神妙な顔でうんうんと頷いている。

「それでは、ぜひアーニャに投票してくださいね♪」


ダンスコンテストは点数順で順位が決まる。観客と審査員が一番良いと思った人に投票をしその合計点数が高ければ優勝だ。観客票は一票に付き1ポイント、審査員票は一票で10ポイントとなっている。匿名性等を上げるため審査員は観客に紛れ込んでいて誰が審査員かは分からないが、会場には10人の審査員がいるとの事。もっとも観客数はその10倍を超えるため1ポイントでも馬鹿にはできない。


「まぁ身内にポイントを上げたい気持ちも分かるが…最後まで見てからな!」

「そうだぜセリカの姉ちゃん!公平に審査しないとな!」

グレイは相変わらずだが、満腹になったためだろうかいつの間にかダンスに魅入られだしたトウマも同調して次のダンサーを楽しそうに観賞する。

「私はあんま興味ないからアンナちゃんにいれとくよ。あと、イサクの分も入れとけば良いっしょ」

追加で頼んだジェラートを堪能するドロシーは机に突っ伏したままのイサクの投票用紙と合わせてアンナに投票をしてくれた。

「さすがドロシーさん!話が分かる!ありがとうございます♪」






自分の出番を終えたアンナは控え室に戻ると1人のダンサーが声を掛けてきた。

「あなたのダンスなかなかの物だったわよん」

胸元を隠すトップスに深いスリットの入ったロングスカート。その境で顔を覗かせているくびれたおへそに所々に飾られたベールやアンクルを付けたその美女はアンナよりもずいぶんと早い順番で踊り終えたダンサーだ。そのダンスは見る者の時を止めてしまうほどの物で優勝候補の1人である。

「それはどうも。あなたのベリーダンスもとても勉強になったわ。えっと…」

「サヴィーヌよ。よろしくねん?アンナ」

「どうして私の名前を?」

「各地を旅しながら様々な踊りをこなす年端もいかない少女のダンサー…あなたのことでしょん?噂になってるわん」

「あら、私も有名になったわね。でも一言言わせてもらうと私は子供じゃないわ」

「ふふふっ…そういう勝気なところとっても可愛いわぁん…でも残念ね。ソロダンスでコーラスダンスのカンカンを踊ってしまうなんて…優勝は諦めたのかしらん?」

くすくすと笑うサヴィーヌにアンナはただ真っ直ぐな瞳をぶつける。


「私はティーズじゃなくてダンサー。ダンスは媚びる為のものじゃなくて感謝するためのもの。見た目だけで判断するこの大会が気に入らなかっただけよ」


サヴィーヌは少しだけ目を見開いてすぐに笑みを浮かべる。その笑みは先ほどまでの作り笑顔ではない。

「…ああ、受付の……あなたがなぜあの受付を通過できたのかは謎だけど…あなた面白いわぁん。…だからこそ残念。次会う時は正々堂々とダンスだけで戦いたいものねん」

「それ、まるで今回は私の負けが確定したみたいな言い方ね?」

「うふふ…あまり気にしないでねん?じゃあねん♪」

手をひらひらと振りながら言いたいことだけ言ってどこかへ行ってしまったサヴィーヌ。




きっとダンスだけで戦っても今の私じゃ……



「…サヴィーヌか」

アンナはぎゅっと拳を握り締めた。

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