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宣教師トビアスの日記  作者: 長谷川
宣教師トビアスの日記Ⅳ
15/19

トラモント黄皇国――黄都ソルレカランテ

≪通暦一四五七年 時神の月・天神の日


 エルマの死について、ジャックは私を責めなかった。

 ただ、〝責められて楽になろうと思うな〟とだけ言われた。


 まったくそのとおりだ。

 人間は他人に罪を咎められるより、自分で自分の罪を認め、背負う方がずっとつらい。


 私は今回のことでそれを学んだ。だから私の代わりにジャックがブルーノに殴られたのも、彼が私に与えた罰なのだろうと受け止めた。

 それを逃げずに受け止めることは、ブルーノに直接殴られるよりも恐ろしかった。


 けれどもジャックやブルーノは、意外に冷静だったように思う。ブルーノもジャックを殴りはしたが、それも一発だけで、怒り狂ったり泣き喚いたりはしなかった。


 次に顔を会わせたときには、何事もなかったかのようにこれからの予定を話し合ったりしていた。

 二人は最後まで泣かなかった。エルマは名誉の死を遂げたのだと言っていた。そして仕事柄、仲間の死には慣れているのだとも。


 けれどもそんなことが有り得るのだろうか。人が人の死に〝慣れる〟などということが、有り得るのだろうか。


 もしそんなことが本当に起こり得るなら、それはとても悲しいことなのではないかと思う。

 誰かのために涙を流すこともできないというのは、あまりにつらい。ましてエルマは彼らの大切な仲間であったろうに。


 だから代わりに私が泣くことにした。

 それが償いになるとは思っていない。


 ただ、泣くことしかできなかった。エルマのためにできることも、ジャックやブルーノのためにできることも、それしかなかった。


 ただあまりに泣きすぎたようで、ロクサーナには呆れられた。

 〝多すぎる涙は心の灯を消してしまうぞ〟と彼女は言った。


 〝私の灯は遠い昔に消えてしまったから、お前の灯は消さないで欲しい〟と、彼女は言った。


 そう言えば彼女もまたシェイタンでアルタやマルシオの死に触れたとき、涙一つ見せなかったことを思い出した。


 その話を聞いて、私は図らずも動揺した。

 どうしてそんなことを言うのか、何故ロクサーナの心の灯は消えてしまったのか、理由は尋ねても分からなかった。


 しかし、ジャックたちがエルマの死を〝名誉の死〟と形容した理由。


 それはほどなく明らかになった……。≫






 羽毛がふんだんに使われた腰かけの上で、トビアスはがちがちに固まっていた。


 赤い布張りの腰かけは見るからに高級品で、縁取りや脚は金でできている。目の前にある螺鈿細工を閉じ込めた硝子の卓もまた然りだ。


 おまけにその卓の上には白い陶器のティーカップと蜂蜜入りの小瓶が置かれていた。出された香茶こうちゃには口をつけていないが相当値の張る茶葉が使われているに違いない。

 小瓶になみなみと注がれた蜂蜜もまた同様で、こんな高価なものを「お香茶にどうぞ」などと平気で差し出す神経が分からない。


 北西大陸南部の覇者、トラモント黄皇国(おうこうこく)

 トビアスたちは目下、その都ソルレカランテの中心にいた。


 この〝中心〟というのがただの比喩でないところが肝だ。

 トビアスが現在石像のように固まっているその場所は、都の中心に聳え立つ王城ソルレカランテ城――その応接間に当たる。


「やっぱりのー。あやつら、やけに太陽神シェメッシュを信奉しておるようじゃったから、恐らくそうじゃろうと思っとったけんじょ、案の定黄皇国の人間じゃったんじゃの」


 天井から壁、床まで、隙間なく金色に塗り潰された室内で、ロクサーナはのんびりと壁にかけられた絵画を眺めていた。


 彼女が見つめているのは黄金の竜を従え、瓦礫の山に勝利の旗を打ち立てている青年の絵だ。そこに描かれた青年こそ、この国をエレツエル神領国からの独立に導いた初代黄帝こうていフラヴィオ一世に当たる。


