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まるで隔てられていないかのように
衝立のこちら側で、一匹をつまみ上げる。
向こう側の個体が、同じように触角を引き、脚を縮める。
逆も試した。
向こう側の個体に近づく。
こちら側の個体が反応する。
衝立は、行動に対して無意味だった。
この時点で、私はノートには
“まるで隔てられていないかのように”
と書かれている。
これは比喩ではない。
感覚的な印象でもない。
行動の統計的分布が、衝立の有無によって変化しなかったという意味である。
彼らは、何を手がかりに反応しているのだろうか。
本格的に検証を始めることにした。




