早速戦闘ですよ
『ギルドの場所ってどこですか?』
確かに私はそう聞いた、それが間違いだったのだ。まさか冒険者ギルドの方に案内されるとは…
なんか武器持った厳つい人が多いなとは思ったんですけど最近魔物とか盗賊多いですし商人も武装位すると思って…まぁでも冒険者に登録しておけば魔物の素材とか売りやすいですし登録しておいてもいいですね。
「はい、登録します」
「ではこちらの書類に必要事項をお書きいただいて………はい、セリカ様ですね。最初は見習い冒険者という事でGランクでの登録となります。詳細はこちらの『冒険者の心得』に記載されているので確認して置いてください。最後に登録料の銀貨1枚をお願いします」
登録料を払って冒険者のギルドカードを受け取ると、近くの椅子に座って『冒険者の心得』を早速読んでみる。色々と書かれていたがまとめると
・冒険者ギルドは国を超えた組織。
・冒険者はランク付けされている。
・受けられる依頼は、自分のランク及び一つ上のランクの依頼。
・依頼を失敗した場合は違約金が発生する。
・殺人、略奪等をした場合は冒険者ギルドから除名処分となる。
・冒険者同士の私闘は禁止。
・冒険者が行った行為については冒険者ギルドは一切責任を負わない。
・冒険者のケガ・死亡については冒険者ギルドは一切責任を負わない。
と既に知っていた事なので読むだけ無駄だったなと思いながらもギルドを後にしようとすると
「ちょっと待ちな、そこのお譲ちゃん」
スキンヘッドの厳ついおっさ…おじ様に声をかけられた。
「初めて冒険者になったんなら心細いだろ。俺が色々と教え…」
「結構です。別に私心細くないですし、教わることもないですので」
笑顔で答えてさっさと出て行こうとするもののおじ様が食って掛かってきた。
「いるんだよなぁ。そうやって自分の力を過信してあっけなく死んじまう奴が。俺はそういう奴を何人も見てきた。いいか、冒険者ってのはだな…」
長々と語り始めたおじ様は結局のところ私を自分のパーティーに入れたいらしい。
「折角のお誘いですが私は誰かとパーティを組む気がないんですよ。では失礼し…」
「パーティを組む気がないって?お譲ちゃんそんなんじゃすぐ死んじまうぞ。俺はDランクだからお譲ちゃんを守る事ができる。だから俺の女になった方がいいと思うんだがなぁ」
あーあーついに俺の女とか言っちゃっいましたよこの人…っていうか
「たかがDランクで守るとか言われましてもねぇ…」
「…あん?」
「すいませんちょっと本音が出ちゃいましたね。でも護衛任務は大体がCランク以上の任務、ソロでやるにはBランク以上の実力が必要ですよね?それをDランクのあなたが『守る』なんて言われましても…そもそも私、あなたに守られるほど弱くないですし♪」
「なら試してみるか?」
「私闘は禁止ですよ?」
「きちんと手順を踏んだ『手合わせ』なら問題ねぇ」
「うーわ、ルール緩いですね。大丈夫なんですか?冒険者ギルド」
受付で手合わせの申請をするとすぐに出来るとの事で町の広場へと場所を移した。どこで知ったのか既にたくさんの観客がそこにはいた。皆さん仕事しなくていいんですかね?かく言う私もこんな事してないでさっさと商業ギルドに行きたかったんですけど受付の人曰く、『通常なら依頼をこなしていってランクを上げるのですが、手合わせで審判を勤めるギルドマスターが実力を認めればランクが上がることもあるんですよ!滅多にないですけど』との事であったのでそりゃお得と手合わせをやる事に決めました。それに…
「あなたに勝てば銀貨5枚くれるというのは本当ですよね?」
「ああ、俺が勝てばあんたは俺のパーティーに仲間入りだ」
そう、手合わせではお互いに賭けをすることも出来るのだ。
「ルールはどちらかがギブアップをするか、あきらかに勝負が着いたと俺が判断するまで続く武器、魔法ありの戦いだ。命を奪ったものは即座にギルドから除名だ」
顔にいくつもの切り傷のある初老の男性、この町の冒険者ギルドの長、バルカスさんである。ふさふさの綺麗な白髪をオールバックにしている姿はナイスガイである。
「いざ、尋常に…始めっ!」
開始と共にすばやく踏み込んできた名前も知らないおじ様…おじ様はバルカスさんのような人の事ですね。もうおっさんでいっか。おっさんの突きの連打をいなしながら後ろにバックステップで距離をとる。
「女だからって遠慮せずに武器を使っていいんですよ?」
「ふん、俺は拳士だ。もっともただの拳士ではなく…魔拳士だがな!『来たれ火精!彼の者を燃やせ!火球!!』」
右ストレートと共に放たれた火の球は人の頭ほどの大きさであったが、セリカは横っ飛びで簡単にかわす。
「そんな直線の魔法が当るわけないでしょ」
おっさんはニヤリと笑うと…
「『爆ぜろ!』」
「!!」
セリカのすぐ横で火の球は破裂し、幾多の火の粉が襲い掛かる。
「くっ…『障壁展開!』」
セリカの目の前に魔方陣が現れると透明な壁となって火の粉を防いだが
「魔法障壁を使えるとはな…だがそいつは純粋な物理攻撃には無意味だ」
火の粉の中からおっさんが飛び出し右ストレートが放たれた。
セリカは頬を掠めながらも拳をかわし、体勢を低くしおっさんの懐へと潜り込み右手に魔力を集中させる。
(魔法か?だが詠唱をしていない魔法の威力なんてたかが…)
すぐさま体勢を整えようとするおっさんにセリカは笑顔を向けると
「『術式開放……白雷掌!』」
白い雷を纏った掌底で顎を打ち抜いた。