第二話 入院
あくる日の午前中、愛子は、太郎を後藤診療所へ連れて行った。熱は続いていたが、比較的機嫌もよく、このまま、様子をみようとのことであった。愛子は、母に聞いたことを後藤に告げた。
「やはり、はしかには、かかってないそうです。母子手帳が、まだおいてありまして、1才のときに、予防注射はしているそうです。」
「そうですか、それでは、太郎君には、母親からの免疫の移行は、期待薄ですね。」
「え、それは、この子が、はしかにかかりやすいということですか。」
「そうです。まだ、6ヶ月なので、ワクチンはうてないし、母体からの免疫もそろそろなくなってきていますし、それに、おかあさんが、はしかにかかっていらっしゃったなら、もう少し、かかりにくいかとは思うんですが。でも、まあ、そう心配なさらずに、みんなが、みんんな、はしかになるわけでもありませんから。」
「はい、わかりました。また、明日、まいります。」
「お大事に。」
そういいながら、後藤は、少し気になっていた。少し、カタル症状が強すぎるのではないか、川崎病の可能性もでてくるし、3日間発熱が続くようなら、血液検査も必要だろうなあ、と考えていた。
しかし、二日後、診療所の電話が鳴った。愛子からだった。
「先生、熱が少し下がり始めました。朝から、37度少しになっています。」
「それは、よかった。でも、どうですか、体とか、顔に、じんましんみたいな赤いぶつぶつはでていませんんか。」
「ないと、思うんですけど、また、時々、注意してみておきます。今日は、行かなくてもいいでしょうか。」
「そうですね、かわったことがあれば、おいでください。お大事に。」
昼休み、後藤は、区役所で、3才児検診で大勢の母子の対応におわれていた。福祉係りの山本さんが、診療所からの電話を取り次いできた。
「何、緊急の用事?」
「先生、赤沢さんところの太郎君が、じんましんみたいなものが出てきたって、お母さんがさっき電話されてきました。」
「何、やっぱり、そうか。すぐに戻る。すぐにつれてくるように言っておいてくれ。」
あとの相談を、他の先生に頼んで、急いで戻り、待っていた赤沢太郎くんをみるなり、
後藤は、
「お母さん。残念ながら、はしかです。今後、どうなるか、経過をみないとなんともいえませんが、月齢が小さいので、入院をしていただきます。すぐに手配をいたします。よろしいですね。聖基督病院でよろしいですね。」
「はい、お願いします。」