観察対象の紹介――Curculioordinarius
界:Animalia
門:Arthropoda
綱:Insecta
目:Coleoptera(甲虫目)
科:Curculionidae(ゾウムシ科)
属:Curculio
種:Curculio ordinarius Linnaeus, 1758
本稿で扱う対象は、新種ではない。
分類学的には、18世紀以降の文献に散発的に登場する、ごくありふれたゾウムシの一種で、主として赤道付近の低緯度地域に分布することが知られている。
熱帯から亜熱帯にかけて広く生息しており、日本国内においても、九州南部から沖縄にかけての地域で見つけることができる。
種小名ordinariusは、「平凡な」「特別でない」といった意味を持つラテン語に由来する。
実際、本種は形態的にも生態的にも、同属の他種と大きく異なる点を持たないとされてきた(Fig.1)。
和名についても、統一された呼称は存在しない。
地方図鑑や採集記録では、「ゾウムシの一種」「小型ゾウムシ類」などと曖昧に扱われている例が多い。
本稿では便宜的に、この昆虫を「フツウゾウムシ」と呼ぶことにする。
専門的には不正確であることは承知しているが、少なくとも本研究の出発点――すなわち、「誰も真剣に見てこなかった」という位置づけを表すには、これ以上適切な名称も思いつかなかった。
重要なのは、この昆虫が新奇だから注目したのではないという点である。
むしろ、あまりにも普通で、説明し尽くされた存在だと思われていたからこそ、その行動に含まれていた異常が、長いあいだ見過ごされてきたのだと考えている。
Fig.1 観察対象Curculioordinarius




