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B side 2 -3


「……というわけです」


 途中で口を挟む余裕すらなく、ただ聞き入っていた僕は、そこでようやく話が終わっていたことに気が付いた。

「そうか。そういうことか」


 考えられる限り最悪のケースだった。花蘭からんさんの話はおそらく間違いないだろう。そう、彼女が言うのだから間違いない。ゆえに最悪。

 想定範囲というだけでもまだましかもしれない。あの時いった仄火の投げかけが気になった。ただの偶然だとは思う。別にありえないほどのことでもない。


 自然発生と人工発生。両者に違いはあるのか。

 ないのだ。人為的な発生でも結果が同じならば、それは自然発生と同じことだ。


 問題は使い方。


 確かに理論は完成している。南萌みなもも間接的に関わっていることもあるし、不可能ではないはずだが、まだまだ未完成の代物だ。強引に起動式を打ち込んでも、思わぬ事態を誘発するリスクは拭えないし、対象への負荷率が高いのは言うまでもない。

 

 ならば何故、あのシステムは起動しているのだろうか?

 いくら、完璧な式とシステムがあったとしても、適正というものがある。

 

 あれはほんの一握りの人間しか扱うことができない。適合者は知る限り一人、いや二人か。それだけ希少な存在だ。


 しかし現に起動は確認された。花蘭さんが確認した。

 あの場で発動する意味。希少種に負荷をかけてまで必要なことだったのだろうか?

 あるいは、はなから高みの見物を決め込んでいるのだろうか。

 

 死んでも、構わない。いつでも使えるという意思表示。

 明らかな……だ。

 つまり情報がどこからか漏れた?


 いや、それだけはありえない。ありえてはいけないのだ。審査もしている。直接は彼女たちだが僕も確認している。

 スパイがいないものと仮定した場合、可能性として、警告と立場の再確認といったところか。


 表立っては動けない以上は仄火の計画に追加修正する形で、××を××しかないのか。


 だが失敗すれば――はない。切り札は持っていてこそ価値がある。使い切ってはすでに価値が存在しない。

 問題は見極めのタイミングと嘘と情報。


 ここからが正念場といったところか。



「あの、明夢さん?」

 しばらく沈黙していたため、花蘭さんが声をかけてくる。

「ああ、すいません。少し考え事をしていたもので」

「何を考えていたんですか?」

「それは質問の対価としてですか?」


 いえ、ただの興味本位です、と花蘭さんは否定する。

「それは……そうですね、貴女は既に関係者ですから、説明を受ける権利はあります。出来れば聞いてほしくはないんですが、それは僕の私情ですから。夜御飯の後、またここに来ます。説明はその時でよろしいですか?」


「……はい」

 考え込んだ後、花蘭さんはゆっくり首を縦に振った。

「ああ、そうだ。僕が質問したからその代わりに一つ質問してください」

 質問は決まってます? という問いに花蘭さんは肯いた。


『明夢さん。私と初めて出会ったホテル。憶えていますよね』


 それは確認作業。


『私はあなたと出会い、この組織に加入しました。その四日後、火事がありましたよね』


 これは将棋に似ている。


『私はあなたの影響で外界の状況を視ることが出来ませんでした』


 あるいはチェスだろうか。


『幸い、怪我人一人でない火事でしたが』


 その一言一言が王を追い詰める。


『まるであなたは火事が起こることを知っていたかのように思えるんですが』


 これで王手。またはチェック。

 

『その上で訊ねます』


 別に勝敗に執着するつもりはない。先へ進むため。では進むための最善策は。


『明夢さん、あなたはホテルの火災をおこしましたね』


 別に王でもなんでもないので責務は即放棄してもいいが、意味のないことをしても意味なんて本当にないので。「意味の意味」と「無意味の無意味」が同じか違うかを論議するぐらい非生産的だ。それにたとえ同じ状況になったとしても恐らくは僕は同じ選択肢を選ぶだろう。あの状況ではあれが最善だった。全員を守るためにはあれしかなかったのだ。だから。


「ああ、僕がやった」


 素直に僕は認める。

「なぜやったかを訊かないんですか?」


「質問は一つ。そう言う約束ですから。話したいなら聴きますよ。今日の夜にね」

 本当にこの人には敵わない。

「考えときますよ」

 

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