真犯人は……?
――そんな風に、中途半端にしたのが良くなかった。
……いや、棗の指摘通り、冷静な判断が出来なくなっていたのがそもそもの原因なのは間違いない。
ふと気づけば、彼女の姿が視界から消えていた。
当然、彼女と共に居たはずの棗も。
この人出だ、人混みに紛れたのだろうと、屋台の並ぶ通りを端から端まで探してみても、社務所や母屋の関係者の集まりを覗いても、もしやと彼女の自宅も探ってみたが、彼女の気配が何処にも無い。
体の芯が凍りつきそうな気分を味わいながら、梓馬は楸に詰め寄った。
「おい、お前、知っている事、洗いざらい吐け!」
胸ぐらを捕まえて壁に張り付け、瞳を赤く光らせ牙を剥く。
「……離してくれるかな。こんな事をしている時間も、今は惜しい」
しかしそんな梓馬の様子を見ても、楸は怯まずこちらを睨み返した。
焦っている様子はあれど、ぎりぎり冷静さを保ったまま、冷たく突き放す。
「君、この間からずっと僕を気にしていたようだけど、もしかしなくとも、僕を疑っていたんだろう? ……それで協力者の安全を疎かにするなんて、こんなのが組織の最高位の狩人だなんて、とてもじゃないけど信じられないよ」
掴まれた胸ぐらを乱暴にもぎ放し、楸は懐からピルケースを取り出し、中からカプセル薬を一粒、掌に落とした。
「……! お前、それ……まさか……!」
「――犯人なら、分かっている。だから僕は、彼女を見張っていたのに。さっきから、彼女の姿も見えない。早く探さないと、真弓ちゃんが危ない」
――彼女がここを訪れたのは、今朝の事だった。
楸が戻って来ているのだ。当然彼女がやって来ないはずがない。
手伝いで忙しい彼と、一緒に祭りを回れる時間は殆どない。だから彼女は楸と共に本部テントに詰め、親爺連中に冷やかされつつ郁子と共に手伝いをしていたはずだった。
……どんなに真弓が頑張ったところで、自分の早足など所詮たかが知れている。
ましてや、こんな格好ではあっという間に楸に追いつかれるのは当然の事。
全くもって格好のつかないオチだが、結局楸に宥められながら、本部テントにやって来た時には、彼女の姿は何処にもなかった。
「ごめーん、真弓ちゃん、ちょっと頼まれてくれる?」
郁子に、母屋の台所から茶葉と茶菓子の追加を持ってくるよう頼まれ、席を立った。
きっと彼女も、こんな感じで郁子に何か頼まれて、どこかに使いに行っているのだろう、と、その時の真弓は思っていたのだが――。
母屋の裏口に回り――そこで、彼女に声をかけられた。




