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隣の席の銀髪美少女ギャルは毎日俺の家に遊びに来ていることをクラスの皆には知られたくないらしい  作者: 二十四
一章

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3/15

そんな夜の帰り道

 漫画を読んでいると、気が付けば既に外は暗くなっていた。外が完全に暗くなっていても親からの帰宅を知らせる連絡は無い。


 なぜなら、基本的に俺の親は仕事柄家に帰って来ないのがデフォだからだ。


 そのため、星羅さんが毎日家に遊びに来ていても、誰も咎めはしないし、それ自体は思春期真っ盛りの俺としても普通に有難いのだが……


 十巻の衝撃からもう一度初めから進撃のタイタンを読み込んでいた星羅さんに何となく意味はなく話しかける。


「星羅さんご飯どうする?食べてく?」


 そうは言ったものの、俺の料理のレパートリーはインスタント料理と炒飯。後は焼きそばぐらいのものだ。


「……うーん、今日は帰ろうかなー晩御飯ハンバーグってママ言ってたし」


 相変わらず俺のベッドの上にいる星羅さんはぐーっと伸びをする。伸びをしたせいで慎まし気ながらもしっかりと存在を教えてくる星羅さんの胸から目を逸らす。


 本当にこの人は男の部屋に二人きりであるという意識は無いんだろうか、襲われちゃうぞ?良かったな俺がビビりで。


 体を起こした星羅さんは俺の推しキャラの抱き枕を抱きながら言うが、鯖折のようにしているせいでメリメリと推しの顔が歪んでいく。


 それに、俺の男料理が星羅さんママのハンバーグに勝てるわけもないのは、俺が一番わかっている。


「あー、それならしょうがないか」


「そうそう、オタクくんの炒飯結構好きなんだけどね。いやー流石にハンバーグは帰らざるを得ないねー」


 手櫛を通している星羅さんはお世辞でも嬉しい事を言ってくれる。……いや、この前メイドイン俺の炒飯を美味しそうに食べてくれたあの表情が嘘だと思うと、結構傷ついちゃうから、お世辞じゃないと思いたい。


「じゃあ今日はここら辺でお開きにするかー」


「また今度炒飯つくってね?」


 こてっとその可愛らしい顔を傾けて見上げられると、否応なしに嬉しくなっちゃうものだから、可愛いというのはずるいなぁと思ってしまうのだ。


 馬鹿正直に照れているのを見られるのも恥ずかしいし、誤魔化すように頬を搔いて、


「……そうだな」


 と、言うことしかできなかった。


 星羅さんは、んしょっと小さな掛け声を発し、抱きかかえていた抱き枕をぽいっと放り投げて、スクールバッグを肩に掛けて立ち上がる。


「今日も送ってくれる?」


「そりゃな」


 立ち上がった星羅さんが寝転がったせいで少し乱れた制服をぱたぱたと整えて聞いてきた言葉に俺も頷きを返しながら立ち上がった。


 基本的に星羅さんが家に来ると帰る時には今日みたいにほとんど外は真っ暗になってしまっているし、毎回最寄りの駅まで送るようにしていたので、帰りの準備を済ませた星羅さんに置いて行かれないようにパーカーを羽織って外に出た。


