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ワタシ ショウニン タタカエナイ

今後、もしかしたら新しくパーティーに入る人がいるかもしれない等と適当な理由を付けて、パーティー名を決めるのはなんとか保留にすることが出来た。ぶーぶー文句を言っていたアンナであったが、一緒にお腹がぐーぐー鳴り出し顔が髪の色と同じくらい真っ赤になったので、「顔と髪の境界線がなくなっちゃっていますよ」とセリカが笑うと、アンナの回し蹴りが炸裂した。


遅めのブランチとして街のベーカリーに向かい、サンドウィッチとコーヒーを飲むとちょうどヨハネが手配してくれた馬車の時刻になったので乗合所に向かう。



「また会いましたねセリカさん」

「なんとなく予想していましたけどやはりお兄さんでしたか」

乗合所に待機していたのはこのフラワ国に向かうために乗っていた馬車であった。

顔なじみの御者のお兄さんに軽い挨拶を交わしキャビンに乗り込むセリカとアンナ。荷物を置くと御車台に顔を出し日程を確認するセリカ。

「聖アテナイ国までどれくらい掛かりますか?」

「普通にここから走らせれば入国までに3日、首都まで行くならさらに2日ってところです」

「え……それじゃあフェスティバルに間に合わないじゃないですか!!」

「ご心配しなくても今回は追加料金を頂いているので転移魔法の使用をしますよ。なので2日目の夜には聖アテナイ国の首都ルーマンに着きますよ」


どうやら個人運送屋には各国境近くにに支部があり、急ぎの用などであれば追加料金で各支部へ転移魔法での移動のサービスを行っているとの事。今回は聖アテナイ国付近の支部に転移してから陸路を使っていくようだ。


「転移魔法なんて高度な魔法も使えるんですね~」

「事前に準備しておかないと使えませんし、何より貴族様のような財力に余裕のある方でもないと追加料金を払えませんけどね」

「うへぇ~…」

「セリカさんがいつか僕らを頻繁に使ってくれることを祈ってますよ」

「努力はしますけど、その頃には自分で転移魔法用の支部を作ってると思うので気が向いたときに使わせてもらいますね……っていつの間に転移したんですか!?」

そこは既にいくつもの馬車が待機する乗合所ではなく、砦のような見た目をした建物が目の前に鎮座していた。おそらくこれが聖アテナイ国付近の支部なのだろう。周りには御者のお兄さんと同じ空色のチェックを羽織った職員らしき人達が複数人おり、魔法陣の発動を終えぞろぞろと建物の中に入っていく。

「復号魔法を使われると色々と困るのでちょちょいっとやらせていただきました」

「……どこで聞いたかは知りませんが、もうその手は使いませんよ。そもそも、遅延させている復号魔法はもうないので、どちらにせよ詠唱しないと使えません」

「セリカさんなら無詠唱でもやりかねないでしょ?」

「…ノーコメントで」




雲行きは怪しかったが道程は順調であった。他愛のない世間話をしていたセリカとアンナであったがここでアンナが1つの事に気づいた。

「ねえ、セリカ」

「なんです?アンナさん?」

「あー……やっぱりその『アンナさん』ってやめない?私達仲間なんだし私のほうが年下…年下よね?」

「18からはカウントしていませんね」

「……んーでね、私の事は『アーニャ』でいいわ。そっちのほうが私も嬉しいし」

「愛称ですか、いいですね~。文字数が増えたのは気になりますが…なら私の事は『セリリン♪』でいいですよ♪」

「ええ。改めてよろしくね『セリカ』…で、話が逸れたんだけど、こういう馬車って普通護衛が就くわよね?」

「セリ……ええ、前回はヨハネさんが同乗してましたね」

「もし魔物とかが現れたら」

馬の急な嘶きと共に馬車が急に止まる。何事かと外の様子を見ると全長1メートルほどのスライムが2体道に鎮座している。

「どうすんの?」

アンナがまさにこんな時だとスライムを指差しながら言う。

「そりゃあ、冒険者も兼ねているアーニャがやるべきでしょう」

「え、私なの!?」

「御者のお兄さんは戦えませんよ?」

「すいません…護身術くらいしか使えません」

照れを隠すように頭を搔く御者の青年。

「セリカは?」

「ワタシ ショウニン タタカエナイ」

「なんで片言なのよ」

「あれ?僕はヨハネさんから戦闘に関してはむぐぅっ!!」

「いや~ん、私あんな気持ち悪いのむりぃ!はやくなんとかしてぇ!」

何かを言おうとした御者の口を抱きつきながら押さえる。

「なんか色々と腑に落ちないけどいいわ。スライムくらいなら余裕だし」



ダガーを構えスライムの前へ出るアンナ。それを御車台から見守るセリカと御者の青年。

「大丈夫なんですか?僕としてはヨハネさんからお墨がついてるセリカさんがやった方がいいと思うのですが…」

「なるほど、それで護衛がいないんですね。私非戦闘員ですよ?何考えているんですかね?」

「この間最上級呪文をぶっ放とうとしていたあなたが非戦闘員なら僕はどうなるんですか…」

「まぁなんにせよ、これから共に行動をすることになったのである程度の実力は知っておきたいですからね。今回の道中は彼女に全部任せますよ。それに、まだ信頼をした訳ではないですからね」

「信頼ですか…」

「成り行きで結成されたパーティーです。ボヤボヤしてたら後ろから…なんて嫌ですしね」

最も、エルザとの約束がある以上それはなさそうだが…

「そういうものですか」

「あと、単に踊り子の戦い方が気になるからですね♪」




「身体の90パーセント以上をゼリー状の粘液で覆われたスライムは中央の核を潰せば無力化できるっと」

スライムの倒し方を復習し終えると軽く深呼吸をする。

「まずは核を曝させないとね」

手足をしなやかに動かしステップを踏み始め歌いだす。



「そういえば踊りの中にはその中に武術を隠すものがあるって聞いたことがありますね」

「そうなんですか?ならあのアンナさんという少女は…」

「スライムを見るにそれだけでは無さそうですけど暗殺術に近いですね」



「いい感じよ~」

歌い踊り始めて直ぐにスライム達も身体を振るわせ始め、やがてその形状を変えたりしながらまるで一緒に踊っているかのような動きをする。そしてその動きによって核が曝された瞬間、ダガーで一突きすると崩れ落ちるように地面に溶けていく。もう一体も同様に倒し終えると、踊りをやめダガーに着いた粘液をふき取る。

「ま、こんなもんね」



「お見事でしたよアーニャ」

御車台から降りたセリカが拍手をしながらアンナに労いの言葉をかける。

「大した事ないわ」

口ではそんな事を言っているが褒められて少し嬉しそうな顔をするアンナ。

「じゃあ早速素材集めですね」

セリカはそのまま瓶を取り出し比較的綺麗な状態の粘液を集めだす。

「アーニャも手伝ってください。早くしないと地面に溶けちゃうんで」

「え、スライムのこれを集めるの…?」

「知らないんですか?スラーゲン。お肌にいいんですよ?化粧品にでも加工して売ります」

「化粧品…それ、私にも1つ卸してね」


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