おかねがたりないよ▼
35話目となります!更新が不定期になると思いますが引き続き読んでくださるとありがたいです。
様々な施設、お店が立ち並ぶ目抜き通りには既に大小様々な屋台が立ち並び商人たちが明日から始まる祭りの準備をしている。セリカ達は商人ギルドから渡された許可証を持って目抜き通りを通り抜け、路地という路地を曲がり裏通りを歩く。
「ねぇ、どこまでいくの?」
「渡された地図によるとこの辺り…あ、ここですね~」
地図に書かれた場所は少々近寄りがたいジメジメとした日中でも日の光が届きづらいような裏道であった。
「前日に出店許可取れる場所があるといったら、まぁこんなところでしょうね」
「最悪な環境ね」
「え~と、『現出せよ』」
セリカが商人ギルドから受け取った許可証を地面に置き呪文を唱えると許可証が光を放ち小型の屋台が現れる。レンタル料を払う事で祭りの期間中ギルドが貸し出してくれる物だ。異空間収納魔法を利用したもので持ち運びに優れており、屋台にも様々な機能が施されているのでセリカも金貨を1枚払って借りたのだ。
「さて、寝ましょうか?」
「は?どこで?」
「この屋台、テントになるらしいんですよ。確か呪文は…『寝場創造』…まんまですね」
セリカがギルドが設定した何の捻りもない呪文を唱えると屋台が変形をくり返しやがて箱型になる。
「職員さんの話だと寝袋は各自で用意してくださいとのことでした」
結界魔法を展開し、外からの攻撃、進入を阻止するその屋台は使用者の睡眠を守るが、小型という事もあり人が2人、ギリギリ横になれる広さである。
「…最悪の環境ね」
「ほっほっほ、お嬢さん達は行商人かい?」
うんざりとした表情をしていたアンナの後ろから、真っ白な髭を立派に携えた小柄な老人が声を掛けてきた。
「こんばんは~、明日から祭りの期間ここで商売させてもらいます、行商人のセリカです。この娘はアンナさんです」
「はいはい、こんばんは。儂はこの辺で同じく商いをしているロイスじゃ。こんな所に店を開く物好きが儂以外にいるとは思わなんだ……ライバルの顔を拝んじゃろ思ってのう」
髭を撫でながら値踏みするような目でセリカ達を見るロイスにセリカはいつもの営業スマイルで対応する。別に好き好んでこの場所を選んだわけではないが、それは伏せておく。
「同業者様でしたか!ではロイスさんの取り扱い品は扱わないようにしますね♪何を取り扱っているんですか?」
「ほほう、住み分けは理解しているという事か。最近の行商人にしては礼儀がなっとるの。まぁ、仮に儂と競合しようとしても無理じゃがの。なんせ儂の取り扱い品は魔法道具じゃからの」
笑いながら話すロイスに目を光らせたのはセリカだ。
「魔法道具ですか!ひょっとしてご自分で製作を?」
「まあの。製作方法は教えんし、見せもしないぞ?」
片眉を上げながらセリカを見るロイス。
「それは分かっていますよ。ただ、欲しい物がありましてね、ロイスさんのお店には魔法の鞄ありますか?」
「異空間収納魔法を施した鞄じゃろ?もちろん置いてある。知る人ぞ知るうちの看板商品じゃ!見ていくかね?」
「はい♪」
屋台から20m程離れたところに小ぢんまりとロイスの店はあった。一見何のお店か分からないが小さく看板が掛けてある。このお店を知っていないとまず来ないであろう立地があいまって隠れた名店の雰囲気を増幅させる。中に入ると魔道書から巻物、ありとあらゆる魔法道具が並んでいた。興味津々とアンナが商品を眺めている横でロイスから魔法の鞄の紹介を受けるセリカ。鞄の大きさや種類によって収納できる容量も変わるようで一番大きな物はお城1つ分は優に入るとか。
「行商人ならこのリュックタイプがおすすめじゃな。大体25mプール1杯分は入るぞ」
「それはすごいですね!ぜひこれをくだ……えと、一番安い物はどれでしょうか?」
貼られた値札を見ると0の数が想像の3つも多い。いつか大金が手に入ったら買おうと、心に留めて置く。
「なんじゃ、貧乏じゃのう…一番安いのはこれじゃな。容量は一般家庭の物置くらいしかないがの」
そう言ってロイスはウエストポーチを取り出す。
「このポーチ1つで物置くらい入るなら十分です。ちなみにお値段は…?」
「金貨50枚じゃ」
「ぐっっ…流石は魔法道具の中でも高度な魔術を施してるだけの事はありますね………この年齢さ」
「何をやろうとしているのよ!バッカじゃないの!!」
年齢詐称薬を取り出しかけたセリカに商品を見ていたアンナがとんで来る。
「じょ、冗談ですよ~まさかそんなこれをああしようなんて」
「言葉になってないわよ?」
ヒソヒソと話し始めた2人に咳払いをするロイス。
「買うのか買わんのか?」
「えっと~買いたいことは買いたいんですが…持ち合わせが…」
「だろうの。ウチの商品を買うのは稼ぎのいい冒険者か商人、あるいは地位のある者じゃ。して、お前さんは戦えるかの?」
「戦いですか?」
「祭りの期間中コンテストがあっての~」
「あ、ダンスコンテストなら私が出るわよ!」
はいはい、と手を上げるアンナ。
「そうか、そちらにでるのか。まぁそれでも良いじゃろう。いい成績が出せれば賞金が出るからの、それで買ってくれればウチとしてもありがたい」
「アーニャ、優勝するんですよ!!」
ロイスの話を聞くや否やアンナに熱い眼差しを送るセリカ。
「もちろん優勝は狙うけど賞金は私のものよ?新しい衣装が欲しいもの」
「ちょっと貸してくれれば倍にしてカエシマスカラ」
「後半片言じゃない。嫌よ、こういうお金の貸し借りで身を滅ぼす人は何人も見たもの」
「ほっほっほ、堅実な踊り子さんじゃの。ならお主も自分でコンテストに出ればいいではないかの?」
「踊りですか…あんまし自信はないですが…」
相変わらず自慢の髭を撫でながらロイスは続ける。
「何も踊りだけじゃないぞ?色んなコンテストが開かれるからの~」
「それで戦えるのか聞いたわけですか」
ロイスの話しによると冒険者ギルド開催の闘技大会があるらしい。そこで結果を出せば賞金が手に入るとか…
「私、商人なんですけどねぇ~……」
「だから戦えるか聞いているんじゃよ」




