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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第4章 一線
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もう一人の幼馴染み

 「……は?」

 「――だから。俺と祭りを見て回れと言っている」


 まるで、デートの誘いのような彼の言葉に、真弓は目を丸くした。

 「人の大勢集まる行事を、人の精神を餌にする奴が見逃すとは思えない」

 「……あ、ああ、そういう事ね。うん、そうだよね。……でも、それってつまり、何か仕掛けてくるかもしれないって事?」

 尋ねた真弓に梓馬が頷く。

 「まだ、分からないがな。用心に越したことはない」


 ホッとしたような、がっかりしたような……。


 

 ――そして、翌日。

 複雑な思いを抱えながら、真弓は日に日に増える落ち葉をかき集める。


 この一週間は、特にこれといった事件もなく、久しぶりに平穏な日常が過ぎたように思う。

 だからこそ、この平穏が嵐の前の静けさにも思えてしまう。


 ――と。

 通りから路地へ曲がり、そのまま神社の駐車場に入ってくる車が、一台。

 その運転席に座る人物に気づいた真弓の顔が、自然と緩んだ。


 「ひさぎお兄ちゃん!」

 「やあ、真弓ちゃん。久しぶりだね」

 車のエンジンを切り、荷物を抱えて降りてきた彼は、フェンス越しに手を振った。

 「……あれは?」

 初めて見る顔に、梓馬が尋ねた。


 「彼が、楸お兄ちゃん。……和の、お兄さん」

 「あのガキの……?」

 和の兄と聞いて、梓馬が渋い顔をするのは無理もない。

 「うん。……でも、楸お兄ちゃんは大丈夫。和とは違うから」

 真弓は、母屋へ向かう楸を追った。


 「高校生活はどう? もう慣れたかい?」

 「……うん、まあ、それなりに」

 正直なところを言えば、馴染んだとは言い難い。――が、それでも中学までの状況を思えば、随分とマシになった。

 「ただいま」

 楸がからりと母屋の表の引き戸を開けると、すぐに郁子の声が飛んできた。

 「お帰りなさい、楸、ご飯は?」

 「途中で済ませてきたよ」

 「そう? お参りはもう済ませた?」

 「いや、まだ。荷物を部屋に置いたら、行ってくるよ」


 親子の会話を隣で聞いていた真弓は、あのぐうたら狐の有様を思い浮かべ、笑顔を引きつらせた。

 「じゃあ、お茶を淹れるわ。ちょうど皆さんもご飯が終わったところだから、お参りだけ済ませたら、ご挨拶するのよ」

 奥の台所から顔だけのぞかせた郁子の声につられるように、食堂からいくつか顔が突き出された。

 「おお、楸君か! ほう、大きくなったな!」

 「……って、去年も会ったでしょう? この歳になったらもう、背なんか伸びませんって」

 「いやぁ、縦には伸びんでも、横へは幾つになっても大きくなれるのよ、なぁ?」

 一人がそう言って、メタボ気味の腹を叩くと、どっと笑い声が上がる。

 しかし彼はそれを、父親譲りの人好きのする笑みを浮かべて見事にかわした。

 「だとしても、このとおり僕はまだ若いですし、日々忙しくしていますから、多分当分はそういう心配は無いと思いますよ。それに……」

 そして、ちくりと控えめに反撃することも忘れない。


 「そんな事になったら、彼女に幻滅されてしまいますから」

 


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