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プロローグ

1945年8月15日。


世界は終戦を迎えた。


そして、白人に対して宣戦布告を行なった日本は占領され、武器を捨て、自らを9条の縛りにかけた。


そして、半世紀以上が経った今日もその縛りは続いている。


「平和」の名の基に…。


しかし、「平和」とは何なのか?


「平和」は状況を表す言葉であり、「混乱」の対義語である。


また、「戦争」は政治的手段を表す言葉であり、その対義語は「話し合い」である。


「平和」と「戦争」を対義語にする…。


それは、日本人の犯した罪の一つである。



そして…その間違った「平和」を守るため、武器を放棄し、守る盾を無くし、徒にバランスを崩してゆく。


それも、日本人の犯した「罪」である。



これは、その日本人が犯した「罪」を償う物語である。



但し、物語≠現実は浅はかなり…。



日本国東京都新宿区市谷本村町5ー1防衛省庁舎A棟5階大臣室。


プルルルル。プルルルル。


やたらと高級そうな机の上にひっそりと置いてある非常回線の電話が鳴った。


それまでソファーで寝ていた防衛大臣がゆっくりと電話の受話器を取る。


「朝早く申し訳ございません」

年配を思わせるしわれた声が電話口から聞こえる。


「遂に始まったか」


寝起きの大臣は電話の向こう側が目的を話す目に何かを悟ったかのように話した。


「はい

残念ですが・・・」


弱弱しく僚長が静かに話す。


「まぁ良い。

詳しい報告は官邸に送ってくれ。

私は今から首相官邸に向かう。恐らく総理も非常事態宣言の準備をしているだろう」


「小谷大臣。

すみません。

私たちの力不足で・・抑止力になれなかったことをお詫び申し上げます」


「君が謝る事ではない。

左翼に勝てなかった我々政治家の罪だ。

君たちは尖閣以来様々なことをやってくれた。

ありがとう。

これからも頼むぞ」


穏やかな声だった。


「そんな・・もったいないお言葉を・・言っていただけて光栄です。

では、すみません。

こちらも慌ただしくなるので切ります」


そういうと電話口から小さな受話器を置く音とその後の通信が終わった事を示す機械音が耳に木霊した。


小谷も一旦受話器を置くと隣にある電話を取り、ゆっくりとかけた。


「私だ。

至急官邸まで車を出してほしい」


言いたい事だけ言うと受話器を切った。


すぐさま机の上のビジネスバッグを手に取る。


中身を確認し、出掛ける準備を整えた。


ふと時間を見る。


「今」は人々の寝静まる午前5時5分だった。





場所は変わって首相官邸。


こちらもやはり起きたばかりの総理大臣が電話を取っていた。


「やはりか。

ああ。

分かった。

それでは切るぞ」


増渕はそういうと静かに受話器を置いた。


増渕が話していたのは外務省からだ。


たった今、中華人民共和国・北部朝鮮共和国・ロシア連邦を主体とするアジア解放連合諸国5ヵ国から戦線布告を受けたのだ。


勿論戦線布告を受けたのは日本だけではない。


韓国・アメリカ・イギリス・フランスである。


増渕は受話器を一旦置くとまた受話器を取り、秘書に内線電話をかけた


「危機管理センターに向かう。

すぐに車・・嫌、ヘリを出してくれ」


そういうと執務室に向かった。


ワイシャツは既にきている。


夕べの内にシャワーを浴び、すぐさま出発できるようにはなっていた。


戦線布告したのはつい数分前なのに何故ここまで用意が出来たのか?


