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金色に瞳が染まる時、私の従者は世界を変える  作者: 727


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第27話 古き森の謎

古き森の異様な環境とシルヴァの暴走を目の当たりにしたアリアは、システィアに里へ案内するよう指示をする。

システィアは妖艶な笑みを浮かべながら、二人を先導するが、その瞳の奥には何を秘めているのかわからない。


森の出口へと戻り、システィアが特定の岩に触れると、先ほどの警告魔法が再起動した。その魔力的な警告を背に、一行は森を後にする。


少し歩いた先には獣道すらないただの茂みがあるだけだったが、システィアは意に介さず進んでいく。

茂みは幻影のようでシスティアの動きを阻害することはなかった。


アリアは獣族が繊細な魔法を扱っていることに新鮮な驚きを覚えていた。獣族といえば、魔法を使えなくはないがどちらかと言えば身体能力を重視しているため、魔法自体は大味のものが多い傾向にあるからだ。


興味深そうに幻影魔法を見ていたからか、その考えもシスティアに読まれていたらしく、「あとでね」と釘をさされる。


進んだ先には外界の喧騒とは無縁の、素朴だが清潔で規律ある集落のようなものが見えた。これがシスティアの里なのだろう。


しかし、外部の人間の登場に、里人たちは警戒の色を隠さない。

システィアはそんな集落の中心に向かって歩き出した瞬間、纏う空気を一変させた。


「皆、注目せよ。獣令である! 彼らは私の大切な客だ、失礼な振る舞いは許さん。この場にいない者達にもよく伝えておくように」


その声は低く響き渡り、一切の媚態や甘えがない。


「え、どしたの急に」


システィアの人格が変わった様子に、アリアもシルヴァも互いの目を合わせる。

その威厳のある姿勢には、システィアの変態さは微塵も感じられない。

だが、その様子は里人達にとっては違和感などないようで、みな何かしらの返事をして、里の方々へと散っていく。

里長の獣令が出たぞと言いながら。


「長……ですって?」

「システィアが?」

「ふふっ、そゆこと〜」


二人を振り返り、システィアは口元に指を立ててしたり顔だ。

彼女は里人たちに向かって毅然とした態度で指示を出し、アリアとシルヴァを、里長としての威厳をもって出迎えた。


「――お待たせいたしました、シルヴァ様、アリア様。私の家へご案内します。お話はそこで」


妖艶さの一切を消し去った、凛とした里長として二人の前に膝をつくシスティアの姿に、アリアとシルヴァは激しい衝撃を受けた。


「あんた……一体誰なのよ」


アリアが戸惑いを隠せない。


「リアたんひど〜い」


システィアは二人だけに聞こえる声で舌をペロリと出しながら、アリア達にウィンクする。

合わせろ、ということだとアリアは理解した。


「はぁ……歓迎に感謝を。システィア様」


アリアが外向きの振る舞いを始めたことでシルヴァも察し、アリアの言葉に合わせて礼をする。

システィアは満足そうに立ち上がると、二人を長たる自身の家へと案内した。


「あの突飛な行動は、里長としての決定権を持つ故の行動だったのね」


アリアは結界破壊という無謀な行為の裏に、確固たる責任と権威があったことを理解した。


「まぁ〜え〜と……そゆことん」


歯切れ悪く相槌を打つシスティアに違和感を覚えながら、アリアは早速本題に移ろうと森について問いただした。


システィアからは壁画と祭壇があること以外は、あの森は『神獣の加護を受けた街があった場所』として代々言い伝えられているということしか聞き出せない。

しかし、それは掘り下げる価値のある言葉だった。


「神獣の加護を受けた街……でも、あの森には街並みの痕跡なんてなかった」

「えぇ。でも、あったのよ。その証拠に、この里では魔道具が色々なところで使われてる。里の入り口の幻影魔法もそうなのよ。それに、アタシ達に伝わる伝承は古代魔法王国の民から伝えられたとされているわ」

「伝承?」


アリアの疑問に応えるように笑みを浮かべると、システィアは続ける。


「あの場所は『神々の戦において、イグニールの攻撃からルミナスを庇って倒れた神獣を、ルミナスが供養した場所』。無尽蔵な魔力が生まれるのは、ルミナスの愛に今も神獣が応えようとしているため、とね」


