お食事タイム
「では、私は風呂に入ってくる」
そう言ってヨハネは部屋に付いてるお風呂に入っていった。湯船などはなく簡易的なシャワーのみだが女性にとっては無くてはならないものだ。
私も後でお風呂に入れさせてもらいましょう。
そんな事を考えながらリュックから食材を出す。やっと食事にたどり着けるのだ。宿屋の主人に厨房を借りると早速準備に取り掛かる。
とりあえず主食はライ麦パンです。久しぶりにお米が食べたいですけどこっちでは中々手に入らないので我慢です。そうなるとメインは……
セリカは火を起こし小鍋の中に食べやすいサイズに切った野菜、携帯用としてストックしてある干し肉を入れる。野菜に火が通ったのを確認して小麦粉、水を入れて混ぜ合わせる。宿屋の主人に断ってミルクを借りてそれも一緒に入れて混ぜ合わせながらとろみが着くまで煮込む。煮込む。煮込む………
できました!シチューの完成です!!
小鍋を抱え部屋に戻り、木皿、木製スプーン等を用意して、小鍋に入ったシチューをよそう。いい匂いが辺りに立ち込み再びセリカのお腹が鳴き声をあげる。フーフーと冷ましながら口にシチューを運ぶ…
「うん、いい出来です!」
「何かいい匂いがするな」
お風呂上がりのヨハネが髪を拭きながら肌着で出てくる。
「私にも少し分けてくれないか?その匂いを嗅いでいたら小腹が空いてしまってな…どうした?」
「…私にも分けて欲しいです」
セリカの目線はヨハネのある一点に釘付けである。
「ど、どこを見ているっ!」
「いやー、随分立派な物だったので…あり合わせで作った物ですからお口に合うか分からないですけどどうぞ! パンもありますよ♪」
木皿をもう一枚取り出しシチューをよそい、ライ麦パンと一緒にヨハネに渡す。
「いただこう……うん、中々美味しいではないか!料理屋でもやっていけるんじゃないか?」
美味しそうに食べるヨハネにセリカは言い放つ。
「それではシチューとパン、合わせて銅貨1枚です♪」
「……え?お金を取るのか!?」
冗談のつもりで言ったのだがピタッと動きを止めたヨハネがあまりに面白かったのでこのまま続ける
「そりゃあ私は商人ですからね。慈善事業では食べていけません」
「そ、それもそうか…分かった、払おう」
妙に納得した顔でヨハネがお金を払おうとしたのでセリカは慌てて冗談だと言って止めた。
「そういえばどうしてヨハネさんは身分を隠して旅をしているんですか?」
食事を終え、ヨハネの入れてくれた紅茶を飲みながらふと疑問に思ったことを聞いてみる。
「人を探している…正確には人ではないが……まぁ、同じようなものだろう。身分を隠しているのは…分かるだろ?街に入るたびに手続きをするのがな…?」
「あー、分かります。めんどくさいですよね〜…でもいいんですか?身分詐称ですよ?」
「『聞かれていないから答えなかった』だ」
「ヨハネさん…私、あなたに会えてよかったです!」
悪戯っぽく笑うヨハネに自分と似た価値観を覚えたセリカは騎士を見る目が良い意味で変わったのであった。




