ゲームよりも厳しい現実の世界
朝の6時50分…そこからはマスターの本当の戦いとなる。
その前に魔法乙女達を港に預ける。
「魔法乙女達、昼になったら迎えに行くからね」
「仕事なのね頑張って」
そしてマスターは胸に憂鬱を抱えながら階段をおりる。
マスターは今現在、グループホームと言う障害者施設にいて、少し特殊な生活を送っている。
食堂に入るや「おはようございます」と堅苦しい挨拶を叫んだ。
叫ぶと言うくらい声を出さないとならずASD(自閉スペクトラム症)を抱えているマスターにはそれだけで少しの気力を要する。
料理を担当している男性がいるが挨拶、様々な気配りが欠けると罵声が飛んでくる。
マスターも初期の頃はかなりやられたので気を張って生活する必要がある。
また、ルームメイトがいるが静かに食べたいと言う時にやたら話しかけてくる老年の男性がいる。
マスターは適当に返事を返す。
あと水筒の準備、氷を入れて茶を淹れる。この作業だがそれも慣れてくると逆にしんどい作業になる。
また食事を済ませてからも大きなイベントが待ち構えている。トイレ争奪戦だ。
先ほどマスターに話しかけてきた男がやたらトイレが長く、30分近くは入っている事が多い。
(トイレはお前の部屋か!?部屋は別に与えられているだろうがっ!)マスターは心の中で罵る。
その男の事を影では「トイレの花男」と名付けている。
そして出かける時こそが本当の地獄だ。
毎日自転車通勤だが片道で5キロはあり、半分過ぎるともう市外となる。
つまりどう言うことかと言うとマスターは障害者手帳関連で貰えるバス無料券を持ってるが市外となった時点でバスの乗車の際に支払うお金が発生してしまうのだ。
去年まではそれでもなんとかなったが物価が一気に高騰し、自転車通勤を余儀なくされた。
「ぜえはあぜえはあ…くそ重いなこの自転車っ」マスターは必死に自転車を漕ぐがスイスイーと女性の自転車が通り過ぎる。
「なんだ僕の自転車はあの女の人より遅いと言うのか!?」
見た所女性はそんなに運動しているようには見えないしスポーツウーマンにも見えない。しかしマスターよりも遥かに自転車を速く漕いでいたのだ。
悔しくなりマスターは自転車から尻を浮かし、必死にスピードをあげる。
そうするとなんとか抜けるが自分の体力不足をまざまざと見せつけられるようでそれがまた歯痒い。
そして勤務、障害者雇用として従事しているマスターの仕事はあくまで職場の清掃だが職場が綺麗でも清掃のポーズは取るように意識はしている。
そうしないと注意を受けるからだ。
注意を受けた時はかなりストレスにくるので疲れてたとしても昼が来るまでは腰を降ろす事も出来ない。
「トイレットペーパーがもう無いな」「あ、水やり忘れた」「ポットに湯を淹れなきゃ」掃除をしながらもこれらの補填も行う。
そして昼。
「はあ〜〜〜…」マスターはカロリーメイトだけ食べるとゴロンと大の字に寝転んだ。
朝から30分もの自転車漕ぎ、昼までは清掃で一気に疲れたマスターは1時間はぐっすりタイムとなる。
勿論その間に魔法乙女達も迎えにいく。
ついでに図書館に行きたいと言い出した(と言うよりマスター自身がEPを貯めたい)ので図書館にも預ける。
そして昼休み後も清掃を続ける。
(時間を伸ばして仕事して欲しいと店長は言ってたが今の僕には無理だな)マスターは疲れた体をなんとか動かしながら思った。
知的障害の他に軽い身体障害もあるかもしれない。
思えばマスターは幼少から運動は出来ず、競争も常にビリだった。
勉強もまるっきりで小さい頃から障害を疑われていた。
しかしマスターはそれを反発。そして大人になるまで一般枠でもがき続けた。
子供の時から福祉に入れてたら多少は違った人生を歩めてたかもしれない。
とは言え波瀾万丈の日々は無駄にはなっていない。いや、無駄にしないためにもエッセイにも書いた。
「さて549に行こう!」
そしてマスターは今日も549に現実逃避しに向かう。