 フラヴィオはトラモント黄皇国の北辺に位置するツァンナーラ竜騎士領の出身であり、同時に太陽神シェメッシュの神子――≪金神刻シェメッシュ・エンブレム≫の継承者でもあった。

 伝説によれば、彼は神領国の圧政に苦しむ民衆の嘆きに応えて立ち上がり、自らの騎竜を駆ってただ一人この地に降り立ったのだという。


 そのフラヴィオの死と共に≪金神刻シェメッシュ・エンブレム≫も失われて久しいが、トラモント黄皇国は今なお当時の栄華を失ってはいなかった。


 フラヴィオの子孫に当たる現黄帝ブリリオ三世はここ数年病に臥していると言うが、この国の隆盛に翳りは見えない。その眩さときたら、大陸の北で細々と露命を繋いでいるトビアスの祖国など一瞬で霞んでしまうほどだ。


「あ、あの、ロクサーナ……私たちはいつまでここでこうしていればいいんでしょうね?」

「さあの。ジャックがここで待てと言ったのじゃから、ひたすら待つしかなかろうもん」

「で、ですが、その……そろそろ胃が捩切れそうなんですが……」

「何じゃ、相変わらず情けにゃーの。向こうから来てたもれと頭を下げてきたのじゃから、堂々としとったら良かろうもん。ほれ、このように雅な茶と蜂蜜などもあるほどに」


 言って、くるりと身を翻したロクサーナは、空いていたトビアスの隣に行儀良く腰を下ろした。

 そうして迷わず蜂蜜を手に取ったかと思うとカップに添えられていた匙を取り、一杯、二杯、三杯――と遠慮の欠片もなく蜂蜜を香茶へ溶かし込んでいく。


「ん」


 と、やがてその蜂蜜を自分の方にも差し出され、トビアスは戦慄した。

 まさかロクサーナはこの黄金色こがねいろの液体が匙にしてたったの五杯で、そこそこ高価な葡萄酒一瓶に匹敵することを知らないのだろうか。


「い、いえ、私は結構……」

「何故じゃ? 蜂蜜をこんなにたんまり堪能できる機会なぞ、そうそうにゃーぞえ」

「わ、分かっててあんなに入れたんですか……!」

「ふん、トラモント人は蜂蜜好きで有名じゃからの。この色が金神シェメッシュにあやかってに縁起が良いからと、王侯貴族は腐るほど蜂蜜を蓄えておる。わーたちが多少失敬したところで咎められるもんでもにゃー。そもじも遠慮せずに飲みんしゃい」

「あ! ああ、あぁああ……!」


 ――何てことを! とトビアスは顔を覆って悲鳴を上げた。痺れを切らしたロクサーナが、トビアスの分の香茶にまでせっせと蜂蜜を溶かし始めたからだ。


 罰当たりな、と声高に叫びたかったが、その嘆きはもはや言葉にならなかった。ロクサーナはことあるごとに、これまでトビアスが守ってきた〝清貧〟という名の城を陥落させようとする。


