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愛と美の国

――愛と美の国、フラワ国。芸術発祥の地と呼ばれるこの国では街には画家を初めとした芸術家が多く住んでおり美術館が立ち並ぶ。景観を意識した建造物はそれだけでも美しく夜になれば灯が点り幻想的な空間を作り出す。それは男と女が愛を語る場所としてこれ以上ないと言っていい。ここは花の都パラス――



「まんまパリですよねぇ」

夕刻、無事にフラワ国の都市パラスに着き、馬車から降りると大きな石造りの門が出迎えてくれた。

「んん?でも門のある場所が違いますね…って当たり前なんでしょうけど」

どこか見たような街ではあるがここは異世界…別世界である。頭では理解しつつもどこかわくわくしてキョロキョロと辺りを見回すと、キャンパスを持った画家らしき人や画商が多いように思える。

「さすが芸術発祥の国ですねぇ」



「では僕はこれで。また何かあればご利用ください」

「ああ。またな」

手続きを済ませヨハネから代金をもらうと御者の青年は再び馬車を走らせていった。

「ではセリカ。早速エルザ様に…」

振り返ると先ほどまでキョロキョロしていたセリカの姿はなかった。

「あいつはホントに…」




「この落書きが金貨10枚ですか?」

「あんた、これを落書き呼ばわりするとは分かっていないな」

広場で絵を売る画家の商品を見ると安いものでも金貨5枚はする。何が違ってどこで値段が変わるのか全く見当がつかない。

「芸術に関しては素人ですからねぇ。美術の成績も2でしたし」

「あんた行商人だろ?良かったら買っていってくれよ。よその国ならきっと高値で売れるぜ?」

「そもそも手持ちがないので無理ですね」

今セリカの手持ちには金貨10枚と銀貨8枚ある。とても手を出せる懐状況ではない。まして、自分でよく価値の分からない物に手を出すつもりはない。

「なんだよ。あんた貧乏商人か」

「まだ商人になって日が浅いですからね。今は資金集めの最中です」

「なら資金が溜まったら頼むぜ」

話も程々に切り上げて再び広場を探索する。何か商品を仕入れようとしたがどれも高額な上に価値が分からないので取り扱えそうにない。

「う~ん……この国に来たの間違いでしたかね?」

「何が間違いだ。ふらふらとほっつき歩きおって…探したぞ!」

ガシっと肩を掴まれて振り返るとうっすら青筋を浮かべたヨハネがいた。

「…怒ってます?」

「怒ってはいない。が、エルザ様もお待たせしている以上、面倒をかけられるようならこちらもそれ相応の対応をするとだけ言っておく」

「…は~い」

「王城はこの街の北にある。いくぞ」





城門の前で入念なボディチェックを受けた後、城内に入ると2人の兵士がヨハネに向かって敬礼をする。

「お疲れ様です、ヨハネ様。お待ちしておりました、セリカ様。エルザ様がお待ちになっておりますのでどうぞこちらへ」

長い回廊を渡りしばらく歩くと大きな扉の前に案内される。

「こちらになります」

「くれぐれも粗相のないように頼むぞセリカ」

「分かってますよヨハネさん」


扉を開け中に入ると玉座へ続く真っ赤な絨毯を進み片膝を着くヨハネ。

「ヨハネ・アルゼン只今戻りました」

「ご苦労様です。そちらの方が…セリカさんですね?」

玉座に座った皇女エルザ。長い銀髪に切れ長の目……というか




「子供じゃないですか」




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