新たな仮説
もし、この構造が、三次元空間の内部で完結していないのだとしたら。
私が観測できないのは、単に感覚や装置の問題ではなく、観測の前提となる空間そのものが異なっている可能性がある。
そういえば、高次元空間を経由する物理現象が、理論上は想定されると聞いたことがある。
たとえば、重力に関するいくつかの仮説では、その担い手とされる粒子が、余剰次元に漏れ出す可能性が指摘されている。
それが正しいかどうかは別として、少なくとも、影響は確かに存在するにもかかわらず、三次元的には説明しきれない現象が、物理学の内部で真剣に議論されている。
この考えを追っていくうちに、私は自分の思考が少し先走り始めているかもしれないと感じた。
行き詰まっている状況で浮かんだ仮説に、私は冷静な判断ができているだろうか。
この思考の向きが、単なる混乱や思い込みによるものではないか、自分でも確かめる必要があった。
高次元空間を介した物理的相互作用という仮説は、少なくとも、既存の理論の延長線上にあり、「どのように確かめるか」を考える余地が残されている。
そう考えると、テレパシーや超能力といった語を持ち出すよりも、よほど筋が通っているように思えた。
まだ自分が正気を保てていると判断し、この仮説に基づいて、改めて観察と検証を進めることにした。




