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ドナドナ

ガタガタと音を鳴らしながら馬車は街道を進む。途中で魔物や盗賊に会うこともなく旅路は順調であった。

「――ドナドナド~ナ~ド~ナ~♫」

「セリカは歌がうまいな。私は聴いたことない歌だが…」

「むか~しに聞いたことのある童謡なんですよ。まぁ歌詞はうろ覚えなんですけど…なんか自分がこれから売られる仔牛に思えてきたんですよね~」

「ははは!売られる仔牛か。別に獲って食おうとしてるわけじゃない」

「まぁ皇女様のお眼鏡にかなうのは願ったり叶ったりなのでいいのですけれど抱え込みとかはお断りですよ」

「ん?そうなのか?お抱え商人なんてそうそうなれるものじゃないぞ?」

「最終的にはそうなっても良いのかもしれませんけど今のところは色々と見て回りたい、というか好き勝手にしたいんですよね~」

他愛もない話をしているとけたたましい馬の鳴き声と共に馬車が急停車した。何事かと外を見るといかにも盗賊ですっと言わんばかりの武器を持った男2人が進路を塞いでいた。


「な、何ですか?あなた達は…」

御者の青年の問いにニヤニヤと笑い、武器を見せびらかす。

「へへっ…馬車と荷物を置いていけば命は助けてやるぜ」

馬車にジリジリと近づいて来る盗賊達。前の2人とは別に、いつの間にか仲間が増えており、左右に1人ずつ、後ろにも1人が接近していた。馬が止まったたった一瞬で包囲し終わるなんてなかなかの錬度だ。

「最近の賊は優秀ですねぇ」

キャビンから外の様子を伺いながらセリカはのほほんとしていた。そこにヨハネの姿はない。

「うわ!なんだお前!!」

「ぎゃっ!!」

「ひぃっ!!!!」

外からは盗賊達の悲痛な叫びが聞こえ、盗賊達は宙に舞っている。

「…ヨハネさんはもっと凄いですねぇ。まるで人間台風ですね」



「さて、残りはお前だけだな」

「う、…わっ…」

女が急にキャビンから飛び出してきたと思ったら一瞬の内に仲間達がふっとんでしまった。唖然としているといつの間にか首元に剣先を突きつけられている。強、い…速い…戦、う?逃げる、?いや…


              殺 さ れ る。



「安心しろ。峰打ちだから全員死んでいな…聞いていないか」

最後の1人はいつの間にか白目を剥いて泡を吹いていた。




ヨハネがのした盗賊達を拘束し終えると、辺りも暗くなってきたのでこのまま夜営の準備を始める。拘束された盗賊達を横目に夜営の準備をしているヨハネにセリカは尋ねる。

「この盗賊達はどうするんですか?」

「放置するわけにもいかないからな。このまま連行する」

「キャビンには乗せないでくださいよ。臭いですし既に満員です。それになにより臭いです。何日身体洗っていないんですかね」

「元より乗せるつもりはないさ。歩いてもらう」

「それを聞いて安心しました♪それでは『来たれ水精、彼の者等に降り…落ちよ!』」

ぶつぶつと魔法を詠唱をすると大量の水が滝のように盗賊達に落ちる。

「これでちょっとは匂いもマシになったでしょう♪」

「おいおい…気絶してるんだからそんなことしたら水を飲んでしまうかもしれないぞ」

「気絶させたのはヨハネさんじゃないですか」


夜営の準備を終え、馬の世話をしている御者の青年は2人の笑い声を聞き苦笑を浮かべていた。


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