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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第4章 一線
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牽制

 「これは……。僕としてはなかなかに複雑な展開だなあ」


 押し返された箱を手に、楸は笑顔のまま梓馬を睨み据え、その背を追おうとしたのをその場に押し留めた。

 「今は、追わない方が良いと思うよ。どうも君は、鈍いみたいだから」

 「……わいも、この兄さんの意見に賛成や。あぁぁ、我が主人ながらホンマ情けない!」

 悔しげに前足でぽかぽか頭を叩かれる。……大して痛くはないが、大変煩わしい事この上ない。

 梓馬は顔をしかめ、楸を睨み下ろした。


 「僕は、彼女の幼馴染みだけど。……彼女は、幼い頃からよくうちに預けられていてね。僕にとっては妹も同然の子なんだよ」

 しかし楸は、弟の和のようにその視線に怯む事なく、それどころか微笑みながらしっかり受け止め、きっちり切り返してくる。

 「――大事な妹を、今の君に預けてはおけない」

 「……言ったはずだぞ。何を勘違いしているか知らないが、俺と彼女はそういう関係ではないと。あくまで一時的な仮の関係だ」

 「うん、だからさ。僕も言ったはずだよ。君がそういうスタンスで居るなら、もう彼女には近づかないでくれ。このまま、そっとしておいてあげてくれないかな?」


 ――何故だろう。無性にイライラする。


 「そうはいかない。……今、狙われている可能性が高い彼女を、放っておくわけにはいかないからな」

 「なら、彼女は僕が責任を持って守ろう。だから、君はもうお役御免だ」

 その台詞にいっそう表情を険しくした梓馬に、楸が微笑みかける。

 「それとも何か、どうしても君でなくてはならない理由でもあるのかな?」

 「……さあな。別に、どうしても俺でなくてはならない理由は無いな。だが、少なくともお前には任せておけない」

 「そうかな? でも、僕は君を知っている。……今の君に、彼女は守れないよ」


 「……お前、何者だ?」

 梓馬は、再びその問いを口にした。

 「彼女から聞いただろう? この神社の跡取り息子さ」

 その問いに彼はそう答えて、踵を返した。


 「――待て」

 呼び止める梓馬の声は緊張に尖っていた。

 「……悪いけど、僕も今日は忙しくてね。これ以上君に構っている暇は無いんだよ。僕はもう、本部に戻って仕事をしなくちゃならない。それとも、君も来るかい、仕事の手伝いに……?」

 足を止めずに振り返る彼の顔は、それでも人の良さそうな笑みを浮かべたままだ。


 その余裕そうな笑が、何故か癪に障り、梓馬はむっつりと答えた。


 「――行く」

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