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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第2章 協力者のお仕事
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音楽室の怪

 ――結局、嵐は予鈴が鳴るまで治まる事は無かった。

 真弓が無事教室に辿り着けたのは、HRホームルーム直前の事、お陰で捜査の再開は昼休みまで持ち越されてしまった。


 「ここが、動画にあった音楽室。他と違って、まだ被害者は出てないんだけど……」

 棗を連れ、共同棟3階の第二音楽室の扉を開ける。

 「すぐそこが、例の第一の事件現場の階段なんやな」

 先日の朝も、一度この前を通ったのを覚えていた棗が言った。

 「……うん。でも、あの時間じゃまだ部屋には鍵がかかっていて、中には入れなかったから」

 本当なら今朝、HRが始まるまでの時間を使って来るつもりだったのだが……。


 昼休みということで、この時間は女子棟も男子棟も、人の行き来が激しい。

 真弓は、素早く棗と共に部屋の中へと滑り込み、静かに扉を閉めた。


 分厚い遮光カーテンで日差しが遮られ、この時間でも薄暗い部屋の中を眺め回す。

 吹奏楽部が主に使っている、楽器が所狭しと並ぶ第一音楽室に対し、この第二音楽室は主に合唱部が使っている。

 合唱ができるよう、空間が広く空けられ、壁際には小さな机のついた特殊なパイプ椅子が畳まれた状態で幾つも並べられている。


 「これが問題のピアノやな?」

 防音設備の整った部屋は、扉を閉めてしまえば完全に外の喧騒から切り離され、しんと静まり返った。

 「……そう、それと、そこの壁に並んでる肖像画も――」

 合唱の伴奏に使われる、グランドピアノの屋根を上げ、突き上げ棒で支えてやりながら、棗と一緒にそれを覗き込む。

 「……どう? 何か分かりそう?」

 緩やかなカーブを描く側板の上に乗り、ピアノの内部を覗き込む棗と、そして真弓の目の前で。


 ――ポロン、と。


 不意に弦の一本をハンマーが叩き、音がひとつ、静かな部屋にこぼれて響いた。

 「――!」

 

 ポロン、ポロン、ポロン……。

 

 あの動画と同じように、ピアノの音が次から次へとこぼれ落ちる。

 何の曲にもなっていない、ただデタラメに音を鳴らしているだけの、滅茶苦茶な旋律。

 だが、真弓が開けたのはピアノの屋根部分だけで、鍵盤部分の蓋は閉まったままだ。

 当然、誰も鍵盤には触れていないのに――?


 「――! 嬢ちゃん、後ろ!」

 突然、棗が鋭く警告を発した。

 「……何? ――って、な、何コレ!」


 この音楽室にまつわる七不思議には、ひとりでに鳴り出すピアノともう一つ、本来表情の変わることのない肖像画に描かれた音楽家たちが不気味に笑う怪現象が含まれる。

 確かに真弓はそう聞いていたし、動画にもその様子はしっかり映っていた。


 ――しかし。

 「けどっ、こんなの聞いてないし、動画にも映ってなかったし!」

 その光景の異様さと、そのあまりの不気味さに、真弓は思わず青ざめた。

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