【喫茶店】行商人の帰還
短編のほうで上げたのですが本編で使えそうなので短編を消して此方に変えました。
それはお店が定休日の日のことでした。
いつものように店内の掃除を終えフウさんと市場に出かけようとした時です。
「おや、マスター。今日は定休日でしたか」
「あら、行商人さん一年ぶりですか」
「ええ、そうですね。そうだ、マスター!一つ御願いをしてもいいですか?」
「私にできることでしたら喜んでさせてもらいますよ」
「ほんと?だったら…」
私は行商人の彼女の願いを聞き入れ、街にいるとある男の元へ行き言伝を言いました。
「行商人がお逢いしたいそうです。陽が落ちる頃に店に来てほしいそうです」
「…今頃来たんですか?」
話を聞いた男は顔を変え私に言いました。
「では言伝を伝えたので失礼します」
私は何も問わずにその場を離れました。
今から一年前のお話です。
ある行商人が街に商売に来た時に街に住んでいる男に一目ぼれをしました。
男のほうも行商人を好いていました。
行商人は言いました。「私は次の街へ行かなければいけない、私を待っててくれないか?」
男は言いました。「ええ、貴方のためですから待ちましょう」
行商人は翌日から半年間行商の旅を続けました。
男は生活をしながら行商人のことを考え商いについて学びました。
行商人のために贈り物をしようと考え毎日を過ごしました。
あの日から半年が経ちいよいよ今日がその日です。
朝起きて顔を洗い街の入り口で馬車の姿をいち早く見ようと男は立ち続けました。
太陽が真上に来た頃、男は「夕方頃に来るかもしれない、ご飯を食べておこう」と思い家に帰りお腹を満たしてからまた街の入り口に立ち続けました。
旅人や行商人を眺めながら逸る気持ちを落ち着かせ男は待ち続けました。
日が空から落ちる時になっても行商人はくる気配がありません。
男は思いました。「行商の旅は忙しいのかもしれない、遅れてくるのだろう。そうだ、夜に来るんだな」そう思い寒くなってきたので家に戻りご飯を食べ厚着をしてまた街の入り口に立ち続けました。
夜の帳が降り始めあたりが暗くなっても男は待ちました。
眠いのを我慢してこの半年あったことを、行商人に自分の気持ちを伝えようと男は待ち続けました。
雲が湿気を呼び雨が降りました。しかし男は行商人を待ち続けました。凍える体を抱きしめ木に体を預け行商人を待ちました。
寒さが男の体温を奪い眠気もあるのにも関わらず男は待ち続けました。
翌朝のことです。男は自分が分からないうちに意識を無くし街の人が倒れている所を目撃し家に運ばれたようです。
男は言いました。「私は行商人が来るのを待たなければならない」と。
男は重い体を持ち上げ街の入り口に向かい、一歩一歩濡れた土を踏みしめました。




