スープ?お湯?
朝。陽気な日差しと共に眼を覚ますと顔を洗い髪を梳かす。荷物を整理して宿を出て町の外れに向かうと既に馬車を待機させていた御者の青年が挨拶を交わす。
「おはようございます。お二人ともよく眠れましたか?」
「おはようございます~私は大丈夫ですけど…」
セリカがチラッと寝惚け眼で欠伸をするアンナを見る。
「ん……おはよぅ……」
「アンナさんは朝弱いのですか?」
「……普段は夜に酒場、とかで踊ることが……ふわぁ……多いから……」
「この時間はまだ寝てる時が多いんですって。昨夜は早めに寝たのにまだまだ子供ですよね~。ささっ馬車の準備が出来ているなら出発しましょう♪」
ガタゴトと音を立てながら進む馬車の中で朝食のライ麦パンを齧るセリカ。馬車の揺れと一緒に首を揺らして寝息を立てるアンナ。鼻歌交じりに馬を操る御者の青年。昨日のいざこざが嘘のように行程は順調だった。
お昼。馬を休ませるために馬車を止めると昼食の時間だ。道具があれば料理でもするのだが生憎そんな物はない。干し肉とライ麦パンだ。普段から旅慣れている三人にとってはこれが行程途中の普通の食事であるが、セリカはここに儲けを出す計画を立てていた。
「寂しく味気ない昼食からおさらば!っていうコンセプトで試作したんですけど味見してもらっていいですか?」
瓶に詰められた赤い粉末を火魔法で沸かしたお湯にさらさらと入れてアンナと青年に渡す。
「僕もいいんですか?ありがとうございます!これは…スープですか?まさかこんな所で暖かい食事を食べれるとは…」
「セリカってなんでもやるのね~…」
「商品開発は半分趣味ですから。それに折角行商人になったのですから万屋を目指さないと!目指すはGMスーパーです!」
「じーえむ…何?っていうか行商人って分類的には転売じゃないの?それなのに…」
「細かい事はいいじゃないですか~。同業者との差別化は大事ですよ?」
セリカの言葉にうんうんと青年も頷く。
「ささ、冷めないうちに飲んでください」
「それもそうね」
「いただきます」
ごくりとカップに注がれたスープを飲む2人。
「お味はいかがですか?」
「僕は美味しいと思いますよ!普通は旅の途中でスープなんて飲めませんからね」
肯定的な意見を述べる青年。だが商品化に向けて欲しいのはどちらかというと…
「…味が安いわね」
アンナの述べるような否定的な意見だ。
「上手くいえないけど……これスープじゃないでしょ?調味料を色々混ぜてスープの味に似せた感じがするわ。これじゃ味の付いたお湯よ、お湯」
「…アーニャの味覚は優れてますね。製造方法までバレるとは思いませんでしたよ」
「…言われてみればスープ…とはちょっと違う味がしますけど行程で飲めるなら誰も文句言わないんじゃないですか?」
「これをいくらで販売するかは知らないけど、私だったら買わないわね」
「う~ん…そうですか…お二人とも貴重な意見ありがとうございました!……コンソメ粉末を目指したんですけど手に入る調味料も限られてるし、それだとあくまでスープっぽいお湯……アーニャの言う安い味…新しい調味料としては売れる…?…けど即席スープとして売りたいですし、やっぱり出汁から作るべきですかね…そうすると手間と時間が…」
ぶつぶつと思案に入ったセリカを横に余ったスープを飲みながら干し肉とパンを食べる二人であった。
あら?…パンと一緒に食べると結構いけるかも…?干し肉なんか浸しちゃったりして…
アンナはスープを改めて飲みながらそんなことを考えていた。




