表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第1章 狩人の協力者
2/76

槐の主従

 みどり丘市おかし桜町さくらまち

 丘陵地帯を切り拓いて造った町の、一番小高い丘の上に建つ、由緒正しい私立高校は、たった今真弓が下ってきたこの坂道を上った先にある。

 ――だからもちろん、その噂の事は真弓もよく知っていた。


 「梅宮学園高等学校、1年A組、安倍真弓あべまゆみ。学園七不思議にまつわる事件の犯人を捕縛するまでの間、俺の協力者パートナーとして調査に協力して欲しい。無論、相応の報酬も支払おう」

 彼は、黙り込んだまま一言も返さない真弓に憤る様子もなく、淡々とそう持ちかけた。


 (これは……クールタイプなのか……それとも天然マイペースタイプ?)


 「この事件、人外のものが関与している疑いがある。任を受けた以上、俺は迅速に事件の調査を行わねばならないが、……一つ、問題がある」

 それはそうだろうな……と、真弓は思った。

 今でこそ、一応共学校となった梅宮学園高等学校――略して“梅高”であるが、かつては格式高いお嬢様学校、つまり女子高だった名残が未だ色濃く残っている。

 “彼”の主な目的が「調査」だと言うなら、確かに厄介なのは間違いない。


 ――さて、どうするべきだろうか?


 ◆ 断固として断る。

 ◆ もう少し様子を窺う。

 ◆ 取り敢えず頷いておく。


 新たに浮かんだ三択を、先の三択と合わせて考える。

 が、しかし残念ながら“逃げる”という選択肢は却下せざるを得ないだろう。

 ……本来であれば、間違いなく一番の良策のはずだが、真弓に限っては最悪のミスチョイスでしかない。

 妙な話にツッコミを入れるとか、断る――という選択肢も、昨今のご時世ではあまり良策とは思えない。

 かと言って、不用意に頷いてしまうのも……。


 結果的に様子を窺いつつ尚も考え込んでいると、彼は四つ折りにされた一枚の白い紙切れを取り出し、真弓に差し出した。

 「もし、受けて貰えるのなら、この書類に必要事項を記入してサインしてくれ」


 「……なぁ、あるじ、もうちょい愛想良うできんのか?」

 殆ど押し付けられるようにそれを渡された、その時。

 突然、彼が身に着けているパーカーのフードから、甲高い声が――

 「その、怯えてもうてるやないか」

 ひょいっと顔を覗かせたのは、ハムスターやリスに似た小動物。

 くりりと大きくつぶらな瞳と、小さく丸い耳。ふさふさの尻尾に、触り心地の良さそうな毛皮。


 「……も、モモンガ? ……が、喋った!?」

 すると、これまで殆ど動くことのなかった彼の表情が、初めて動きらしい動きを見せた。

 「お前、こいつの姿が見えるのか?」

 つい声にのせて漏らしてしまった真弓の驚愕に、彼の方が逆に驚いたような顔で尋ね返してくる。

 「へぇ、ホンマに?」

 彼のフードの中から抜け出て、ちょろちょろっと彼の肩の上へと移動し、真弓を見下ろしながら首を傾げるモモンガ(?)のその仕草はたまらなく愛らしい。


 「わいの名はなつめ。チームえんじゅあるじ、桐生梓馬の従者兼マネージャーを務めてはや45年、こう見えてももう50年近く生きとる、モモンガの精霊や」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=481216526&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