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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第5章 決着
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本契約の、その先に

 楸の主である雅葛葉は、葛の葉一族の妖狐。――血筋を辿れば、真弓の遥か遠い親戚とも言える彼女は、梓馬の元師匠なのだという。


 「ところで葛葉、小豆あずきが新しい任務を持ってきてるんだけど?」

 手乗りサイズの小さな子狸こだぬき抱えた楸が、彼が咥えていた依頼書を葛葉に差し出した。

 「あら、ホント。しかも……あらヤダ、これ、伏見からのお仕事じゃない!」

 「何だ、とうとう見合い話でも舞い込んだか?」

 ペンを止め、ニヤリと笑った梓馬を、葛葉が容赦なくどついた。

 「ンなワケないでしょ、私は楸一筋よ! ……そうじゃなくて、あのおサボリ狐のお仕置き任務よ!」

 「おっと、それは僕としても張り切んなきゃね。柏様にはもうあと数十年は頑張ってもらわないといけないんだし」

 「ふふふ、私、これでも由緒正しい神狐の血を引いているの。あの柏ちゃんと違ってきちんと修行も積んできたから、なろうと思えば今すぐにでもなれるんだけどね」


 ――本契約より、さらに踏み込んだ契約。……主と同じモノになる契約。


 楸と葛葉は既にその契約を交わす約束をしているのだという。

 いずれ、あのぐうたらな神様に代わり、あの社の祭神となって土地の守護を務める、その約束を――。

 「でもそれは、もっとずっと先、僕が社を継いで、次の後継を作って……子に跡を継がせて……それからの話さ」

 「そうね。今はまだ楸の恋人でいる方が楽しいし。その為にも、柏ちゃんにはしっかり活を入れなきゃね!」

 葛葉は依頼を受ける旨を書類に記し、それを小豆に預ける。


 「――ねえ、真弓ちゃん」

 そして、そと真弓の耳元で囁いた。

 「私たち妖狐もそうだけど、吸血鬼の寿命はとても長いの。不死ではないけれど、普通の人間に比べれば、遥かに長い、永遠とも言える時を生きる。……真弓ちゃんは、彼と同じ時を生きられる?」


 しかしそれは、簡単に応えられる問いではなかった。


 彼の協力者パートナーである事を辞め、彼と離れるのは嫌だと思った。

 梓馬が吸血鬼であっても構わないから、傍に居たいと思った。


 ……けれどまださすがに、人であることをやめるまでの覚悟を決める事は、出来なかった。


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