アリアは手を組み、その神話的解釈を冷静に分析する。


「無尽蔵な魔力、それが原生魔力ね。そしてその濃度から、通常近寄れない地域に獣族だけが近づけた。獣族は原生魔力に耐性がある? 古代魔法王国の都市は獣人の都市だった……?」


次から次に頭に浮かぶことをそのままアリアは口に出していく。


「耐性があるかは分からないわ。でも、古代魔法王国の民とは協力関係にはあったってことじゃないかしら」


里で日常的に魔道具が使われているということから、協力関係というのも信憑性が増す。


「はぁ。ダメ、頭パンクしそう。原生魔力が満ちた状態でも獣族しか近寄れない。結界は原生魔力を抑制するけど、獣族以外は通さない。何のため?」


アリアは背もたれに体重を預け、天井を仰ぐ。


結界によって抑制されていた原生魔力。

原生魔力に耐える獣族。

結界があってなお獣族以外は辿り着けない奥地。

古代に存在したという都市の意味。


原生魔力を抑制する結界を張るために獣族の協力を得た。

結界を張ってなお獣族以外は通さなかったのは、獣族に選民思想を植え付けて結界を維持させるため……だとすると――


「原生魔力が抑制された環境に意味があった……ということ?」


アリアは背もたれから体を起こし、システィアを見つめた。


「そうよ。原生魔力は濃度が高すぎる。だから不安定で、古代魔法王国の魔導技術では直接利用できなかった。抑制された環境は、その原生魔力を『安定した形で、定常的に魔導炉へ供給するため』の、言わば『超高圧のエネルギーを扱うための減圧室』だったのよ」


アリアは一人合点がいったように嬉々としているが、シルヴァもシスティアも理解していない顔だ。

だがアリアの勢いもそこまでだ。


「でもそのエネルギーを変換していた街はどこに? シルヴァへの影響が大きかった理由は? ダメ……わからないことが多すぎ」


シルヴァへの影響は原生魔力が鍵のようにも思ったが、原生魔力の極みとも言える神の魔力――イグニールと対峙した時、シルヴァに対しておかしな影響はなかった。

つまり、あの『場所』の原生魔力がシルヴァに何かしら関連する可能性があるという推測に留まる。


「行くしかない……か」

「お。決まったか?」


隣に座ってウンウンと唸っていたアリアをただ眺めていたシルヴァの瞳に力がこもる。

しかし――


「あなたは留守番よ、シルヴァ。私とシスで行く」

「は!? なんで!?」

「当然でしょ。森の奥に進めばあなたの力に何かが干渉する。それがわからないまま連れていけばどうなることやら。あなたはこの里で待機」

「ぐ……だが――」

「だがじゃない。里の人達と親交でも深めておきなさい、それがあなたへの命令よ」


有無を言わさぬアリアの瞳に、シルヴァは渋々頷く。


「わかったよ。だが、必ず四半日以内に戻ってこいよ、それまでしか待たない」


それ以上待たせたら暴走覚悟で森に乗り込むとシルヴァは言う。

過保護な従者にも困りものである。


「そんなに待たせるつもりはないから安心なさい。行くわよ、シス」

「えぇ、リアたんと二人っきり……最高ね! ヴァー君、大事なお姫様、アタシがしっかり守るからね」

「……頼む」


シルヴァは心底心配しているように、深々とシスティアに頭を下げた。

その様子におちゃらけていたシスティアも、真顔になる。


「任されたわ。里の中を案内する子を手配するから、わからないことがあればその子に聞いてね」

「あぁ、感謝する」


名残惜しそうに二人を見送るシルヴァに笑みを投げかけながら長の家を出ると、入れ替わるように獣人の女性が入っていった。


「だいじょぶよ、アタシの側近だからヴァー君に変なことはしないわ」

「あんたの側近って聞いたら余計に心配じゃない、さっさと済ませるわよ」

「焦っちゃうリアたん、か〜わい〜」


早足になるアリアを、システィアはスキップしながら追い掛けるのだった。





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