水上アトラクション前にて雨具販売中
「すさまじいな…」
「ええ。あの大量の無詠唱魔法…威力も十分でしたしまだまだ余裕ありそうでしたね」
「ゴメスは慎重派だからあそこでリタイアするのも無理はないな。あのままじゃジリ貧だったし余計な怪我を負う前に…ってところだろう」
控え室のモニターで試合を見ていた強面お兄さん、セリカ、イサクは各々感想を漏らす。
「あれ…ドロシーさんが勝ったということは、私もこの後あの人と戦うんですか?」
うへぇ…と喉から音を出しながら引きつった顔をするセリカ。
「今回の大会参加者は6人だから…例年通りなら誰かがシードになって準決勝戦を免れる。運がよければ戦わずに済むかもな」
イサクの話しによると大会の参加人数に応じてトーナメント表は形を変え(当たり前だが)、実績や実力に応じてシードも適用されるらしい。
「まぁ、今のところあのドロシーがシード枠に入るだろうから優勝するにはどの道戦うことになるだろう」
「何か対策を考えないとダメですねぇ」
どうしたものかと思案しているとアナウンスが入る。
『それでは次の対戦相手を紹介しよう!山岳部族のトウマ!そして、鍛冶師グレイ!呼ばれた選手は試合場に来てくれ!』
「おっと、俺の番だな」
身の丈ほどの大きなハンマーを担ぎ立ち上がる強面お兄さんのグレイ。
「鍛冶師だったんですか?」
「おう、兼業でな。んじゃ、応援頼むぜ~」
ひらひらと手を振りながら控え室を出るグレイ。そして入れ替わるようにドロシーが控え室に入ってきた。
「ん?あのゴメスとやらはいないのか?」
イサクがゴメスがいないのを気にしてドロシーに尋ねる。
「ここに残る必要ないからって出て行ったわよ。あんたは残っているのね」
「他人の戦いを見るのもまた勉強だからな」
歓声で包まれる会場の中央で対峙するトウマとグレイ。
「そういやさっきから姿が見えなかったがどこ行ってたんだ坊主」
「俺、祭りってのが初めてだったから色々見て回ってたんだよ。おっちゃんも鍛冶師なんだって?後で武器とか見せてくれよ!」
「おう、いいぞ~。あとな、俺はお兄さんだ。そこんところ間違えるなよ」
それぞれが武器を構える。グレイのハンマーに対しトウマの得物はごく普通のミドルソードだ。はたしてどんな戦いを見せてくれるのか…
『では、両者共に準備はいいな?…始め!!』
「先手必勝!どおりゃああ!!」
開戦の合図と共に地面を思いっきりハンマーで叩くグレイ。試合場が揺れると同時にトウマに向かって亀裂が走る。
「へっ!なら俺も!!どっっせぇえい!!」
トウマも負けじと魔力を込めた拳を思いっきし地面に叩きつけると、同様に亀裂がグレイに向かって走り出す。お互いの亀裂が2人の間でぶつかると小爆発を起こし石つぶてを撒き散らす。
「「まだまだぁ!!」」
グレイのハンマー、トウマの魔力拳によってどんどんと亀裂が入って破壊されていく試合場。このまま試合場がなくなるんじゃないかと思われたが終わりが近いことがトウマの拳から流れる血から見て取れた。
「俺はハンマーを使っているが坊主、お前は魔力を込めているとはいえ所詮は拳だ。そろそろ限界だろう?」
「いてて…ああ、どうやらそうみたいだ。ハリキリすぎちまったぜ。でも舞台は整ったぜ?」
「舞台?」
「おう!ただ張り合ってただけじゃないぜ!いくぜおっちゃん!」
トウマがミドルソードを地面に突き刺すと魔法陣が出現する。
「!!まさかお前!!」
「ああ、ただ亀裂を走らせてたわけじゃない。おっちゃんのと相殺するものとは別に魔法陣を亀裂で書いていたってわけだ」
「…なるほど、それでわざわざ魔力を込めた拳で…だが坊主、俺はおっちゃんじゃなくてお兄さんだ!」
これが最後だといわんばかりにハンマーを大きく振りかぶる。
「へへっそうこなくっちゃな!!『大いなる荒波の力をその手に収め 地を裂いて出でよ水精! 水精の猛り!!』」
地響きと共に試合場に無数に開いた亀裂から大量の水が吹き出て水柱となる。グレイはハンマーで対抗するが大量の水に徐々に押され……
『リングアウトォオオオオオオオオ!!勝者トウマァァァァァアアアアアアア!!!!!』
「よっしゃぁ!!」
試合場の中心でガッツポーズをするトウマ。
「へぇ~水の上位魔法か。結構やるじゃない。私ならあんなに準備必要ないけど」
ドロシーが椅子に座って足をぶらぶらさせている横でガッツポーズをするセリカ。
「よっしゃあ!!商売のチャンス!!」
「え…ってどこ行くんだセリカ!?」
控え室を出て走り出そうとするセリカをイサクが止める。
「どこって観客席です!見てくださいよ!トウマ君の魔法で雨のようになった水が観客席にまで!!まるで水上コースター!これは雨具やタオルが売れるチャンス!!」
「いやいや、君はこの後試合があるじゃないか!」
「試合前には戻ってくるので離してくださいイサクさん!!」
「…っていうか、そういうのって既に会場の売り子がいるわよ?」
「え…」
イサクから逃れようとするセリカにドロシーがモニターを指差しながら言う。
「ほら、モニターにもタオル売り始めた売り子が映ってんじゃん。客は見てるだけじゃなくてお腹も空くし酒も飲みたくなるっしょ」
「……言われてみればそうですね。私も売り子になればよかった………」
「…俺に勝っておいてその台詞はちょっとやめて欲しいんだが…」
ため息を吐くセリカを見てイサクもため息を吐いた。