「ほれ、これで良かろうもん。こんな茶は滅多に飲めんぞえ。早速飲んでみんしゃい」

「い、いや、やめて下さい! こんなものを口にしてしまったら、私は今度こそ神に申し訳が立たなくなります!」

「そこまで厭がられるとかえって飲ませたくなるの。ほれ、ほれ、ほれ」

「ちょっ、ロクサーナ、何するんですか! やめて下さい! 危なっ、零れっ、ああああ!」

「――失礼するよ」


 そのとき俄然、軽快なノックと共に応接間の扉が開かれた。ようやくジャックが戻ったかと思い、トビアスは救われた心地で扉の方を顧みる。


 が、そこに立っていたのはジャックではなかった。

 いたのは立派な口髭を蓄えた壮年の男だ。


 上等な毛皮のマントを羽織り、煌びやかな衣服を身にまとっている時点で、トビアスとは違う世界で生きている人物であることは明白だった。


 その男は腰かけの上でロクサーナにのしかかられているトビアスを見やり、ちょっと首を傾げてみせる。


「失礼。邪魔をしたかね」

「とっ……とんでもございません……!」

「では、私も席に着かせてもらって構わんかな?」

「も、もちろんであります……!」


 緊張のあまり何やら言葉遣いが怪しくなっていたが、トビアスは自力でそれに気がつけるだけの余裕もなかった。

 ようやくロクサーナを自分の上から退かしてきちんと座らせたところで、呆れ顔をしたジャックが入ってくる。


「君がトビアスだな。そちらの彼女はロクサーナといったか」

「は、はい……! こここの度は卑賤の身ながら、おおおお招きに与りまして……!」

「いや、堅苦しい挨拶は抜きにしよう。私はロベルトの上役に当たる者だ。これまでのことはすべて報告を受けている。我が国の事情に無関係の君たちを巻き込む形となってしまい、すまなかったな」


 思いがけず真摯に謝罪され、トビアスは目を丸くした。


 少し意外だったのだ。ジャックの上司だというこの男はかなり身分の高い人物だろうと思えるのに、少しも威張りくさったところがない。トビアスがかつて戦場で目にしたエレツエル神領国の貴族とは大違いだ。


「それで今日、君たちにご足労願った理由はロベルトから聞いていると思うが」

「は、はい。何でも我々が知ってしまったルエダ・デラ・ラソ列侯国の機密について、何かお話があるとか」

「うむ。ときにトビアス。君は裏で国民を騙し、彼らを奴隷として砂王国に売り渡していた列侯国のやり方をどう思うかね?」

「ど、どう、と言いますのは?」

「許せるか、許せないかということだよ」

「そ、そんなもの、許せないに決まっています。私はこれまで列侯国を旅し、飢餓に喘ぐ民衆の嘆きを耳にしてきました。その民衆が唯一の希望と信じて縋った救済策が彼らを裏切るものであったなんて、そのような大罪は神もお許しになるはずがありません」


 トビアスが勢い込んでそう答えると、向かいに座した男は焦茶色の髭をいじりながら面白そうに目を細めた。


 その目に見つめられたトビアスは、何か悪寒のようなものが肌にまとわりつくのを感じる。


 ――自分はこの男に試されているのだろうか。


 だとしても何のために?


「しかしだ、トビアス。こうは考えられんかね。確かに民を欺いた列侯国のやり方は褒められたものではない。だがいかに非道な仕打ちとは言え、あそこで節を屈して同盟を結んでいなければ、列侯国は恐らく砂王国に蹂躙されていた。そうなればこれまで砂王国に売られていった以上の民が戦火に苦しみ、命を落とすことになっただろう。その結果を秤にかけ、より少ない犠牲を選んだ列侯国の選択は、本当に間違っていたと思うか?」

「そ、それは……それは、確かにそうかもしれません。ですが同盟を結ぶ相手は、何も砂王国でなくとも良かったはずです。北には古の大国アマゾーヌ女帝国があり、南には愛神エハヴの神子が建てたもうたアビエス連合国がある。海を渡って砂漠を迂回すれば、このトラモント黄皇国とだって交渉を持つことはできたでしょう。それとも貴国は、列侯国からの同盟の打診をお断りになったのですか?」

「いいや。そもそも我が国と列侯国とは、公の国交というものが途絶えて久しい。ゆえに同盟を乞う使者などは来なかった」

「問題はそこです。列侯国は目先の利に惑わされ、より確実に民を救う道がどこにあるのか探ろうとしなかった。そしてかの国は今もその過ちを改めることなく民を騙し、生命を軽視し、神の道に背くという罪を犯し続けています。卑小ながらも神にお仕えする者として、私にはその罪を見逃すことはできません」


