いじめ同盟2
2005/11/19 14:45
■いじめ同盟■
私は、いじめにあって自殺をした。
私は、いじめた奴等に復讐する事も叶わずに死を選んだ。
許せない許せない許せない許せない許せない
許せない許せない許せない許せない許せない
いじめた奴等を一生許さない。
いじめをしている奴等を一生許さない…。
呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる
呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる
だから、私はいじめられている人達にメールを送り続ける。
助けるために。
いじめた奴等を呪い殺してやる。
復讐したければ、このメールを
いじめた奴等全員に送れ。
復讐が成功したら、貴方も私と同じ道を辿るの…。
そう、遺書を残して―――…。
自殺をするの…………。
1 『いたずらメール』
私、佐藤 美代は、ごく普通の中学3年生。
特徴は高い位置で結んだツインテール。
歩き度にふわふわと動いて尻尾みたいって、よく言われるの。
私のチャームポイントはこれかな。
特技はう〜ん…特に無し…。
好きなことは、メールと、PCでのチャット。
学校は…。
楽しくもなければ嫌でもない、行かなきゃ行けないから行っているだけ。
毎日、毎日同じことの繰り返し…。
なんてつまらない場所。
皆同じ制服に身をつつみ、同じ授業をうける。
なんてくだらない…。
だからってわけでもないけど、私は、ネットの世界に引きずり込まれた。
今の私には、PCや携帯のない生活なんて考えられないほど、引き込まれている。
そうね、これが俗に言う ネット依存症 なのかもしれない。
ネット依存症ってだけなら、まだよかったのかもしれない。
私は、いたずらメールを自分で考え送ることにある種の快感を覚えていた。
しかも、学校の友達にだけ…。
きまって、同じ文章を何人に送りなさいという 文 をつけて送る。
そうやって、私が、学校の友達だけに送ったいたずらメールが、友達から友達と送られていき、いずれは、全国に――…。
なんて空想を描きながら、いたずらメールを考えるわけだ。
我ながら、性格が悪いと思う。
今日も、学校からすぐに帰って、私はPCの電源をいれた。
『新着メール一件』
誰からだろうと思い、カチカチとカーソルを合わせる―…。
2 『チャット』
私と一緒にいたずらメールを作りませんか?
貴女が作っている事は知ってるよ?
ねぇ、多分目的は同じだと思うの…。
もしよかったら、返事を頂戴?
手紙の内容はこうだった。
うーん…、まぁ、悪くない話よね。
二人でいたずらメールを送り出せばそれだけ、読む人も増えるわけだし…。
でも、すぐに返事を出すってのもあれだよね…。
とりあえず、返事は明日に出そう…。
いたずらメールのネタを探しに色々なサイトを探す。
ふ〜ん…。
いじめかぁ――…。
何かいい案うかぶかなぁ〜…。
8月19日20時19分『ミミ』さんが入室しました。
【Kira☆】ミミやほー
【ミミ】きらちんやほー
【Kira☆】今日もいたずらメール進んでるかなぁ?
【ミミ】微妙だよぅ…。きらこそどーなのー?
キラとは、いたずらメール関係のチャットで知り合ったお友達。
こうやって、日々の報告をするわけである。
相手の容姿も年齢もまったく知らないが、学校の友達以上に信頼出来ると私は思っている。
【Kira☆】私は…まあまあって所w
【Kira☆】でも、新しいネタは浮かんだんだーww
【ミミ】いいな〜ずっるーい!
【Kira☆】あはは〜wでも教えないよ〜、完成したら教える〜
【ミミ】楽しみにしてる〜、私も頑張らなくっちゃ!
【ミミ】さて、そんなわけで内容考えるので落ち〜
【Kira☆】うん、お疲れ〜ノジ
【ミミ】ノジ
8月19日23時45分『ミミ』さんが退室しました。
ふー、キラは上手くいってるのかぁ…。
でも、私にはまだ一手残されてるわ。
そう、駄目で元々だもの、あのメールにかけてみよう。
もしかしたら、すんごくいいネタを持ってるかもしれない…。
私の、いたずらメールが全国に広まるかも…
うふふ…――。
あのメールから――…。
こんな大事件が起こってしまうとは…。
嫌…メールが巻き起こしたのか…。
偶然だったのか―……
3 『返信』
いつも通りに学校へ向かい、学校での一番の友達、佐久間 静と雑談をしながら6時間を過ごした。
つまらない授業は居眠りをし、他は近くの友達としゃべっていた。
「起立、注目…」
「礼」
学校が終わると同時に鞄を持ち、教室をさっさと出る。
もちろん、家に帰って一番にすることは、
PCの電源を入れることである。
さて、メールに返事を出さなければ…。
なんて、送ろう……。
とりあえず…。
先日はメールありがとうごさいます…。
カチカチと打ち込む。うん無難な所よね…。
メールに書いてあった通り私もいたずらメールを作っています。
目的が同じかどうかはわかりませんが、一緒に作るという事には賛成です。
これから、お願いします。
こんなんで、いいかな…。
2度程読み返して、返信のボタンを押す――。
ふ〜…。
『新着メール一件』
メールを出してから、数秒だった。
早い…。
こんなに早くメールが帰ってくるなんて…。
少し、怖く思いながらもメールを開いてみる。
カチカチ――。
ありがとう。
これから一緒にがんばろう。
で、いたずらメールの内容なんだけど…。
「いじめ」がいいと思うんだ、いじめられた人が死んでしまってみたいな?
