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商人のやる気がぐーんとあがった▽

アンナをダンスコンテスト会場まで見送った後、本選まで時間があるようだったのでセリカは闘技大会の受付所に来ていた。受付所近くには屈強な男を始めとして華奢な女や、およそ争いごとなんてしなさそうな子供までいる。色んな人がいるもんだなと思うのと同時に商人である自分が変に目立たないようで安心した。商売的には知名度が欲しいが冒険者的には知名度はいらない。あくまで『商人のセリカ』は戦えないのだから…



「はい、じゃあ次の人~…?」

行列の中で待つこと数十分、やっと順番が回ってきたセリカの顔には目元を隠すように仮面が付けられていた。

「やっと私の番ですねーただ待つっていうのはあまり好きじゃないんですよねぇ」

「…あの、そのマスクは?」

「あ、これですか?先ほど出店で買ったんですよ。一度ベネチアンマスクってやつを付けてみたかったんですよね!似合ってます?」

「ベネ…??……まぁ正体を隠したがる人は稀にいますが…受付には身分証明が必要なので冒険者ギルドカードの提示をお願いします」

「はいは~い」

受付の青年に言われギルドカードをポーチから取り出して渡すと青年がカードを読みながら受付用紙に記載していく。

「同じランク、要は同程度の実力同士で戦う階級制とランクの垣根を越えた無階級制の大会がありますが、どうしますか?」

「ん~…どちらの方が賞金が高いのですか?」

「賞金ですか?無階級制のほうが高くなっていますね。その分参加者も多いですし生半可な実力じゃ怪我するのがオチだと思いますが…」

「階級制でお願いします」

青年の説明を受けるや否や即答で階級制を選択する。怪我なんてしたくないし、そもそも実力が足りないだろう。

「では、階級制Bランクマッチで登録いたしますね」

「…ああ、そういえば私Bランクでしたね」

冒険者として活動をしていないセリカだったが、リュートの町でやった手合わせのおかげで幸か不幸かBランクになっている。Bランクと言えば中堅クラスの中でも上位のランク付けだ。冒険者としての経験を積んでいけばなれるクラスであるが、その経験がほとんどないセリカにとっては不相応の格付けである。あの手合わせも不意打ちが成功しただけである。


何度も使える手じゃないし、あの時バルカスさんに訂正をお願いするべきだった……今からでも参加辞退した方が…


そんな事を考えていたセリカに一枚の紙が渡される。


「それがBランクマッチの概要です。よく読んでおいてくださいね。では、次の人~」


一度列を外れて渡された紙を読んでみる。ルールによっては上手く立ち回れるかもしれない。


 ――Bランクマッチ――

実力を十分に付けてきた諸君らにとって一般の魔物相手では物足りなさを感じているだろう。しかし、世の中には更なる凶悪な魔物もいれば実力を持った人々がいる。諸君らは現状に満足せずに日々の努力や鍛錬を行って欲しい。今回の大会を通じて自らの長所、短所を見つめ直してくれる事を期待する。そもそも――…


渡された紙には長々とギルドによるお説教が書かれていた。こんなものを読む冒険者なんているのだろうかと思いながら一応目を通したが商人のセリカにはやはりどうでもいい内容だった。ため息をつきながら最後の段落まで読んでみる。


――長々と前置きをしてしまったが、ここからが今回の大会のルールとなる。と言っても諸君らはこの段落ですら読んでいないだろうと我々も思っているから裏に必要な事を分かりやすく書いたのでそれを見るように。以上。


…なら始めからこんな物書かないでくださいよ。「よく読んでおいてください」って言ったのはそちらじゃないですか。

うんざりとした表情でこめかみを押さえながら紙を裏返す。



優勝賞金 金貨50枚



中央に大きく書かれた賞金額にセリカの目の色が変わった。

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