 感情の赴くまま、トビアスはそう断言した。修道士にとってこの世で最も優先されるべきは人の世の法ではない。神の世の法だ。


 一日も早く≪神々の目覚め(エル・シャハル)≫を迎えるために、人々はその法を守り従わねばならない。この世は神々に治められてこそ真の平和と幸福に満ちた世界になるのだ。

 正しき者が祝福され、邪悪なる者が滅ぼされる世界に。


「ではトビアスよ。我が国がこれから列侯国の悪事を暴きたいと申したら、君はそれに手を貸してくれるかね?」

「え?」

「私はそのためにロベルトらを砂虹両国へと向かわせていた。あの二国の背後には何か不穏な匂いがあると、そう思ってな。そして案の定、ロベルトらが持ち帰った真相は悪辣極まるものであった。私はこの真実を世に知らしめたい」

「そうすれば列侯国内で砂虹同盟に対する反発が起きて、あの二国を引き裂く謀が成立するからきゃえ?」

「ろ、ロクサーナ!」


 歯に衣着せず真顔で言い放ったロクサーナを、トビアスは慌てて諫めた。たとえそれが真実だとしても、ものには言い方というものがある。


 それでなくとも相手は大国の要人だ。不用意なことを言って機嫌を損ねれば、トビアスたちの首など簡単に飛びかねない――


 と、トビアスが顔面蒼白になって慌てふためいたのは、ほんの束の間のことだった。


 何故ならロクサーナの発言を聞いた男が、声を上げて笑い出したからだ。


「まあ、我が国の公式回答としてはそういうことになるだろうな。事実、この話を陛下と皇弟殿下にご報告申し上げたところ、そのようにせよとのご叡旨を賜った」

「ほいならそれとは別に〝非公式回答〟があるのきゃえ?」

「ああ。やはり私も列侯国のやり方は腹に据えかねる。国が民を救わぬのなら、民は自らを救う選択をすべきだ。私は列侯国の民にその機会を与えてやりたい。三百年前、エレツエル神領国の圧政に苦しんだ我々の祖先が、決然と立ち上がったときのように」


 だから我らに協力してはくれまいか。まっすぐにそんな言葉を吐く男に、トビアスは茫然と視線を返した。


 恐らくこの男の言葉に嘘はない。彼は本気で列侯国の民を救わんとして言っているのだ。


 その想いが真実であることは、男の紫黒色の瞳が物語っている。


「もちろん、こちらもただでとは言わぬ。ことが成った暁には、この都に光神真教会の聖堂を建てることを許そう。その建築と布教に関しても、できる限りの助力をしたい」

「で、ですが、貴国はシェメッシュ神を国神として崇めておられるのでしょう? その都に光神系教会が聖堂を建てるなど……」

「何、ここはかつて、二十二大神の独占を目論むエレツエル神領国の一部だった土地だ。当時の名残で、城下には様々な神派の教会が共存している。そこに新たな教会が一つ加わる程度のこと、何ほどのこともない。我が国はシェメッシュ神を国神と定めてはいるが、他の神々を蔑ろにしても良いとは考えておらんよ」


 どこまでも朗らかに男は言った。トビアスはその笑顔に意識を吸い込まれそうな気分になった。


 この男を見ていると、この国が大国エレツエルの支配を撥ね除け、今も栄華を保っている理由が分かるような気がする。


「分かりました。そういうことでしたら、喜んで貴国に協力させていただきます。ですが教会の黄皇国進出の件は、上に伺いを立ててから決めさせて下さい。今はとにかく砂虹同盟を何とかしなければ」

