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金色に瞳が染まる時、私の従者は世界を変える  作者: 727


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第28話 聖域の意味

アリアとシスティアは、再び古き森の奥深くへと踏み入った。

結界が破壊された森は、未だに原生魔力の荒々しい奔流に満たされている。祭壇に近づくにつれ、その濃度は上昇していった。

二人の肌にはピリピリとした痛みが生じ、呼吸も乱れる。


「無茶はしない、保護魔法をかけるわよ」


アリアは立ち止まり、冷静に魔力を集中させた。彼女が二人を覆う保護魔法を即座に構築した瞬間、原生魔力の猛烈な圧力を全く感じなくなった。


「凄いわ、リアたん」

「これくらい朝飯前よ」


システィアは心底感嘆の声を漏らし、アリアへの信仰にも似た信頼をさらに深めた。

原生魔力の奔流の中心にある祠のような建物に到達すると、確かにそこには祭壇と、その祭壇を囲うように三つの壁画が並んでいた。


「ねっ。祭壇と壁画しかないでしょ?」


どれも劣化が進んでおり霞んではいるが、壁画には対立する二柱の神――ルミナスとイグニールと、ルミナスの前でイグニールの闇の力に貫かれている大きな狼の姿が描かれており、別の壁画では倒れる狼の前で祈りを捧げるルミナスの姿と、狼が太陽のような光を放っている姿が描かれている。最後の壁画は、霞み過ぎて判別するのは難しかった。


しかし、この遺跡が少なからず、神話に連なる何かを表したかったのだということがわかる。

そしてそれは原生魔力の他はあり得ないだろう。


壁画の前には祭壇があり、その台座の中心には破壊されている魔石らしきものが散乱していた。


「石だけ……術式はないのかしら」


魔石のかけらを拾ってみても、魔石自体に術式が刻まれているわけでもなさそうだ。

祭壇を調べていると、魔力をあからさまに寄せ付けていない突起物があった。


「こういうのは大抵、ここに魔力を流せば――」


仕掛けが発動し、台座の前面部分が大きな音を立ててスライドしていく。

地下に向かう階段が出現した。


「えぇ……アタシ、プロの斥候を自負してるのに今までこれに気付けなかったの?」

「仕方ないわよ、魔法の仕掛けなんだから」


そう励ましの言葉を掛けるも、システィアは悔しそうで不満な表情だ。しかし、それもすぐに決意を込めた顔になる。


「鍛え直さなくちゃ」

「いい心がけよ」


そう言いながら、目の前の階段へと足を踏み出して地下へと降りていくと、空気ががらりと変わった。

原生魔力で満ちていたはずの先ほどの空気が嘘のように、普段の空気感に変わっている。

その謎の答えは、階段を降りた先に広がっていた。


「なるほど。地下に術式があって、祭壇を通して森に効果を拡散していたのね」


地下には小規模な空間が階段を降りた先に一つだけあるだけだったが、その床や壁には術式が刻まれており、この空間だけ魔力が安定していた。

そして中央には祭壇と同じように台座があり、一冊の書物が置かれていた。


「古代書だわ……“転換転送の理”?」


古代書を手に取り、その表紙に書いてある文字を読み上げると、ペラペラと中を見始める。

アリアの知識欲が刺激され、システィアの存在すら忘れて古代書の読書にのめり込む。


「これは――」

「何かわかった?」


熱の籠る目で古代書を凝視しているアリアの背後からシスティアはひょっこりと首をのぞかせる。

やっと終わったかという空気を醸し出すシスティアにアリアは「あ、ごめんね」と詫びると、書いてあったことをシスティアに説明した。


「この空間は、原生魔力を転換して、別の場所にその魔力を転送するためのものみたい」

「転送?」


システィアは首を傾げる。


「この場所には、古代の街はなかったということよ。あくまでもここは、古代の街に、転換した原生魔力のエネルギーを転送するための施設だった。今は受け取り側が機能してないからか、動いてないけど」

「そんな……じゃあ神獣の加護を受けた街というのは――」

「この魔力の転送先の街のことでしょうね」

「それはどこなの?」

「街の名前は“スプレンドール”、でも、それがどこにあったのかまではわからないわ」


システィアは自分達獣族が守り続けた神獣の加護を受けた街の遺跡がここにはなかったという事実に衝撃を受ける。


「アタシ達が守っていたのは……ただの魔力施設だったってこと?」


愕然と項垂れるシスティアだったが、アリアは一つの吉報を授けた。


「いいえ、ここは壁画の通り、本当にルミナスの祝福があった場所みたい。古代書にまでそう書かれているのだから、信憑性は高いんじゃない?」


その言葉で、システィアは救われたように安堵の表情を見せた。

そしてそれはつまり、やはりこの場所、ルミナスに関わる原生魔力だからこそ、シルヴァに異変が起きたということだ。


「ルミナスの神獣……あなたはシルヴァに何をさせたいの……?」


そう呟いた刹那、アリアの腰に差していた小剣が、突如として何かへの共鳴反応を示した。


「っ!?」


アリアは即座に腰の剣に手を当てる。

その剣は、ヴァリエの呪われたリッチの遺跡で手に入れたシルヴァの神鋼の中剣と対になっていた剣だ。

この剣に付与されていた魔法が何かはわかっていなかったが、シルヴァの持つ中剣に何かしらの出来事が起こっていることを示しているのだとアリアはすぐに察する。


「シス! 里で何かあったわ!」


アリアは古代書を抱え、緊張で顔をこわばらせたシスティアと共に、急いで地下から地上へ駆け戻った。

シルヴァとの約束である四半日の制限が迫る中、里で発生したであろう異変は、最悪の事態を予感させた。





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