闘宴開幕
試合場にて向かい合うように立つセリカとイサク。セリカはイサクの装備、佇まいを凝視して対策を練る。
見たところイサクさんは剣士…それもかなりの手練。私が剣士なら初手は……
『では、両者共に準備はいいな?…始め!!』
D.Jパンチの開戦の合図と共に姿を消すイサク…と同時に金属音が鳴り響いた。
「疾っ…縮地ってやつですか?」
「なるほど、知っていたなら防げるか」
数十メートルを一歩で移動する歩法、縮地。開戦合図と共に一気に間合いを詰めて振られたイサクの剣はセリカの刀に止められていた。
「よく俺が縮地をすると分かったな」
「こういった試合での初手は『距離を詰めての攻撃』『遠距離攻撃』もしくは『待ち』の三択が定石ですからね。私が剣士なら…と考えました!お客様の立場になって考えるのも商人ですから…っね!」
均衡していた鍔競り合いを一瞬力を抜いてから刀を振りぬくセリカ。バランスを崩しながらもイサクは後ろに大きく飛んでそれをかわす。それを追撃するかのようにセリカは刀を振るう。
「『風の精よ! 風刃 鎌鼬!!』」
セリカの刀が光り風を纏うと刀から発生した風の刃がイサクを襲う。
「うおっ!!」
間一髪身体を反らして風の刃をかわすイサク。
「今の完全に捉えたと思ったんですけどね」
「こっちも一瞬ヒヤッとした…その武器、ただの刀ではないな?」
セリカの握る刀は昨日ジャンク屋で入手したものだ。
「ご名答♪因みにこんな事も…できますよ!!」
再び刀が光ると炎が纏われる。セリカが大きく振りかぶり一気に振り下ろすと刀から火炎弾が放出される。
「ファイアーボールか…だがそんな物は――…」
イサクは火炎弾を両断する。
「…――俺には効かん」
「でしょうね♪」
イサクの両断した火炎弾の後ろに隠れるように距離を詰めたセリカが刀を構えていた。
「縮地かっ!?」
咄嗟に剣を構え防御を試みたイサクだがその剣に衝撃は走らない。セリカは刀を構えたままいつもの営業スマイルをしていた。
「イサクさん、イサクさん」
「…?」
「えい♪」(『閃光』)
「しまっっ…!!」
パチンっと指を鳴らすと強烈な光と音がイサクの視界と聴覚を奪う。
「く…目が……だが、気配を辿れば…そこか!」
一瞬取り乱すもののすぐさま冷静さを取り戻し使えなくなった目を瞑るイサク。流石はBランク冒険者、こういった事態にも的確に対処できている。イサクの剣先がセリカに向けられたが…
「『来たれ風精! 彼の物を取り巻き 巻き上げろ旋風!! 風の嵐!!』」
「これはっ…!うおおぉぉぉぉぉ……」
セリカの魔法で巻き起こった暴風がイサクの身体を宙に浮かすとそのまま場外へと運んでいった。
「上手くいきましたね♪」
『リ、リングアウトォオオオオオオオオ!!なんとなんと、今回の優勝候補だったイサクが敗れたあぁああああ!!勝者、セリカァアアアア!!』
D.Jパンチの勝者宣言と同時に割れんばかりの歓声が会場を覆う。
『では、勝利者インタビューといこうか!いい試合だったねセリカ君!何か一言頼むよ!…あ、事務所に許可を貰ったやつをね!』
再び白い歯を見せながら近づいてきたもじゃもじゃとしたアフロヘアーのD.Jパンチからマイクを受け取る。どうしたもんか考えていると1つ名案を思いつく。
『え~と…今回決め手となった『閃光』…その術式を込めた丸玉。名づけて「閃光弾」を明日からフェスティバル終了までの期間限定で裏通りの出店で販売します。1個銀貨2枚で~す。冒険者の方々はもちろん女性や子供の護身用にも是非どうぞ♪次回の商品もお楽しみに~♪』
急に宣伝を始めたセリカに会場はどよめきが生じたが、
「閃光弾か…あのイサクがやられた魔法を込めた玉…使えるな」「お母さんあれ僕も欲しい~」「魔物に襲われた時の護身用に買っておこうかしら?」「次回もってことはまだ変わった商品があるの?」「セリカァアアア次も勝てよぉおおおお!!」
すぐさま声援へと変わっていった。




