低音で叫ぶのは気持ちいい。
僕は正直なところすごい構えていた。
魔王が住んでるし、やばいんじゃね…と。
だけど、実際は、そんなことも無かった。
普通に街だ。
雰囲気でいうなら地獄という感じではない。
その雰囲気に驚いていることに、爺さんは笑っていた。
僕は安心したところで、さっき貰った杖を眺めていた。
やばい。かっこいい。杖は僕の厨二心をくすぐった。
今すぐに、技を出したくてムズムズしていた。
爺さんにそれがバレて街を見ろと怒られたので、最も試してはいないが…。
確かにガラの悪い見た目に見えるし、きつい臭いとか、見たことのないえげつない食べ物はちらほら見えるけど…とにかく、いい人(?)そうな人が多いし、安心したが…よく見ると人口が少ない。
これが、人が足りないというものだろうか。
なんだか、頑張らないとなと思った。
ーーーーーーー
街を見てから少し話がしかたかったので、僕と爺さんは、バーに入った。
入ると店員である、バーの若い可愛い女の子(長い赤色の髪、牙がある)が、爺さんに挨拶をしていた。どうやら、知り合いのようだ。
爺さんが紹介してくれた。
爺「この子はミッシェル。見た目によらず強いところもある。」
ミ「宜しくお願いします。」
と僕に挨拶をしてくれた。
僕「こちらこそ」
僕も雑な返事を返したが、何せ、女の子と喋るなんて、久しぶりすぎて、どう対応したらいいのかが分からなかった。
きっと僕の顔は真っ赤だろう。顔が熱い。
爺さんは、シャイだなと言って笑っていた。
ーーーーーーー
出かける時に、僕は爺さんに少しづつ詳しい話を聞くことにしようと決めた。だから、爺さんに話を聞こうとしたんだが、爺さんは違った。
ガブガブ飲んでいた。
酔った爺さんは…キャラ崩壊していた。
爺「もうやだ…わし…働きたくない…。給料安いし、魔王、扱い雑だし。」
ーーーなんというか、色々突っ込みたい。
爺「魔王さ、休暇とるとか言うし、魔王だけ代理とか、わし知らないし。ぶっちゃけわしのほうが休みたいし。魔導師に呼んでもらいたいし。」
「代理の存在とかわしと魔王と魔導師しか知らないし。負担重すぎるし。」
僕と爺さんしか聞こえないような声だったで、聞こえていないはずだが、そんな情報はきっと漏らしてないだろうな。僕だから話したんだろうな。
うん。爺さん口硬そうだし。
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その後も爺さんはブツブツと文句を言っていた。
枝豆を持ってきた、ミッシェルが会話に入ってきた。
ミ「お爺様はいつもこうなのですよ。酔って、色んなことを話されるんです。」
爺さんのブツブツ話していることを聞いたミッシェルは、ふむふむとうなづいて、話を続けた。
「あら、お爺様、この方が魔王様の代理なのですね。ほら、前に叫んでたじゃないですかぁ。代理来るなんて意味がわからないって。」
前言撤回。
僕「爺さん口軽!!!」
それがこの世界に来てから、初めて叫んだ言葉だった。
そして、爺さんには、大切なことは喋らないと決めた瞬間だった。
ーーーーーーー
店を出る時に、何故か、僕にミッシェルは仲間になりたいと言ってきた。
仲間がいるんでしょ?と、笑顔で。
僕は、また明日、魔王の城へと来て欲しいとお願いをした。
明日爺さんにも話してから、仲間にしよう。
悪い子じゃないし、僕が代理であることも知っているし、危ないからな。
ーーーーーーー
仲間を増やせ。そう魔王に言われた。僕は何をしたらいいんだ?
という肝心なところは結局聞けなかった。
聞けずに、僕は魔王の城へと爺さんをおんぶして帰った。
いや、普通立場的に逆だし、こういう時って、確か、魔法で、パッと城に帰るイメージだが、僕はそんなの知らないからな…。
帰り道の途中で爺さんはとんでもないことをいった。
爺「むにゃ…むにゃ…もうすぐ…勇者とせっしょく…作戦…むにゃ…むにゃ…」
爺さんはそのまま寝たが、僕は、しっかりと聞き逃さなかった。
ーーーユウシャトセッショク…??
え?
爺さんそこで寝る?!
は?何言ってんの?起きてよ!!
夜の道の中、僕は2度目に叫んだ。
しかし、爺さんは今日起きることは無かった。