 ×××


 小宅家はそれなりに閑静な住宅街の中にあり、二人揃って外に出ても、俺と星羅さん以外に人影は見当たらず、二人の足音がやけに大きく聞こえた。


「うわ、めっちゃ暗くなっちゃってるじゃん!」


 完全に日が落ちてしまっていてちかちかと点滅する街灯が並んで歩く二人の影が曖昧になる中、星羅さんはそんなことを言いながら俺の少し先を歩く。


 何時まで、と細かく決めていない所為で、今日も思ったよりも遅くまで本を読んでしまっていたので、望月家の夕飯に間に合うのかと少し不安になってしまう。


「……夕飯間に合う?やっぱもうちょっと早く解散するようにしないとなぁ」


 星羅さんの背中越しにそう声を掛けると、星羅さんは後ろでに手を組みながら俺の方へと振り向いて、


「……いいの!オタクくんの家で漫画読む時間大好きだから!」


 と言う。


 そのまま俺の顔を見てくる星羅さんの顔には控え目ながらもしっかりと笑みが浮かんでおり、俺もそんな風に言われては何も言えなくなってしまう。


 別に星羅さんも俺の返事が欲しかったわけでもないようで、先ほどまでのように前を向いて歩いて行く。


「進撃のタイタンってさー、この先も今日読んだみたいなシーン多いの?」


「……ん、まあ?伏線とか結構あるし、俺も初めて読んだときは何度も読み返したよ」


 前を向いたまま聞かれた言葉に、俺は自分が進撃のタイタンを初めて読んだ時の事を思い出しながら返す。


「じゃあ、もっとオタクくんの家で読ませてもらわないとね」


 何時の間にか並んで歩いていた星羅さんに脇腹を肘で突かれる。


「というか、俺は全然良いんだけど、星羅さんの付き合いとかもあるんじゃないの?」


 丁度いいタイミングと思って、少し前から気になっていたことを聞いてみる。


 ここ最近は毎日俺の家で漫画を読んでいるので、それこそ莉々愛さんとか、それ以外の人とも彼女は交友関係が広いので、俺とばっかりというわけにも行かないだろうと思っていたのだ。


 それこそ、俺と星羅さんの関係を知っている人は居ないはずだし、そのおかげで星羅さんと遊びたい人達から目の敵にされる心配はないが、それでも少し気になってしまう。


「誰と一緒に過ごすかは、私が決めるから良いの!」


 星羅さんはそんな俺の女々しい質問をバッサリと切り捨てる。


「そっか~。じゃあ星羅さんと一緒に居られる時間は大事にしないとなぁ」


「そうそう、是非とも大事にしてよー?」


 そりゃこんなに可愛い同級生と一緒に居られる時間を大事にしない訳もない。


 何となく隣り合って駅までの道筋を一緒に歩いてる中でも、俺はどぎまぎとしてしまうのだ。


 別に彼氏彼女なんて関係でもないし、なれるとも思ってはいないが、それでもこの放課後の二人の時間が無くなったら俺はきっと寂しい。


「星羅さんに布教しないといけない作品が一杯あるからね」


「まじか!たのしみだぜ~」


 俺のそんな内心を知ってか知らずか星羅さんはそう言って元気に拳を突き上げる。そんな話をしていると、道路の先に煌々とLEDの光が灯る建物が目に入る。


 勿論その建物とは最寄りの駅で、毎回この辺りで別れるのが俺達のお約束となっている。


 星羅さんも駅が近づいてきたことに気が付いて足を止めた。


「ん、オタクくん、今日もありがとね」


「いえいえ、こちらこそ、今日も楽しかったよ」


「そう?んー……なら嬉しいけど」


 ぽしょりと呟く星羅さん。


 そりゃもう、可愛いし、ご褒美も貰えたし、あ、あと愉悦もね……


「おう。また明日学校でな」


「……学校ではほとんど話さないけどね!」


 耳が痛い話である。


 いや、だって……ねえ?星羅さんはスクールカーストの最上位の人だし、俺なんかと仲良さげに話していたら、虐められちゃいそうじゃん?主に俺が。


「ま、いいやー。明日も一緒に本読もうね!ばいばいっ」


「気を付けて帰ってな~」


「はーい」


 そんな会話を最後に星羅さんは駅の中へと入っていった。


 わざわざ改札まで送るのは少し恥ずかしいし、こんぐらいで良いのだ。今はね。


 完全に姿が見えなくなるまで俺に手を振っていた星羅さんに苦笑しながら俺も手を振り返していた手を下げ呟く。


「……さて、帰るかあ」


 星羅さんにまた作ってね、なんて言われてしまったせいで、俺の炒飯のレベルを上げるためにも今日の晩御飯は炒飯にするかぁ……。なんて考えながらも、二人で歩いてきた道を一人で引き返した。

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