どうだろう?
文章をじっと見つめる、私と同じ考え…。
うん、否定する所は何もない…。
すぐに返事を出そうと思ったけれど…。
あんまり早く返事を出すのも…。
少し時間が空いてから送ろうと決めた。
うん、賛成。
その内容いいと思う。
いじめで自殺…。
う〜ん、それでこのメールを○人に送らなかったら貴方を呪いに行くとか…?
ちょっと芸がなさすぎかなぁ…。
返信っと。
もう、扉は開かれた…。
戻れない…。
戻れないわけじゃない、別に直接的に関わったわけではないもの…。
でも…――。
4 『内容』
名前も知らない相手との数週間に及ぶ、メールのやりとりから、いたずらメールの内容は決まった。
いじめにあった少女が、自殺をし、いじめた奴等を許せなくて仕返しにくるという内容。
■いじめ同盟■
私は、いじめにあって自殺をした。
私は、いじめた奴等に復讐する事も叶わずに死を選んだ。
許せない許せない許せない許せない許せない
許せない許せない許せない許せない許せない
いじめた奴等を一生許さない。
いじめをしている奴等を一生許さない…。
呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる
呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる
だから、私はいじめられている人達にメールを送り続ける。
助けるために。
いじめた奴等を呪い殺してやる。
復讐したければ、このメールを
いじめた奴等全員に送れ。
復讐が成功したら、貴方も私と同じ道を辿るの…。
そう、遺書を残して―――…。
自殺をするの…………。
全て、作られたモノ。
こんな事が起こった事実はない。
そう、全て空想、物語…。
そして、そこから起こる惨劇……。
5 『始まり』
ここからが、本当の始まり…。
私は、クラスの知っているアドレスに片っ端からこのメールを送った。
イ タ ズ ラ
メ ー ル ヲ ―――
ここから、どこまでこのいたずらメールが広まるか…。
私は、知る術はないがわくわくしていた。
いたずらメールを、送ってしまえばそこから先は考案者の立ち入る隙は何一つない。
なのに、わくわくしてしまうのだ、送ってからも…
このいたずらメールの行き先を案じて――…。
私と一緒にこのいたずらメールを考案した人も今頃、知り合いにこのメールを送っているのであろう。
私と、メールで出会った人と、それでれに違う場所で…。
いたずらメールを送り出す。
一人でメールを送りだすよりよっぽど、広い範囲に知れ渡るはず…。
ふふふ――…
私達の作ったメールが…。
全国に……。
それは、少し大げさかもしれないけれど…。
私は、いつもより期待が大きかった。
結果は出ないのは目に見えているけれど…。
それでもいい…。
それが、このいたずらメールの楽しみかた。
メールを送り出すという作業を終えれば、もうお終い…。
後は、思いをはせるだけ……。
思いをはせながら次のいたずらメールを考える――。
ただ、それだけの遊び…。
6 『惨劇』
ここに、美代と、いたずらメールを作った少女とは、まったく関係なく進んでいった物語がある…。
いたずらメールは、美代の思った通りに、広範囲に広まって行った。
いじめを受けた少女、少年はこのメールの通りにいじめを行った奴にメールを送った。
いじめをしていた少女、少年も面白半分で友達にこのメールを送った。
そうやって、数校、数十校、数百校――…。
このいたずらメールは、めぐって行った。
死んだ少女などいるわけもなく、仕返しに行く者なんているわけもなく。
いじめられた者は、こんなメールに頼って…。
と自分の馬鹿さ加減に気付き。
いじめた者と、何の関係のないものは、こんなメールをはなから信じているわけがなく…。
しかし、ある小学校で……。
偶然に偶然が重なって、いじめを行っていたクラスの全員は死に。
その後、いじめられていた少年も遺書を残し、自殺をして死んでしまった…。
そう、このいたずらメールに書いてあった事と同じ事が起きたのだ…。
でも、全て偶然…。
少年は、自分がメールを送ってしまったから、クラスの皆が死んでしまったと思い込み。
疑心暗鬼にとらわれ、その後…。
クラスの皆を自分が殺してしまったと思い……。
自分を責めて…責めて…―――。
何度もメールを読み返して…。
その、時にメールの最後の文に気付いたのである…。
疑心暗鬼に囚われていた、少年はその言葉が頭に入り………。
その、いたずらメールに書かれた通りの死を選んだ…。
美代達の作ったいたずらメールがこんな事を引き起こしたなんて――。
そして、この事は美代達には伝わらなかった…。
いたずらメールが原因で人が一人自殺したとは――…。
美代がこの事を聞けば相当喜んだであろうが…――。
そんな事にはならなかった…。
いつのまにか、このいたずらメールも少しづつ、静まって行き……。
人から人へと、渡っていく事はなくなってしまった……。
美代は、また新しい、いたずらメールを考える――…。
結果の出ない、いたずらメールを。