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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第4章 一線
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現実と虚構の境界線

 (……期待する、なんて。そんな事言われたの、いつ以来だろう?)


 ゲーム機のコントローラーを握り締めながら、真弓は一人呟いた。

 テレビ画面に映る、爽やかお兄さんタイプの男のイラストを眺めながら、下部のウィンドウに流れる文字を眺める。


 『どうして、そんな不安そうな顔をしているの? 君は、とても可愛いのに』


 現実世界の男どもがまず口にしないだろう甘い台詞を、大盤振る舞いしてくれる、画面の向こうの王子様。

 外の世界で、傷つき疲れた心を癒す、真弓にとっては無くてはならないものだ。


 ――現実世界で真弓に投げかけられる言葉の大半が、例えば和だったり、彼の親衛隊の子たちから浴びせられる、刺だらけで毒にまみれたものだったから。

 ……どんなに気にしないようにしていても、やはり心のおりは少しずつ降り積もって、やがて重石と成り果てる。

 外部ときっぱり接触を絶った暗い部屋の中で、作り物の王子様の優しい言葉を求め続けていた。


 けれど、梓馬と出会ってからこっち、用意された彼らの言葉のどれもが、以前のようには心に響いてこなくなった。

 これまでだって、本当に楽しいと思ってゲームをしていた訳ではない。

 以前にも、学園モノなど現実を舞台にしたゲームに対し、つい“こんなの現実ではありえない”と冷めた気持ちを抱くようになった事があった。

 以降、真弓はファンタジー系のゲームにしか手をつけなくなった。

 ……はなから現実的でない設定のゲームなら、割り切って遊べるから。


 だが、ここ一連の出来事で、真弓の現実リアルが、虚構ファンタジーの世界との一線に触れてしまった。

 ――何より。

 真弓の心が、その一線を踏み越えてしまった。


 「……そういえばこの間、秋祭りがあるとか言っていたな?」

 学校帰り、いつもの坂道を彼と並んで歩く。

 「うん、来週の週末、三連休を使って3日間ね。神社の敷地は狭いけど、ここの通り沿いにズラッと出店が並んで、交通規制かけてここ一帯が歩行者天国になるから、それなりに人も集まるんだよね、毎年」

 児童公園を過ぎ、自宅と、その先の柏神社が見えてくる頃。

 「それで、お前は?」

 梓馬からそう問われた。

 「え?」

 「お前は神社のアルバイトなんだろう? 仕事があるのか?」

 「お祭りの間は、毎年来てくれるお手伝いの人が居るし、(ひさぎ)お兄ちゃんも帰ってくるから、私はお休み。……去年も一昨年もその前も、家に居てお祭りには参加しなかったし」

 そう答えた真弓に、

 「ならば今年は、俺と来い」

 と、梓馬は事も無げにそうのたまった。

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