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君の、隣で。  作者: 彩世 幻夜
第2章 協力者のお仕事
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通学路

 右手に朝日の熱を感じながら、まだ涼しい街中を歩き出した真弓に、ポケットから顔だけ出した棗は首を傾げた。

 「ん、嬢ちゃん、バスは使わんの?」

 真弓の歩くすぐ横の車道を通り過ぎていくバスを見送りながら、その行き先の一つに「梅高」とあるのを見つけたらしい。

 「……バス代、勿体無いから」

 ――ちなみに、梅高を経由する巡回シャトルバスの運賃は一律百円で、定期はない。

 「ほんなら、自転車とかは……。いや、うぅん、この街やともしかして歩く方が楽なんか?」


 ずっとなだらかな上り坂の続く通り。

 丘陵地帯を切り拓いて造ったこの街は、元々坂の多い土地だが、真弓の通う件の梅宮学園高等学校は、街の中でも特に高い丘の上に建っている。

 「……まあ、ね」


 児童公園を過ぎ、交差点を渡った先は、しばらく通り沿いに商店が軒を連ねる商店街になっている。

 ちなみにこの交差点を右折すると市立小学校、左折すると市立中学校があり、勿論どちらも真弓の母校である。

 ここの商店街は、このご時世にもかかわらず、シャッターを閉ざした店も、見慣れたチェーン店の看板もない。

 本当に昔から――店によっては戦前から続く古い個人商店が並んでいる。


 とは言え、文具屋や本屋は朝9時から、その他の商店は10時から、定食屋や寿司屋などは11時開店で、朝も早いこの時間にシャッターを開けているのは、早朝から仕入れに出て、今まさに納品作業の真っ最中である青果店や鮮魚店くらいだ。

 

 「お? 真弓ちゃん、今日はいつにも増して早いじゃないか?」

 顔なじみの魚屋の店主が、軽トラックから下ろした発泡スチロールの箱をいくつも抱えながら、にかっと白い歯を光らせながら笑う。

 「……今日はちょっと、野暮用があって。それで、今日のおすすめは?」

 「おう、やっぱ今の時期なら秋刀魚サンマだろ、って言いたいとこだけど、今日は秋刀魚よりイワシのが良いのが入ってる。あとはアサリ、初鰹も旨いぜ」

 「……なら、鰯とアサリ、取っておいて貰えますか?」

 「あいよっ、毎度有り!」


 「……ところで、島田さんの事なんだけど」

 商品の取り置きを頼んだ真弓は、そこで声を少し低めて尋ねた。

 「やっぱり、まだ……?」

 「――ああ、ありゃダメだね。ったく、綺麗な嫁さん貰って、子供も生まれるって時に突然、腑抜ふぬけるたぁ、甲斐性ナシにも程があるぜ」

 肩をいからせ憤りもあらわに答えてから、彼は同情するように声を落として呟いた。

 「親父さんも嘆いてたけど、やっぱり一番可哀想なのは奥さんだよな。ただでさえ初めての子で色々大変だろうに、その上旦那があんなんじゃなぁ……」

 「……不安にもなりますよね」

 互いにため息を交わす。


 「まあ、慎二しんじの奴は後で一発ぶん殴って気合入れてやるとして、真弓ちゃんの方は大丈夫かい? 最近じゃあこの辺でも噂になってるぜ、梅高の“七不思議事件”って」

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