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金色に瞳が染まる時、私の従者は世界を変える  作者: 727


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第32話 永遠の誓い

獣族の里を背にし、アリア、シルヴァ、そしてシスティアの三人はオルトへ戻る道を歩いていた。


「この剣に付与された魔法のおかげで里の異変に気付いたのか」


シルヴァはアリアが里に駆けつけた理由を聞き、鈍い紫黒に煌めく剣を手に取って見つめる。


「具体的にはわからなかったけど、危機的な何かが起こってるっていうのをこの小剣が教えてくれたわ」


アリアも同様に、ヴァリエの遺跡で手に入れた小剣を手に持って空に翳していた。


「ということは逆も然りなんだな。離れたところでリアに何かがあったら、俺のこの剣がそれを教えてくれる」

「多分ね」

「まぁ悪くない効果だな。際立って役に立つということではないが、俺としては助かる」

「でも、私があのタイミングで戻らなければ、シルヴァはあんな怪我しなかったかもしれないと思うと申し訳ないわ」


もし自分が里に戻ることをためらっていたらという可能性を考え、胸が締め付けられる。


「いいや、どの道あいつらはリアの命を狙って動き出そうとしていたところだったから、俺の手の届く場所で起きたことだったのは不幸中の幸いだ」


シルヴァはそう言ってアリアの頭を優しく撫でる。

そんな二人のシリアスな空気お構いなしに、飛び込んでくる者がいた。


「リアたん! ヴァー君!」


システィアは道の真ん中で突然、アリアとシルヴァの間に割り込み、遠慮なく二人の腕に組み付いた。

里長という重責から解放されたシスティアは、まるで(たが)が外れたかのように浮かれていた。


里を離れることに全く未練がないどころか、むしろ待ち望んでいたかのような開放感に満ち溢れている。里長を辞める方法を探していたのではないか、と疑うほどだ。


「これでリアたんとヴァー君をずぅっと見ていられるわぁ。はぁ〜幸せすぎる〜」

「はぁ……里でのあんたはどこに行っちまったんだよ」


シルヴァは疲れたようなため息を漏らす横でシスティアは唐突にシルヴァの腕を組み直し、思い切り鼻を近づけて匂いを嗅ぐと、相変わらず恍惚の表情を浮かべたが、違和感に首を傾げる。


「あれ、ヴァー君、少し匂いが変わったわね。もっと、野生味溢れる強くて鋭い匂いだったのに、今はなんだか、まろやかで、上品で……」

「あの魔法の影響かしら」


アリアが静かに答えると、システィアの瞳が輝いた。


「じゃあこの匂いはリアたんとヴァー君の二人の愛が混じり合った匂いなのね! リアたんがヴァー君に魔法を使った瞬間も壁画そのものって感じだったし、もう最っ高っ! この匂いがあの瞬間と繋がってるんだと思うと興奮がっ、はぁんっ!」


システィアは興奮のあまり身を捩り、シルヴァの腕に顔を擦り付け、その様子に、シルヴァは心底呆れた顔だ。


「本当にコイツも連れて行くのか?」

「シスはね、里に戻った直後、あの襲撃者がシルヴァを刺した時に即座に抵抗を試みてくれた。私はあなたのことで頭がいっぱいだったけど、ちゃんとその迷いない姿は見えていたし、信頼できるって思ったの。だからシスも仲間よ、諦めなさい」


アリアの冷静な判断と仲間認定に、シルヴァは深くため息を吐くしかなかった。

そして昨日の襲撃者を思い返し、真顔に戻る。


真実の探求者(アポカリプス)か……」

「何なのかしら、そいつら」


訝しげに呟くアリアに、斥候としてイースト・ユニオンで活躍していたシスティアが、ひとつの情報をもたらした。


「聞いたことあるわ。邪神イグニールを崇拝する連中だって噂よ。世界を破滅に導くことを目的としているらしいけど、その割には人殺しはしてないみたい」

「シルヴァは殺されかけたわよ」


アリアの瞳が鋭くなる。


「奴らの野望に俺の力が必要だったらしい。俺が断ったら、命の取り合いになった」


シルヴァの言葉を聞き、シルヴァが傷つけられた怒りを静かに燃やしながら、アリアは碧眼に強い意志の光を灯す。


「真実の探求者を名乗るなんて、ふざけた連中ね。どっちが真実の探求者か、思い知らせてやるわ」


アリアは前を向き、その歩みを速めた。

現代の地図にはない古代の街の謎は解けた。街並みの遺跡がろくに残っていないのは街自体はここにはなかったから。

ただ、新たな謎が生まれた。

シルヴァを狙い、世界を混乱に陥れようとする組織“真実の探求者(アポカリプス)”の正体を突き止める必要がある。


「あいつらは俺が生きていると知ればまた必ず来る。その時に思い知らせてやればいい。俺ももうやられない」


シルヴァの表情には強い覚悟が宿っていた。彼の心には、アリアを危険に晒したことへの、燃えるような悔恨が残っている。真実の探求者(アポカリプス)があのまま退いたからよいものの、あのままアリアを狙っていたとしたら、今こうして無事でいられたか定かではない。


「……あんな怪我、二度と許さないからね」

「あぁ。心配かけた。俺は二度とリアを残して逝くことはないと誓うよ」

「私はハイエルフよ。その誓い、守れないじゃない」

「アンデッドになってでもお前のそばにいていいなら、永遠にそばにいてみせるさ」


その言葉は、もはや護衛としての誓いを超え、命――いや、魂すらも懸けた愛の告白に近かった。


「……ばかっ」


アリアは赤くなった顔で振り返り、シルヴァの腕を軽く叩いた。ハイエルフである彼女にとって、永遠の時を共有するという誓いは、何よりも重い愛の言葉だった。


「なによ……?」


システィアに目を向ければ、鼻息荒く興奮した目で二人を凝視している。


「んーんー。キュン死しそうになっちゃっただけよん」


システィアは二人のやり取りを見て、満足そうに鼻歌を歌う。二人の関係性を、彼女は誰よりも楽しんでいるようだった。


「それにしても、あの壁画のかすれてろくに見れなかった三枚目……気になるわ。完全版が見たいところね」


アリアはシスティアの発言を聞き流すように、思考を巡らせ話題を変える。

古代書『転換転送の理』に残された断片的な情報と、壁画のわずかなイメージを繋ぎ合わせる。


「ん〜どうかしら。どこかお目当てのところはあるの?」

「“スプレンドール”……あの原生魔力を転送していた先の街の名前……これだけが頼りって感じ」

「魔力をわざわざ送らないといけない場所ってことなのかしら?」


システィアの何気ない疑問に、アリアは引っ掛かりを感じた。

魔力を送る場所――つまり、その場所は魔力が枯渇している場所ではないか。

エオス大陸のどこか、もしくはエオス大陸の外に、文明を維持するために魔力を必要とするほど枯渇したエリアが存在するのではないか。

屋敷に置いてきた残りの古代書に何かヒントがあるかもしれない。

アリアの脳裏に、新たな旅の目標が立ち上がる。


「エオス大陸の情報を徹底的に洗う必要があるわね。スプレンドールと真実の探求者(アポカリプス)。念のためオルトでひと通り情報収集してからヴァリエに戻るわよ。この世界の真実の探求者は、私達、極光よ」


そして三人はオルトへの帰途に着く。

システィアの明るい笑い声とシルヴァの疲れたような溜め息、アリアの揺るぎない決意が古き森に響いた。




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