読み違えました…
だいぶ間が開いてしまいましたが16話目となります。次回も少し間が空きそうですが読んで下さるとありがたいです!
町の広場には様々な人が行き交う。店を持たない商人達は大きな布に商品を並べ露天商を行い、冒険者達は商人から物を買ったり情報を交換したりしている。中央にある噴水の周りでは主婦達が噂話をしておりそんな主婦達を不機嫌そうに眺めている1人の女商人がいた。
「聞いた?特級ポーションでしか治らない病気を治しちゃう薬を作る商人がいるんだって!」
「聞いた聞いた!確か名前は…」
「そんなことより、ついに勇者召喚が決定したらしいわよ!」
「え!本当に!!」
昨日の夜、近年増え続ける魔物の対処に頭を悩ませ続けていた各国の首脳陣達はついに勇者召喚の議案を可決したのだ。カイルの流してくれたセリカの評判は勇者召喚決定という大きな噂に飲み込まれてしまった。
「いつかはやると思っていましたけどまさかこのタイミングとは…私の邪魔をするのは魔王だろうと勇者だろうと許せませんよねぇ…」
愚痴をこぼしながらもセリカは冒険者らしき人を中心に薬を売り込む。職業柄、傷や病気の多い冒険者達は勇者召喚決定という大きな噂に埋もれながらも「薬商人」の噂を聞きつけ買いに来てくれたのだ。予定した売り上げよりは少なかったがお昼を回ったところで商品をを片付け服屋に向かう。勇者召喚が決定した以上時間は無駄には出来ない。勇者召喚の儀式が行われる5日後までに儀式が行われる聖アテナイ国に向かいたい。
「異界から召喚される勇者…これは金のなる木ですからね~」
いつまでも噂の件を気にしている場合ではない。儀式に伴い行われるフェスティバルは大量の人とお金が動く。同業者はこぞって聖アテナイ国に向かうだろう。この流れは乗り遅れる訳にはいかない。セリカの瞳の奥に静かな炎が宿っていた。
「ほお~…このウルフの毛皮、ほぼ無傷…しかも5枚も…」
服屋の店主は眼鏡を光らせながらセリカの出したウルフの毛皮の細部まで穴が開くんじゃないかと思うくらい検品している。無傷なのは当たり前だ。元々服屋に売るためにわざわざ眠らせてからウルフを狩ったのだ。傷が多いなら防具として加工したほうがいいのだが、傷が少ないなら装飾品として売ったほうが高く売れる。
「そりゃあここに売りに来るんですからね」
「ふむ、では5枚とも買い取ろう。金貨3枚でどうだい?」
「私を馬鹿にしているんですか?この品質なら毛皮1枚で銀貨8枚はするでしょう?金貨4枚で」
「いやいや、君、このウルフを狩るのに何か魔法を使ったね?毛皮に魔力が残っているからその分価値は下がるもんだ。…まぁ無傷なのは認めるから金貨3枚と銀貨2枚でどうだい?」
「毛皮をなめす時に大部分の魔力の処理はしましたし、ちゃんとした処置をすれば時間経過で残りの魔力も無くなります。金貨3枚と銀貨8枚で」
「それは色を付けすぎだろう?金貨3…いや、いいだろう金貨3枚と銀貨8枚払おう」
さらに値引きを試みた服屋の店主はセリカが帰る素振りを見せた事を見逃さなかった。
「ありがとうございます♪」
この女商人はまだ若いのに商いを分かっている。実際この無傷のウルフの毛皮は残っている魔力がなくなれば金貨4枚以上の価値がある。見たところ行商人のこの女商人はそれも分かった上で取引に来たのだろう。なかなかどうして…
「くっくっく…」
「?どうしたんです?」
「この商売を続けてずいぶん経つがお譲ちゃんのような人は久しぶりでね。俺が値引き交渉で折れるのは滅多にないんだ」
「あら?じゃあ自慢できますね!」
「ぜひ、うちで働いてもらいたいものだな。そら、金貨3枚と銀貨8枚だ。確認してくれ」
「はい、どうもです♪」
ポーチに受け取ったお金を入れて服屋を後にする。
「資金は確保しました。次は聖アテナイ国に向かうための足の確保ですね~」




