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始めに
ある昆虫の行動を観察していて、私は驚くべき結論に至った。
それは、できる限り合理的に積み上げた結果であり、観察記録としては首尾一貫している。少なくとも、ノートの上ではそうだ。
それでも、この文章を書き始めるにあたって、私は一抹の不安を拭えずにいる。
――もしかすると、自分の頭がおかしくなったのではないか。
あるいは、あまりにも取るに足らない対象を、必要以上に深読みしてしまったのではないか。
対象は、どこにでもいる昆虫だ。
図鑑をめくっても、解説はせいぜい数行で終わる。研究史を辿ろうにも、まとまった論文はほとんど見当たらない。害虫としても重要ではなく、保護の対象でもない。
「普通すぎる」ことが、彼らの最大の特徴だった。
それでも、私は彼らを飼育していた。
理由は単純で、理屈にもならない。
ただ、形が気に入っていたのだ。
この記録は、偶然から始まった。
そして、偶然で片づけるには、あまりにも多くの再現性を伴ってしまった。




