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逃がしてあげましょうか?

師走とはよく言ったものでいつの間にか新年を迎えていました。ずいぶんと間が空きましたが更新です。今年もよろしくお願いいたします。

夜も更け草木も眠り、辺りが静寂に包まれる中でパチパチと音を立てながら燃える焚き火の前で欠伸をしながら火の番をするセリカ。その後ろでは盗賊達が自分達を縛る縄を解こうともがいていた。

「私は招待された…言わばお客さんなのに火の番させるなんてひどいと思いませんか~?ヨハネさんだったら寝ずの番でも大丈夫でしょうに…ねぇ?」

セリカが振り返るとササッと寝たふりをする盗賊達。

「…会話相手くらいにはなってくださいよ」

……すぅ…すぅ…とわざとらしく寝息を立てるそのバレバレな態度に思わず笑いがこみ上げてくると同時に1つの名案が思いついた。

「あなた達をボコボコにしたヨハネさんは今寝ています…まぁそれが分かってて私が火の番をしている時に逃げようとしていたんでしょうけど……逃がしてあげましょうか?」

「えっ」「なに!?」「本当か?!」

一斉に目を開ける5人の男達は鼻息を荒くして前のめりになる。セリカはニコリと笑い、

「おはようございます♪」

「「「「「あっ」」」」」

「ずいぶん間抜けな人達ですねぇ~こんな人達に時間とられるのがすごい馬鹿らしいです」


ヨハネは連行すると言っていたがそれはつまり余分な時間が掛かるという事だ。手配書に載っている賞金首なら連行する価値があるが先ほど調べたところ誰一人として賞金首ではない。


「…やっぱりここで始末するのが手っ取り早いですね」

ボソッとつぶやき口角を上げるセリカに盗賊達は先ほどヨハネに与えられた以上の身の危険を肌で感じた。目の前の女から感じられるのは純粋な殺意……

「ふふっちょっと目を閉じていれば一瞬なので安心していいですよ!『契約により我に従え雷の帝王! 我に仇なす者を見よ!幾重と…」

「い…雷系の最上級呪文!?急げ!急いで逃げろ!!」

盗賊の1人がセリカの行使しようとしている魔法をいち早く理解し仲間達に発破をかけるも固く結ばれた縄がそれを阻止する。

「くそっこんな縄!」「も、もうだめだ!!」「か、神様っ」

「…天地を別ち走れよ稲妻 雷の(サンダー)…っ』」


首元に当てられるヒヤリとした感覚…


「…何の真似ですか?ヨハネさん」

セリカの背後にはいつの間にか剣を持ったヨハネがいた。

「それはこちらの台詞だ。殺気がしたかと思えば大きな魔力の流れ。何かと思えば…」

「ふふっ流石にこれは派手すぎましたね」

「で、どういうつもりなんだ?」

「時は金なりってやつですね」

「ん?…はぁ……そういうことか……職務怠慢になってしまうではないか」

ヨハネは剣を下ろし盗賊達の元へ向かうと縄を切る。

「死にたくないなら盗賊行為はやめることだ…行け」

「「「「「はっはいいぃぃ」」」」」

躓きながらも走り出した盗賊達の姿はすぐに見えなくなった。ヨハネはセリカに向き直りながら大きくため息を吐く。


「これで予定通り明日にはフワラ国に着く。文句ないだろ」

キキキキキキキ…

「はい!文句なしです!」

「…拘束する時はノリノリだったじゃないか」

キキキキキキキ…

「そりゃあ賞金首が混ざってるかもな~と思ったので」

「……まあもうそれはいい。で、さっきからキキキキ鳴ってるそれはどうするんだ?」

大量の魔力が渦巻いているセリカの右手を指しながらヨハネは再びため息を吐く。

「それは簡単なことです。『術式封印』」

今にも暴発しそうな魔力の塊がまるで風船がしぼむようにセリカの右手の中に吸収されていく。

「これは…遅延呪文か?……まさかお前最初からっ!」

「そろそろ交代の時間ですね。火の番よろしくです♪」

「あ!おい、それはずるいぞ!」


欠伸をしながらキャビンに戻るセリカをヨハネがギャーギャーと攻め立てる。東の空はゆっくりと白み始めていた。


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