「ほう。それはまるで、教会の拡大より砂虹同盟を打倒することの方が重大だと言っているように聞こえるが?」

「もちろんそのつもりで申し上げています。こうしている間にも、列侯国では無辜の民が陰謀によって自由と命を奪われているんです。私は何としてもその陰謀を阻止したい。私の無力ゆえにここまで救えなかった命のためにも……どうか、やらせて下さい」


 アルタ、マルシオ、エルマ。

 目を閉じれば、この手で救えたかもしれない三人の姿が浮かび上がった。


 同時に決して消えない後悔の炎が、今もトビアスの胸を焦がしている。

 これ以上は後悔したくない。それが今トビアスの中にある唯一の想いだった。


 そのために何かできることがあるのなら、自分の全身全霊を賭してやり遂げたい。


「トビアス」

「はい」

「良い名だな。神々の言葉で〝慈悲深きなり〟を意味する言葉だ。君の授洗者なづけおやは、人の本質を見極める力に長けているらしい。その名はよく覚えておこう。――ロベルト」

「はっ」

「あとは万事手筈どおりに。それから、彼らを決して死なせるな。これは厳命だ」

「御意。――皇子殿下の仰せのままに」


 そのとき、胸に手を当てて恭しく一礼したジャックを、トビアスは目を剥いて凝視した。


 何故なら今、ジャックの口から信じられない言葉が飛び出したような気がしたからだ。自分の耳がどうかしたわけでないのなら、彼は確かにこう言った――皇子殿下、と。


 その事実に凍りついていると、男はそんなトビアスを一瞥して笑い、あとは颯爽と部屋を出ていった。


 彼が最後に見せたそれは、悪戯に成功した子供のような笑みだ。


「じゃ……じゃ、じゃ、ジャック、今の方って、まさか……」

「ああ。あの方が俺の直属の上司、トラモント黄皇国次期黄帝の、オルランド・レ・バルダッサーレ様だ」


 部屋を出た男の足音が遠ざかると、ジャックがややげんなりした顔でそう答えた。

 途端に室内にはトビアスの絶叫が谺する。


「な、なな、なななな……!! そ、それならそうと、何で教えてくれないんですか!!」

「しょうがねえだろ、皇子に黙ってろって言われたんだからよ。お前が最後まであの方の正体に気づかなければ皇子の勝ち、途中で気づけば俺の勝ちって賭けをしててな。おかげで俺の大損だ、どうしてくれる」

「仮にも一国の皇子ともあろうお人が、何をやってるんですか!」

「生憎うちの皇子は昔からああいう人でな。つーかお前も教会の話が出た時点で気づけっての……ああ、くそ、俺の老後の貯えが……」


 恐らくその貯えとやらを賭けさせられていたのだろう。ジャックはわりと本気で落ち込んだように肩を落とし、うなだれて額を押さえた。


 この任務が終わったら今度こそ引退して穏やかな暮らしを送るはずだったのに、などとぼやいているところを見ると、どうやらジャックには隠居願望があるらしい。そしてそれを賭けによって皇子に阻止されてしまったようだと推測し、トビアスは何とも言えない心境になった。


 と、ときに先程の絵画をちらりと見やったロクサーナが、どこか満足そうに言う。


「ここはまた良い国になりそうじゃの」

「ああ、そのために俺らがこうして扱き使われてるわけだからな。ったく、いつになったらあの方は俺の願いを聞き入れて下さるんだか……とにかく、こうなったらさっさとこの仕事を片づけて次に行くしかねえ。おら、分かったら出発するぞ。お優しい皇子殿下が、列侯国までの特急便をご用意して下さったからな」


 どこからどう聞いても憎まれ口にしか聞こえない言葉を吐いて、ジャックは不機嫌にトビアスらを促した。

 が、どうも彼は言うほど皇子を恨んでいるわけではないように見える。


 それどころか、むしろ――という感想を抱いて、トビアスは思わず笑った。


 ロクサーナの言うとおり、ここは良い国になりそうだ。


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