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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第5章 決着
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告白

 鼓膜が痛む程の大声で叫ぶ彼の声音は、震えていた。真っ赤に染まった彼の瞳が、やけに潤んで見える。

 「でも……使わなかったら、私、今頃とっくに美鈴さんに殺されてたよ」

 最初の一撃だけで、瀕死の重傷を負わされた。

 他の飴玉キャンディで少しばかり能力の底上げを図ったところで、焼け石に水だったはずだ。


 「だから、使った。……構わないと思ったから」

 「構わないって、何が……・」

 「あなたと本契約を交わして、この先ずっとあなたの協力者パートナーを続けるのも、……このまま消えるのも――」


 この飴玉キャンディの効果が切れれば、仮死状態に陥る。

 その仮死状態から脱する方法は、一つだけ。それをしなければ、遅かれ早かれいずれは本当に死ぬことになる。

 その方法を、彼は決して教えてくれなかったけれど。

 「……棗に、教えてもらった。本契約を交わす、その方法も」

 「なっ……!」

 絶句する梓馬の背後から、葛葉の鋭い声が飛んだ。


 「梓馬!」

 何を思ったか、葛葉と対峙していたはずの美鈴が、真弓に手を伸ばした。

 戦況が不利と悟り、真弓を人質に取ろうというのか、猛スピードでこちらへ迫ってくる。

 

 「取り込み中だ、邪魔するんじゃない!」

 振り向きざま、梓馬が吠えた。

 懐から素早く取り出した短剣を投げて、美鈴を地面に張り付けて動きを止め、叩きつけるように鏡を彼女の額に当てた。


 「あ、あああ! 7年越しの獲物を持って行かれた!!」

 たちまちのうちに鏡に吸い込まれる様を見て、葛葉が頭を抱えて地面に膝をついて叫ぶ。

 彼女が悔しげに地団駄を踏んで嘆く様を綺麗に無視して、梓馬は真弓に向き直る。

 怒りを堪えた、未だ赤いままの瞳をまっすぐ見上げ、真弓は簡潔に自分の思いを告げた。


 「私は、あなたの事が好きだから」


 「……っ、お前、自分が何を言っているのか分かっているのか? 俺は、吸血鬼なんだぞ?」


 梓馬はしどろもどろになりながら、声を上擦らせる。

 信じられない、何を馬鹿なことを言っているのかと、そう思っている事が丸分かりだ。

 「……それが、何か?」

 戸惑う彼に、真弓は冷静に切り込んでいく。

 実在の男に告白するのは、生まれてこの方これが初めてであるが、ゲームの中でならありとあらゆるパターンの告白を成功させてきた。


 「だって、あなたは私が必要だと言ってくれたじゃない」

 ――それでも、心臓は緊張で暴れまくっている。


 「私はお父さんに嫌われてるから、家に居てもずっと一人だし、学校へ行けば和と、和の親衛隊の子たちが居て……。家へ帰っても、やっぱり和と、それに美鈴さんも居て……」

 息苦しい世界の中で、真弓は固く目と耳を塞いで一人の世界に閉じこもり、固い殻で心を覆い、そうして全てをやり過ごしてきた。

 「でも、あなたは私を選んで、私を必要だと言ってくれた。私一人だったら見る事の無かった世界を見せてくれた。……大して役に立てなかった私を、ちゃんと守ってくれた」

 ほんのひと時でも、あの息苦しいばかりの暗い世界の外へ連れ出してくれた。


 「私には、それで充分だったの。それだけで、他の事なんてどうでも良くなるくらいに。……吸血鬼だろうが何だろうが、そんな事、大した問題じゃない」


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