それは今日が8月15日であるからだ。


戦争を始める時には自国の士気が上がっている方が良いし、また出来れば敵国民の士気を下げたい。


そこで終戦記念時を使うと予想されたのだ。


日本国内では終戦記念日には反戦ムードが高まる一方、中国国内では「日本から独立した日」として士気が上がるのだ。


故に8月15日には警戒してきたのだ。



ワイシャツの上にかけてあったスーツを着て、ノートパソコンの前に立った。


やはりメールが来ている。


防衛省からだ。


内容をヘリのなかで確認しようと思い、増渕はPCをビジネスバッグの中に入れるとすぐさま執務室を出た。


ちなみに、この様にちょくちょくPCを持ち歩いたりしているので、マスコミではよく「サラリーマン総理」と呼ばれることがある。



すぐさま官邸前の池の水が抜かれ、そこからヘリポートが表れた。


遠くからヘリのエンジン音が轟く……。


そして、うっすらと明るんだ空から一機のヘリが舞い降りた。


すぐさま秘書を連れて乗り込む。


増渕の乗った政府専用機は、1分も着陸しないうちに機体はまた薄闇に消えていった。




その後も増渕はPCを立ち上げて、届いたメールの内容を確認していた。


防衛省からの緊急報告が何件もあり、それは今もなを続いている。


アメリカの軍事衛星からのミサイル基地の現状報告や、中国艦隊の動き。


その他もろもろの行動が完結に、簡略化して書かれている。


それらを読み終わった時、緊急用の携帯が鳴り響いた。



緊急地震速報の様な悲鳴が機内に響いた。


普通のヘリコプターであったらエンジン音でかき消され、電話に出る事所か着信を知る事すらできなかっただろう。


しかしそこは政府専用機。

キチンと防音処理してあるのだ。



胸ポケットから携帯を取り出し、急いで電話に出る。


一番来てほしくない部諸からの電話であった。


「私だ」


ゆっくりと出る。


「はい。

こちら防空情報監視センターです。

たった今、相模湾沖や鹿児島沖能登半島沖など6か所から弾道ミサイルと思しき飛翔体が確認されました」


やっぱりこの情報だ。


「核ミサイルか?」


すぐさま聞く。


「いいえ、現時点では判別不能です」


「東京に向いたミサイルはあるか?」


「はい。

弾道計算の結果、それぞれのミサイルの目標は在日米軍基地を狙っているものと思われます。

ただ・・相模湾沖から発射されたものが横須賀か東京か半々で…あっ、他にもミサイルが・・

今、ロストしました」


「ロストだと!

見失ったというのか!?」


「はい。

つい先ほど新たに幾つかの飛翔体が観測され、観測されてからすぐにオブジェクトをロストしました。

ステルス等といったものでは無く、恐らくは小型ミサイルと思しき飛翔体が迎撃したものと思われます」


「そうか。

その近くの海域に艦隊がいたのか。

良かった。

他のミサイルは?」


「はい。

いすれも後4~5分で着弾するものと思います。

やはり防空システムが完成しているわけでは無いので迎撃は難しいです」


2020年完成を目標に計画していた「千代田計画」


莫大な予算を使って計画された千代田計画とは急なミサイル攻撃に対処するために24時間体制で常に監視、迎撃措置を取る事が出来るようなシステムを作る計画である。


議会などに用意周到な根回しを行ってやっと通った法案も遂にはさほど意味の無いものになってしまった。


「そうか・・

とりあえず私の名を使って基地や周辺自治体に避難命令を出してくれ。

今は移動中で出来ん」


「いや、すでに発令されています。

有事法につき我が機関の権限で出させていただきました」


「そうか。

ご苦労。

すまないが1度切るぞ」


そういうと増渕は電話を切った。


「フー」


小さくため息をつく。


非常に好ましく無い状況に落とされてしまった………。


心の中でゆっくりと呟くと眼下に広がる東京の夜景を眺めた。


向かいの席に座っている秘書も状況が読めたらしく、静かに増渕を見つめた。




…一体今までの努力は何だったのだろうか…。


また心の中で呟く。


大学生時代は左翼過激派としてデモを行い、反原発を唱えた。


しかし、恋人が出来てからは一度冷静になり、愛国主義者として右、左を共に嫌う立場になった。


そして国会議員を志願。


見事に当選をし、同じく議員の父親のコネを使って総理の場に立ったのだ。


勿論、右翼議員として叩かれた。


愛国主義者=右翼という間違った固定概念が執着しているこの日本(くに)では無理なしょうがない現象なのだろうか?


しかし、増渕はそれでも必死に熱弁した。


右左どちらの立場にも立たずにしっかりとした意見を持って話している。


そうアピールしたのた。


しかし、マスコミは違った。


本当にマスゴミだった。


関心するほどに話した言葉を省き、組み換える。


ある段落の前提があったからこそ正しい意味で理解出来る段落も前提の段落をカットされ、違う所に貼り付けられた。


また、「間違った、偏向を加えた報道をしないように」と言った途端、「民主主義の報道を否定する右翼」や「報道規制をする議員」等と即座に叩かれた。


所詮はメディアも商売なのだ。


メディアが民営化され、規制の無い好きな報道を出来る様になっているのは、独裁政治等がされていないか国民が監視出来る様にするためである。


しかし、そのメディアも「利益」というフィルターにかけられるのだ。


所詮はメディアも企業。


企業なので情報を操作するのは必然的なのだ。


だから偏向が入るのだ。


そこで逆に増渕はメディアに裏で金を送ったり、防衛省情報局の諜報員でマスコミ幹部の弱みを握ったりした。


するとどうだろうか?


いきなり右翼発言が変わり、とりだたされなくなり、影が薄くなった。


そして、丁度その頃に警察に手を回し芸能界でスキャンダルを発覚させた為、「右翼総理」の名は人々から消えていった。


それから3年と2ヶ月。


増渕はあれこれ必死に働いた。


そして、今日が訪れたのだ。


タンカーが幾つも停泊してある港の向こうを見る。


真夏の太陽が東京を血に染める時刻になった。


いつもと変わらぬ町。


いつもと変わらぬ朝。


いつもとは違う日本。



矛盾なのだろうか?


いや、矛盾はしていない。


何故なら


今、ここにそれが実在するからだ。






機体は徐々に高度を落とし始めた。


ピリリ ピリリ ピリリ


携帯電話の着信音が機内に響く。


秘書が鞄から携帯を取り出すと渡してきた。


「前原官房長官からお電話です」


静かな口調だ。


「あぁ」


そう言うと直ぐ様電話に出る。


「私だ」



その時、北朝鮮工作員が放った地対空誘導弾が、増渕の乗っているヘリに命中した。



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