表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第2章 協力者のお仕事
29/76

苦い過去

 「あれを動かしているのも、さっきの小鬼?」

 「お、おお、奴やないけど、奴が言ってたお仲間の雑鬼たちやな。けど……、あいつの言うてた通り、なんや様子がおかしいで」


 言っているそばから、石膏像が拳を振り上げ襲いかかってくる。


 「と、とにかく主の元へ!」

 棗が叫んだ。

 あんなもので頭でも殴られた日には、三途の川を渡るハメになる。

 しかし、真弓の身体能力で逃げ切れるとは思えない。


 真弓はポケットから小瓶を取り出し、迷わず星型マークの飴玉キャンディを口に放り込んだ。

 縁日の、かき氷。そのイチゴシロップのような味が舌に広がるのと同時に、初めて口にしたスペードマークのそれの時のように視界が揺らぎ、先日口にしたハートマークのそれの時と同様、足にかかる自分の体重が消える、あの感覚がいっしょくたにやってくる。


 外した眼鏡を小瓶と一緒にポケットに押し込み、真弓は前の扉に飛びつくように教室を脱出し、一目散に廊下を駆け出した。




 「――あのが、今回の貴方の協力者パートナーなのね?」

 「……俺は、できればそんなもの、雇わずに済ませたかったんだが……な。だが、どうにも場所が学校というのは厄介だ。しかも、ここの校則は相変わらず面倒だし」


 パイプ椅子に腰を下ろし、足を組んだままパーカーのポケットに手を突っ込み、梓馬は窓の外の空を見上げるフリをして、彼女の顔から視線を逸らす。


 「ねえ、梓馬君。あの事故は、貴方のせいばかりじゃないわ。油断していた私も悪かったのよ。……怪我のことも、――婚約の件だって、今ではいい思い出だわ。だから……」

 「――だから、気にするなとでも言いたいのか? それとも、忘れろと?」


 彼女に与えられているというカウンセリングルームに招かれた梓馬は、ほかほかと湯気の立つ緑茶が注がれた湯呑が置かれた折り畳み式の長机を乱暴に叩き、声を荒らげた。

 「誰もがそう言うんだ。――誰にも失敗はある、同じことを繰り返さなければいいんだから、もう忘れろと」

 でも、あの時の光景はそう簡単に忘れられるものではない。

 人一人の人生を狂わせてしまったという、その責任の重さを気にするなと言われても、到底不可能だ。

 梓馬はイライラと椅子から立ち上がり、窓から下を見下ろした。


 「あの、梅の木は――」


 先ほど第二体育館から見えた景色とほぼ同じ、若干角度が変わった風景の中、梓馬の目は、中庭に植えられた一本の梅の古木に引き寄せられた。


 「ああ、あれ? あれはねえ、随分と古い木なのよ。この学校がここに出来た時からあるんですって。昔から、色々伝説があってね……」

 楽しそうに、学校に代々伝わる伝説について語る彼女の説明を聞きながら、ふと視界の端にそれを見つけて慌てて視線を向ける。


 「――! あ、主!」

 真っ先にこちらに気づいた棗が助けを求めて、叫んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=481216526&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