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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第1章 狩人の協力者
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“噂”

 「――聞いた? あの例のダンス部の先輩、まだ見つからないんだって!」

 「ウソ、だって居なくなったのって先週の金曜日……だったよね?」

 「もう3日以上経つよ? 警察も動いてるってのにまだ見つからないなんて、おかしくない?」


 クラスメイトがそう噂するのを小耳に挟んだのは、今朝の事だった。


 「ダンス部の練習中に居なくなったって聞いたんだけどさ、ダンス部の活動場所って確か、あの、例の鏡のある第二体育館……だったよね?」

 「先週は水泳部の先輩がプールで溺れて……」

 「始業式の日には階段から落ちて骨を折った人も居たよね?」


 このところ、毎週のように起こる、一見事故にも見える事件の共通点。


 「学校七不思議の噂は、ウチの小学校や中学にもあったし、昔は男子とつるんで肝試しなんかやった事もあったけど……」

 学校の怪談なんて、墓場や病院に次ぐ、実にポピュラーな“お約束”だろう。

 普通、誰もが本気になどしない。

 

 事実、あの動画だって、ほんの数日で話題に上らなくなった。

 

 「まだ残ってる? ほら、例のアレ……」

 携帯――それもガラケー撮りだとひと目で分かる、低画質の動画に映るのは、薄暗い音楽室。

 誰も居ない部屋の中、ぽろん、ぽろん、とグランドピアノの音が鳴り響く。

 もちろん、演奏者は居ない。

 鍵盤部分の蓋もしっかり閉じられているのに、ピアノの内部では確かにハンマーが弦を叩いている様子が、縦長の画面にしっかり映されている。

 そしてカメラのアングルが変わり、今度は壁面にずらりと並べられた有名作曲家の肖像画が映し出される。本来しかつめらしい顔をしているはずが、にやりと口角を持ち上げて不気味に笑う、その様が――。

 「じゃあ、やっぱりこれも……」


 この動画が出回り始めた当初は、画質の悪さとあまりにチープな演出にインチキ臭さが漂い、あっという間に忘れ去られたのだが、ここに来て再びスポットを浴び始めていた。




 「……あの人が言っていた“事件”って、やっぱりあれの事……だよね」

 確かに偶然や事故という言葉で片付けてしまうには無理のある事件だが、だからと言ってそれが“人外”と呼ばれるようなものの仕業だと言うのもまた乱暴な話だ。


 ――明日、改めて受け取りに行く。


 そう言って渡された紙は、まだ通学鞄に突っ込んだままだ。


 「……何で……私なの?」

 一人呟く声に、返る声は無かった。

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