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飼育環境と通常行動
フツウゾウムシは、観賞用としてはまったく向いていない昆虫である。
昼間の大半は動かず、餌への反応も鈍い。テラリウムの中にいても、石ころと区別がつかない時間のほうが長い。
飼育環境は、ごく単純なものだ。
プラスチック製の小型ケースに、園芸用の腐葉土を薄く敷き、乾燥を防ぐために一日一度霧吹きを行う(Fig.2)。
餌は、採集地周辺で確認された植物の葉を与えていた。
特別な管理はしていない。
温度も湿度も、厳密に制御していたわけではない。
この点は、後から振り返ると少し後悔している。だが当時の私は、あくまで「趣味の飼育」をしているつもりだった。
行動様式も、文献に記載されている通りだった。
刺激がなければほとんど動かず、外部からの接触に対しては、脚を折りたたむか、ゆっくりと体を傾ける。
擬死と呼ぶほど劇的な反応ではない。
要するに、退屈な昆虫である。
少なくとも、観察記録を書き残すほどの対象ではなかった。
Fig.2 フツウゾウムシの飼育環境




