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侯爵令息は、今日も元気に婚約者のストーカーです。【2000文字】

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/22

「生徒会のお仕事、頑張ってくださいませ。ハロルド様」

「ありがとう。家まで送れなくてごめんね、レイチェル」

「いいえ、ではまた明日」

婚約者のレイチェルと別れて、生徒会室に向かった。


「…レイチェルが屋敷に着くまでの動向を見ておけ」

「御意」

侯爵家の隠密部隊に指示を出して、生徒会室に入った。


「はあああああ、今日もレイチェルが可愛かった…っ!!!」

「うるさいぞ〜、副会長〜!」

「生徒会の仕事なんぞあるから一緒に帰れなかったんだぞ!どうしてくれる!?」

「仕事しろ〜」

生徒会長のため息と共に、自分の席につく。

机の上には、幼少期のレイチェルの肖像画と学園入学時のレイチェルの肖像画が飾ってある。

入学の時のものは正式に伯爵家から貰ったもの。

幼少期のものは、侯爵家の者に複製させたもの。

どちらも可愛らしいレイチェルの姿に癒される。


「はああ、レイチェル、会いたい…」

「さっきまで一緒だったんだろう?」

「1分1秒離れるのが惜しい。はあ、仕事するぞ、お前と一緒にいても楽しくない」

「レイチェル嬢の話しか聞かされない身にもなれ」

「レイチェルを名前で呼ぶな。汚れる」

「…へいへい」


渋々書類仕事を進めているうちに、隠密部隊の1人が戻ってきた。

「どうした」

「ご令嬢は屋敷に戻らずに、よく行かれているカフェに寄り道中にございます」

「…誰かと一緒か?」

「いえ、お1人にございます。護衛はいますが」

「…話しかける輩がいたら、全員リストアップして素性も調べろ。引き続き、見張れ」

「御意」

「…おっかねえ〜。婚約者殿がハロルドの素性を知ったら逃げ出すだろうな」

会長が怯えたように、わざとらしく首を竦めた。


「私がレイチェルの前で、粗相でもすると?」

「わかんねえだろ?結婚したら死ぬまで一緒なんだから」

「そうしたら合法的に囲えるんだ、何も問題がない」

「お前が言うと怖えんだって…」


レイチェルとはじめて顔を合わせた日、この世に天使は存在したんだとやけに感動したことを今でも覚えている。


『侯爵家に見合う人間になりますので、ハロルド様、どうぞよろしくお願いします』

わずか8歳の少女が言うには、少々に合わない言葉だったけれど、不自然ではなかった。

その貴族としての意識と、思慮深さと、美しさが、私の心を掴んで離さなかった。


たったその一言だけで、レイチェルに惹かれたわけではない。

会うたびに、初日には見えなかった少女らしい姿が、ギャップに感じた。

その上で、やっぱり歳の割にしっかりしている部分がより一層輝いて見えた。

レイチェルを好きになるのに時間はかからなかった。


好きになればなるほど、レイチェルの全てが知りたくなった。

好きな色、好きな花、好きなドレスの形、好きなお菓子。

レイチェルに教えてもらうたびに、胸の奥の泉に水が溜まっていくようだった。

何を学んだ、何を読んだ、誰と会った、知りたいことは増えていくばかり。

そのうち、レイチェルの口から聞かせてもらえるものが尽きていった。

だから、自分で調べ出した。

交友関係、何時に何をしている、何曜日にどの訪問者が来る、どの男と喋ったか。

レイチェルの記憶にあるかもわからない、些細なことも全部調べ尽くした。

それでも、胸の泉は満杯にならない。

一緒にいる時もいない時も、常にレイチェルのことで頭も心もいっぱいだ。


私にとってレイチェルは全てであり、万物とは比べ物にならない崇高な存在なのだ。


「今日もランチを共にした時に、口にソースがついていたんだ。それをしばらく眺めていたら、ハッと気づいて誤魔化すようにはにかんで、最高だった…。あとで再現スケッチを作らせなくては」

「いや、それは忘れてやれよ…」


書類が残り数枚になってきた、もしかしてカフェに行けるか…?


「婚約者殿が他の男のことが気になりでもしたら、お前は相手を殺してしまいそうだね」

「…殺しはしないさ」

「あれ、それは意外だ」

「…レイチェルの心を繋ぎ止められなかった私が悪いからな」

「へえ〜!?」

「その男のことを調べ上げて、レイチェルの気持ちを揺らしたもの全てに、私自身がなり変わってやるさ」

「…そうくるか」


「さて、私の分は終わったので帰らせてもらうよ」

「こっち手伝ってくれよ」

「嫌だね。…レイチェルは、今どこに?」

「まだカフェにおいでです」

「よし、向かおう。ではな」

会長のなじる声を背に、私はレイチェルの元に急いだ。


「レイチェル!」

「まあ、ハロルド様。偶然ですね」

「隣、いいかな?」

「ふふふ、なんか不思議ですね」

「何がだい?」

「ハロルド様はいつも私の前に現れてくださる、小説の中の王子様みたいです」

「君の王子になれるなら光栄だ」

「それに、いない時も守られているような感覚がするんです、私がハロルド様のことばかり考えているからかしら」

「僕の想いがいつも届いているのかな」

「…それなら、うれしいです」

そう言って、頬を染めてはにかんだ。


ああああ、レイチェルが、今日も可愛い…!!!!



お読みくださりありがとうございました!  毎日投稿53日目。

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