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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第2章 協力者のお仕事
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狩人のお仕事

 花びらの奔流が、彼の体に触れる直前、彼の瞳が赤く光った――かと思えば次の瞬間にはその姿がすうっと溶けて消える。

 寸前まで彼が居た、今は何も無い、ただ闇があるだけのくうを花の刃が切り裂き、奔流が竜巻のように渦を巻いた。


 「俺はこの国の組織ギルドが定めた規則ルールに従い、穏当に生きている。規則ルールに従わぬものを狩る狩人ハンターとして働き、真っ当に報酬を得て食いつないでいる」

 彼の姿の見えない空間に、彼の声だけが響く。

 「しかしお前は、自分で“見守ってきた”と言った学園の生徒を傷つけた。――これは、組織ギルド規則ルールで禁じられた行為だ」

 先程まで彼の姿があった、今は花びらが渦を巻くそこから、空を切る燕のような速さで声が移動していく。


 「――よって、狩人ハンターの権限にてお前を捕らえ、組織ギルドに連行する」


 カカカカカカッ、と、短剣が地面に突き刺さる音――。

 その音が、真弓の耳に届くのと、彼の姿が闇の中から突然、ふわふわと宙に浮く童女の背後に現れたのはほぼ同時だった。

 その彼もまた、正体の無い地面に足を着ける事なく、宙に浮いている。……と言うより飛んでいる、という方が正しいだろう。

 いつの間にか彼の背にはコウモリの皮膜に似た翼が生えていた。


 「――っ! 何をするっ、無礼者!」

 叫ぶ童女の足元、彼が投擲した短剣が6本、刃先が数センチ程くすぶる地面に埋まっている……が……もしや、先ほど埴輪はにわ相手にしてみせたように、彼女をこれで貫くつもりが狙いを外したのだろうか?

 いや、もやもやした闇に透けて見えるあの赤い色は、間違いなく――血だ。


 しかし、彼女の肌はおろか、身に着けた衣さえ、傷つき裂けた様子は皆無。

 では、あれは――?


 じわじわと、刃から地面へ赤い色が染み出していく。――赤い色が、決められた道筋をなぞるように広がっていく。

 6本全ての短剣から広がった赤いラインは正円を描き、その内部に更に正三角形を二つ組み合わせた六角形――籠目を描く。

 それは、まるで……

 (魔法陣、みたいな……)


 ちょうど彼女の足元を中心に描かれたそれが、完成した瞬間、ぽうっ、と青白い燐光を帯びた。

 その光の中に、どすんと音を立てて梅の精が尻餅をついて落ちた。

 「何じゃ、これは! 動けぬぞ!」

 イヤイヤをするように必死に暴れるが、見えない糸で戒められているかのように、光の円の中から出られずにいる。


 「こらっ、このクソ餓鬼ガキめが、さっさと離さぬか!」

 「……こら、随分と口の悪い姫君やなぁ」

 棗が呆れたように呟く。


 ――いつの間にか、数多いた埴輪はにわたちの姿も消え失せていた。


 「それで、怪我は?」

 多種多様な悪態をつく彼女を綺麗にスルーして、梓馬は不機嫌そうな様子で、へたりこんだままの真弓の前に膝をつき、先ほど答えられなかった質問を再び投げかけた。

 答えを待つ僅かな間にも、彼の目は真弓の頭の先から足の先まで、じっと観察するように眺め回す。


 「血の匂いがする。どこを怪我した?」

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